主役クラスが脇に控えるスターチーム! 阿弥陀三尊

 「高徳院」(神奈川県)の鎌倉大仏や、「平等院」(京都府)など、単独で祀られることも多い阿弥陀如来ですが、お付きの者を2人従えてチーム制を組むこともあります。

如来の両脇に控える仏を「脇侍(わきじ/きょうじ)」と言い、阿弥陀如来の脇侍は勢至菩薩と観音菩薩です。

静岡県下田市「稲田寺」の阿弥陀三尊像。
静岡県下田市「稲田寺」の阿弥陀三尊像。

向かって右の観音菩薩は、阿弥陀如来の「慈悲」の心を、左の勢至菩薩は「智慧(煩悩にまみれず、物事を正しく判断する力)」を表しています。

「浅草寺」(東京都)や「三十三間堂」(京都府)などでは、本尊としてトップを張っている観音菩薩を脇に連れているなんて、かなり豪華ですね!

なお、さらにその周囲に二十五菩薩という楽器を持った仏を従える例も見られます。楽団まで引き連れる様は見応え十分なので一見の価値ありですよ!

お釈迦さまのパワーを仏像で表現! 釈迦三尊

仏教を始めたお釈迦さまの姿とされる釈迦如来。

三尊形式で祀られる場合に、隣に並んでいるのは文殊菩薩と普賢菩薩です。

東京都港区「増上寺」の釈迦三尊像。
東京都港区「増上寺」の釈迦三尊像。

「三人寄れば文殊の知恵」ということわざでも知られる文殊菩薩は、まさに「知(=智慧)」の仏、そして普賢菩薩は「慈悲」を表す存在です。

それぞれの脇侍が、お釈迦さまの力を象徴する存在として並んでいます。

なお、「法隆寺」(奈良県)などの古い時代の像では、薬王菩薩・薬上菩薩が両脇を抑えている例も見られます。

両脇だけでなく周囲まで固める万全チーム! 薬師三尊&十二神将

京都府京都市「壬生寺」の薬師三尊像。
京都府京都市「壬生寺」の薬師三尊像。

病気の平癒や現世利益の祈願をされることの多い薬師如来も、チーム制を取ることがあります。そんな“ヤクシーズ”を結成する場合、両脇につくのは日光菩薩と月光(がっこう)菩薩の二人。

太陽と月は、とりもなおさず昼と夜を表現しており、薬師如来の力が24時間いつでも発揮されているという意味を持ちます。

脇役とはいえ日光・月光菩薩は流麗な美女のような姿の像例もあり、「薬師寺」(奈良県)や、「宝城坊」(神奈川県)などが人気を集めています。

東京都国分寺市「国分寺」の十二神将。
東京都国分寺市「国分寺」の十二神将。

“ヤクシーズ”は、さらに鎧を着た勇ましい武将の姿をした十二神将を従えており、十二支にそれぞれ対応しています。

落ち着いた薬師如来に美しい日光・月光、強そうな十二神将という構成は、チームとして完璧ではないでしょうか。

八人のスターから選ばれし二人が選出! 不動三尊

長野県岡谷市「平福寺」の不動三尊像。
長野県岡谷市「平福寺」の不動三尊像。

不動明王も三尊形式をとっている像例が多く見られます。

この場合、両脇に侍すのは制咜迦(せいたか)童子・矜羯羅(こんがら)童子の二人。

憤怒相(怒りの表情)をしている不動明王に合わせ、怒ったような顔をしていますが、童子は幼児から少年の間くらいの年格好で表現されるので、むしろかわいらしく見えます。

経典では不動明王は八大童子を従えるとされていますが、そのなかでも制咜迦・矜羯羅の二人が代表格といったところでしょうか。

まさに裁判さながらのメンバー! 閻魔大王チーム

福岡県福岡市「海元寺」の閻魔大王像(中央奥)。
福岡県福岡市「海元寺」の閻魔大王像(中央奥)。

仏教に明るくない方にも「あの世の裁判官」として知られる閻魔大王も、チームを成す場合があります。

ご存じの通り、閻魔大王は裁判官なので、横につくのも裁判にまつわる人物で、司命尊と司録尊の二人。

向かって左が司命尊で、閻魔大王の裁判を受ける人間が、生前にやってきた善行と悪行がすべて記載されている巻物を持っている、いわば検事。

向かって右の司録尊は、裁判の記録をつける、書記の役割を果たします。

東京都新宿区「太宗寺」の奪衣婆像。
東京都新宿区「太宗寺」の奪衣婆像。

さらに、閻魔大王のそばには、奪衣婆(だつえば)という恐ろしい形相をした老婆がいることも。奪衣婆は、三途の川のほとりで亡者の衣服を剥ぎ取ります。衣服は生前の罪によって重さが変わると考えられており、剥ぎ取った衣服を木の枝にかけて枝のしなり具合で罪の重さを判断し、あの世での処遇を決めます。

その後、閻魔大王の元に送られるため、奪衣婆はさながら簡易裁判所の裁判長と行ったところでしょうか。

山の修行をサポートする鬼を従える! 役行者チーム

山梨県甲府市「圓楽寺」の役行者像(中央)。
山梨県甲府市「圓楽寺」の役行者像(中央)。

険しい山を歩く修行をする「山伏」で知られる修験道を始めたとされるのが、「役行者(えんのぎょうじゃ)」という人物です。

そんな役行者の像には、鬼の姿をしたお付きの者がいます。

それぞれ「前鬼・後鬼(ぜんき・ごき)」と呼ばれる鬼の夫婦なのですが、なぜ鬼が修験道の祖に従っているのでしょう。

同寺の前鬼像。
同寺の前鬼像。

実は各地に、役行者がこの鬼たちを調伏させ、改心させたという説話がいくつも残されています。

そのため前鬼・後鬼は、山を歩く役行者の前を進んで道を開いたりしていたと考えられているのです。

現代でも、修験道が盛んな奈良県の山間部には「前鬼」という集落跡があり、近隣には鬼の子孫とされる「五鬼」という名字の方も暮らしています。

 

“ハコ推し”できそうなチームは見つかりましたか? 他にも、千手観音を本尊とする場合には、周囲に二十八部衆という個性的な集団がついてくるなど、ご紹介したいチームはまだまだたくさん!

そこで、チームを組む仏については、後編の公開も予定していますのでお楽しみに!

写真・文=Mr.tsubaking