安ウマの料理と酒でお客さんの明日への活力を養いたい
JR新橋駅烏森口を出て徒歩3分。桜田公園のすぐそばにある『やきとん まこちゃん 新橋本店』から威勢のいい声と肉が焼ける香ばしい匂いがして足を止めた。ここのところちょっと疲れ気味の体が“豚ミンパワー”を欲しているのだろう。本能に導かれるまま店の中に入った。
店内を見回すと、天井から吊るされている紅白の提灯や丸イスが懐かしい雰囲気だ。『やきとん まこちゃん 新橋本店』の創業は1968年。新橋にはここ本店とガード下店、烏森口店と3店舗あり、そのほか中目黒と大井町にも支店がある。入れ替わりの激しい新橋で、半世紀以上も営業しているのだから優良店に違いない。
しばらくすると店長の山﨑和良さんがこの店の話を聞かせてくれた。
「この周辺で働いている人たちが1日の労をねぎらい、明日も頑張ろうと活力を養ってもらえる店です。豚肉でスタミナ補給をしつつ、元気で明るい従業員や店の居心地の良さを感じてもらえたらいいですね」
「定番の人気メニューはやきとん、ニラ玉、煮込み、唐揚げです。ちなみに唐揚げは“からあげグランプリ”金賞受賞の実績があります」とのこと。むむっ、どれもおいしそうです!
特級焼き師が絶妙な火加減で焼き上げるやきとんを秘伝のたれでいただく
さっそく先ほど山﨑さんから聞いたやきとんを頼んでみよう。
「ウチでは新鮮な国産豚を使っていて、シロ、レバ、タン、ハツ、ハラミ、ナンコツ、コブクロの7種があります。創業以来、注ぎ足しながら造り上げてきた秘伝のたれも自慢です。これまでたれ壺に毎日何百という串が入っていますから、肉の旨味で味が深まっているんです」
おお、それはぜひいただいてみたいですね!
また、スタッフ総出で串打ちも行う。「昨今の物価高でもウチは値上げしていないので、これまでの品質と価格をキープするには手間をかけないと」と山﨑さん。安くてうまい理由はスタッフの努力にもあったのだ。それじゃ、シロとレバ各160円をください!
「それから“焼き”にもこだわっているんですよ。各店に1人ずつ“焼き師”がいて、それぞれ街のカラーに合わせた焼き加減にしています。たとえば、ここ本店にいるのは社長がお墨付きを与えた、社内で1人だけの特級焼き師。いちばん古い店なので、創業当時からの焼き方を踏襲しています。肉本来の旨さがわかる絶妙な焼き加減なんですよ」
おお、聞けば聞くほど早く食べたくなってきた。焼き上がるまでに10数分かかるとのことなので、ほかの料理を頼んで待っていようかな。
ニラ玉、もつ煮込みなど名物料理とレモンサワーで乾杯だ!
さて、何を注文しよう。「やきとんが多少お待たせする分、ほかのものは比較的早く出せますよ」と山﨑さんが言うので、やきとんと並ぶ名物・にら玉子512円ともつ煮込み512円、ドリンクは手作りレモンサワー まこレモン594円をオーダーした。
まずは、まこレモンで乾いた喉を潤そう。店内仕込みの甘く漬け込んだレモンと、フレッシュなレモンを半々で入れ合計1個分のレモンが入っている。爽やかで甘酸っぱく口をすっきりとさせてくれるから、やきとんとも相性が良さそうだ。
続いて煮込みもいってみよう。
柔らかい牛もつは脂がギトギトとしがちだが、あっさりとして食べやすい。たっぷり旨味が溶け込んだ汁も残さずいただきたい。
そして、ぽってりとしたフォルムがカワイイにら玉子にも着手。
砂糖の甘さはなく、出汁がきいたしょっぱい系のにら玉子。ボリュームがあり、おなかにもたまるのでお酒が回る前に頼んでおきたいメニューだ。
ひとつずつ味わったところで、お待ちかねのやきとんが登場! 秘伝のたれをたっぷりまとい、軽く焦げ目をつけてやってきた。しかもセコンドには和がらしを従えている。
どちらの串もごろっとして大きめなのがうれしい。レバはやわらかく、臭みがない。シロはあっさりとした肉質で、たれがよく絡んでいる。2口目はからしをつけて食べてみた。予想通り、どちらもレモンサワーにぴったりだ。夢中で串にかぶりつき、グビリ、グビリとレモンサワーを飲み干してしまうとなんだか寂しい。
もう1杯飲みたいけど、次はガード下店に行ってみようかな。『まこちゃん』をハシゴしてみるのも楽しいかもね!
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢