実は恐ろしい……不思議な形をした雲の正体は?

真夏に急な雷雨をもたらす正体、それは「積乱雲」と呼ばれる雲です。モクモクとした見た目をしていて、空高くまで発達していることが特徴です。

雲は地上から高さ10~16kⅿまでの対流が活発な「対流圏」内で発生します。対流圏より上空には成層圏と呼ばれる層があり、積乱雲は10kⅿを超えて、成層圏の近くまで達することもあります。ここまで到達すると、雲はこれより上空へは成長できないため、水平方向に広がるようになります。

このように限界まで発達した積乱雲のことを「かなとこ雲」といいます。鍛冶で使う「かなとこ」に形が似ていることから名づけられました。

積乱雲は大雨だけでなく、ひょうや雷、突風をもたらすことも(出典=気象庁)。
積乱雲は大雨だけでなく、ひょうや雷、突風をもたらすことも(出典=気象庁)。
青々とした夏空のもと、散歩を楽しみたいが……天気の急変に要注意!
青々とした夏空のもと、散歩を楽しみたいが……天気の急変に要注意!
空高く限界まで発達した「かなとこ雲」。真夏の午後に現れやすい(写真=気象庁)。
空高く限界まで発達した「かなとこ雲」。真夏の午後に現れやすい(写真=気象庁)。

これで「ゲリラ豪雨」も回避できる!? 積乱雲の発生しやすい条件とは?

積乱雲は夏によく現れますが、その理由は日差しの強さにあります。

太陽の光が地面を強く照り付けると、地面付近の空気が暖められます。暖かい空気は軽いため、どんどん上へ向かっていき、上昇気流が発生します。やがて上空まで達すると冷えて、空気中に含まれる水蒸気が水滴や氷の粒へと姿を変えて雲を作ります。上昇気流が激しいと雲が発達を続けて、モクモクとした積乱雲が生まれるのです。

積乱雲が近づくと突然あたりが暗くなる(写真=気象庁)。
積乱雲が近づくと突然あたりが暗くなる(写真=気象庁)。

積乱雲が引き起こす局地的な大雨のことを「ゲリラ豪雨」と呼ぶことがあります。神出鬼没に雷雲が湧き立つ様子を上手く表現していると話題になり、一般的に使われるようになりました。いつ起きるか分からない……そんな印象が強いゲリラ豪雨ですが、発生しやすい条件はあります。

積乱雲が発生しやすいのは、夏の午後です。

太陽の強烈な日差しによって、地上の気温が上がった午後は、上昇気流が強まり雲が発生しやすくなります。また、地上が暖められるだけでなく、上空に冷たい空気が流れ込む時も要注意です。暖かい空気は軽いため上へ移動しようとするのに対し、冷たい空気は重いため下へと向かいます。空気がかき混ぜられると対流が起こりやすくなり、雲の発生につながるのです。

こうした状態を「大気の状態が不安定」といい、天気予報やニュースの中でもよく使われます。「大気の状態が不安定」=「積乱雲が発達するおそれがある」と覚えておくと、天気の急変に気づきやすくなります。

大気の状態が不安定な時は散歩を控えるのが無難ですが、外にいる場合は気象庁のウェブサイト(雨雲の動き)やお天気アプリなどを活用して、自分が今いる場所の最新の予報を確認するようにしてください。

「大気の状態が不安定」=「急な雷雨のおそれあり」(画像=筆者作成)。
「大気の状態が不安定」=「急な雷雨のおそれあり」(画像=筆者作成)。
首都圏で発生した局地的雷雨の様子。気象レーダーで最新の状況の確認を(画像=気象庁)。
首都圏で発生した局地的雷雨の様子。気象レーダーで最新の状況の確認を(画像=気象庁)。

夏休み中、旅行先でも天気予報はこまめにチェックを

夏休み、キャンプや旅行に出かけた先で散策を楽しむ機会もあると思いますが、突然の大雨によって川の水が急増したり、土砂崩れなどが発生したりするリスクもあります。特に慣れていない場所ではいつもと様子が違うことに気づきにくいものです。

「ゴロゴロという雷の音がする」「あたりが急に暗くなる」「突然冷たい風が吹いてくる」など積乱雲の近づいているサインをお子様にも伝えておくのが安心です。

斜面が多く上昇気流の発生しやすい山は特に天気が変わりやすいです。空模様の変化に気を配るのと合わせて天気予報はこまめに確認し、雨雲レーダーなどで最新の状況を把握しておくようにしましょう。

覚えておこう!積乱雲の近づくサイン(画像=ウェザーマップ)。
覚えておこう!積乱雲の近づくサイン(画像=ウェザーマップ)。

文=片山美紀 写真=片山美紀、気象庁、ウェザーマップ

参考ウェブサイト
気象庁 大気の構造と流れ
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-1-1.html