クリーミーな夏の名物、冷やしラーメン
さっそく冷やしラーメンをいただく。ひんやりとした鶏白湯スープのクリーミーで優しい味わいと、小麦の味をしっかりと感じられるモチモチな麺が、絶妙のバランスを生み出しており、まるでクリームパスタを食べているかのような感覚がおもしろい。スープは濃厚だが、重たくなりすぎず、とても食べやすい。
「鶏白湯ラーメンにも使われているスープを冷やして、ブレンダーでしっかり乳化させるから、クリーミーな仕上がりになるんです」と教えてくれたのは店主の岩崎晋士(いわさき あきお)さん。
さらに、途中でレモンを搾るとさわやかさが増し、香りの変化も楽しめるのが特徴だ。
スープ以外のこだわりにも注目だ。すっきり食べやすいラーメンを作り出すために、麺はタピオカ粉が入っているものを使用。この麺を冷水で締めることで、コシと、つるっとしたのどごしの良さを実現しているのだ。
ちなみにつけ麺では、よりガッツリとした味わいを生み出すためにタピオカ入りの麺とは異なる太麺を使っているとのこと。
春・夏限定の冷やしラーメンは、もともと夏に出されていたまかないだった。しかし2017年頃、試しにそれを常連さんに提供したところ好評だったことから、お店の正式メニューに仲間入りしたのだそう。
いまでは大人気の一品で、毎年4月から提供をスタートしているのだという。
女性が気軽に入れるラーメン屋を目指して
「このあたりは女性が入りやすいラーメン店が少なかったんです」。岩崎さんが開店時から意識していたのは、「女性が1人で気軽に入れるラーメン店」にすることだった。
『IZASA』のラーメンは、どれも美しい盛り付けが意識されているが、そうした見た目へのこだわりも、その工夫の一つ。また、照明や壁紙などでは白を意識して取り入れ、店内に清潔感を持たせている。
確かに、外観や内装はラーメン屋というよりも、ちょっとしたレストランのような雰囲気も感じる。
「周りが学生街ということもあって、お客さんの多くは、やはり学生さん。でも、大学を卒業したあとも食べに来る常連さんも多いですね」
女性でも気軽に入りやすいようにした店内だったが、結果的にさまざまなお客さんが通いやすくなった。だからこそ、長くお店に通う常連さんも生まれたのだろう。
こだわりすぎないお店づくりの極意
先ほど、”ちょっとしたレストランのような雰囲気も感じる“と書いたが、聞けば、店主の岩崎さんはもともとフレンチレストランに勤めていたとのこと。しかし、作るところから届けるところまでを一人でできることに魅力を感じ、ラーメン店を開業したそうだ。
そんな岩崎さんだが、こだわりを持つのは料理のみにとどめている。というのも、「来店したお客さんに、よりリラックスして肩の力を抜いて、自由にラーメンを楽しんでもらいたい」という思いがあるのだとか。料理にこだわっているからこそ、食べ方やルールまではお客様に押し付けない岩崎さんのスタイルが、多くの常連さんに愛される秘訣だろう。そんな自由で心地よい空間が広がる『IZASA』で、ぜひ岩崎さん自慢のラーメンを食べてみるのはいかがだろうか。
取材・文・撮影=谷頭和希