一般客も自由に利用できる東久留米卸売市場

東久留米卸売市場は西武池袋線の東久留米駅と清瀬駅からバスと徒歩で15分、西武新宿線の花小金井駅からもバスで15分ほどの場所にある。

正式名称は「東京東久留米水産地方卸売市場」であり、1964年に花小金井綜合卸売市場として開設された。その後に卸売市場法の施行を受けて1973年に地方卸売市場の卸売業者として許可を受けた。翌年には協同組合を設立し、開設者の本荘から市場開設業務を受け継いだ。市場の1ブロック隣には東久留米地方卸売市場がある。

場内はふたつのブロックに分かれており、バラエティに富んだお店が軒を連ねている。道路沿いに面したエリアには『大東青果』という青果店があり、野菜や果物が所狭しと並べられている。

おでんにするなら定番の大根やじゃがいも、変わり種としてトマトや玉ねぎのほか、旬の野菜などが手に入る。訪れた日は地元客が長い列をつくっていた。青果店はほかにも『クルメ』という店舗が営業している。

市場の奥は鮮魚店が2軒あり、専門業者が買い付けにくる本格的なものとなっている。もちろん、一般客でも買い物ができる。

おでんの具材としてはブリやタコ、貝類などが考えられるが、たくさんの種類が揃っているので別の料理が頭に浮かぶ。新鮮そのものなので、自由な発想で買い物を楽しむといい。

肉類も3軒が営業し、バラエティに富んでいる。『ササキミート』は国産牛にこだわった品揃えで、テレビにもよく取り上げられる有名店だ。相撲力士の手形がずらりと飾られている。

こちらの「お肉屋さんが作ったジューシーメンチカツ」は土・日限定100個の人気商品だ。土・日の8時から揚げているので、できたてのものを味わいに早起きするといいだろう。

ひとつ購入してみたが、衣はさくさく、山形牛と国産牛を使用した挽き肉は肉汁がたっぷりで非常にジューシー。玉ねぎが粗めに刻んであり、しゃきしゃきとした食感と瑞々しさがたまらない。

おでんそっちのけでメンチカツを頬張ってしまったので、気を取り直して取材を再開する。『ササキミート』の向かいで営業する『静岡屋』は魚介類や加工品、珍味を扱うお店だ。

山口県宇部市にある宇部蒲鉾のブランド「宇部かま」の正規取扱店であり、代表商品である「新川(しんせん)」などを販売している。宇部蒲鉾は昭和13年(1938)に創業した老舗の蒲鉾メーカーだが、2024年3月に北九州ニッスイに事業譲渡した。

新川は藁巻きの蒸し蒲鉾で、白身魚の淡く繊細な味わいが人気の商品だ。生分解性ストローを用いた藁を外すと、細かいギザギザの美しい模様が現れる。

錦帯橋で知られる山口県岩国の特産である岩国れんこんを用いた「岩国れんこん天」も販売されていた。薄く揚げた練り物のなかに、刻んだレンコンが入っている。素朴な味わいで、おでんに入れてもおいしいだろう。

『静岡屋』では生麩も取り揃えている。生麩はおでんに入れるとよく味が染み、彩りも美しくなる。たくさんの種類が手に入るのは卸売市場ならではだ。

おでん種がひと通り揃うお店もある。『さか井』はおでん材料のほか、冷凍食品や乳製品、お菓子まで手に入る一般食材を扱うお店だ。

店内はそれほど広くないが、ありとあらゆる種類の食材がひしめいている。おでん食材は焼ちくわやなると巻、さつま揚げなどの練り物から、こんにゃく、白滝、ちくわぶや豆腐製品が揃う。

おでん好きとしては目移りしてしまうが、注目は「ジャンボ玉ねぎ」という刻んだ玉ねぎがたくさん入ったさつま揚げだ。1枚単位での販売となっている。

4人前はまかなえるほどの大きさがあり、すり身はソフトな食感だ。玉ねぎの甘みがすり身の旨味とマッチしている。

場内を歩いていると、見慣れたパッケージを発見した。海産物やお総菜を扱っている丸和水産には、北区赤羽(志茂)にある『川口屋』のちくわぶが販売されていた。

マニアはご存知のとおり、『川口屋』は有名なちくわぶ専門店だ。用途に応じた複数種類のちくわぶを製造販売している。小麦や塩、水にまでこだわり、昔ながらの職人の技術で製造している。

おでんの決め手となる出汁も手に入る。海産物や乾物を取り扱う『駿河屋』では、宗田鰹や煮干しなどおでんの出汁にぴったりの商品が揃っている。

食材だけでなく調理器具だって手に入る。『三上商店』はかっぱ橋商店街にあるような調理器具の専門店だ。鍋やお玉など、おでんに利用できるものも多い。

このほかにも、東久留米卸売市場ではおでんの食材となる商品を販売している。宝探しの気分でお店をまわってみるといいだろう。

東久留米卸売市場のグルメを楽しむ

卸売市場は豊富な食材が揃っているのが魅力だが、食事も大きな楽しみのひとつ。今回は3軒ある食事処のうち2軒を紹介しよう。

2023年にオープンした『らぁ麺 亀我楽(きがら)』では魚介の出汁がきいたラーメンが楽しめる。平日の午前6時15分から8時30分までは「早朝ラーメン」という市場ならではのお求めやすいメニューが登場する。

座席は6席前後のカウンターで、メニューの番号を伝えてオーダーする。今回頼んだのは定番の「煮干し中華そば」だ。煮干しの旨味が強く、濃厚な味付けとなっている。それでいて飲み干せるくらいの絶妙なバランスを保っており、トッピングされた刻み玉ねぎも爽やかな後味に貢献している。

卸売市場らしく海産物のメニューが豊富なお店もある。『海鮮市場食堂』は『東京北魚』という水産卸売会社直営の店舗で、海鮮丼や刺し身定食、焼き物の定食が揃っている。

オーダーがすこし独特で、食券を自販機で購入してから棚のおかずを取り出し、カウンター席で食券を渡すとごはんと味噌汁が提供される。ただし、海鮮丼の場合はそのまま食券をカウンターに持っていくだけでいい。棚にはおいしそうな料理がたくさん並んでいるので、食券を購入する前に吟味してもいいだろう。

今回はお刺し身全部のせの「特上海鮮まんぷく丼」をオーダーしてみた。ごはんは少なめ、普通、大盛りが選べるが、特上海鮮まんぷく丼の場合は通常の2倍なので気をつけよう。ごはんは酢飯に変更できる。

これで1980円とかなりのお値打ち価格。最近はインバウンド景気で高値の海鮮丼が話題になっているが、手頃な値段で楽しめるのはローカル店舗の魅力のひとつだ。

東久留米卸売市場には、紹介したお店以外にも魅力的な店舗がひしめいている。おでんの食材を探しがてら、いろいろと探索してみたら面白いのではないかと思う。

東久留米卸売市場の基本情報

東久留米卸売市場(東京東久留米水産地方卸売市場)
〒203-0043 東京都東久留米市下里5-12-12
042-471-2231
定休日:市場カレンダー参照
営業時間:(月〜土)6:15〜13:00・(日・祝)8:00〜13:00
東久留米卸売市場のX(Twitter):@ichiemon2019、 Instagram:ichiemon2019、Facebook:www.facebook.com/ichiemon2019

取材・文・撮影=東京おでんだね