地域に根付き、パンのおいしい食べ方を広めたい
六本木「グランドハイアット東京」の向かいにあるのは、フレンチレストラン『レフェルヴェソンス』生江史伸シェフ監修の、ベーカリーレストラン『bricolage bread &co.』だ。
店舗のテラスからさくら坂が一望でき、コーヒーを飲みながら季節の移り変わりを感じることができる。
「2018年にオープンして以来、ひたすら毎日おいしいものを作ることを繰り返しているうちに、やっと地域に根付いたと感じています」
おしゃれな外観に少々緊張しながら店に入ると、マネージャーの河本将さんが話を聞かせてくれた。
店内はテーブルや椅子、床も木が使われていて温かみがある。まずはどんなパンがあるか見てみよう。
朝7時の開店直後はクロワッサンやパン・オ・ショコラなど6、7種が並び、次々に品数が増えていく。仕事前に立ち寄る人や、お休みの日に少し早起きしてテラスでゆっくりくつろぐ人、ワンちゃんのお散歩に合わせて朝・夕2回のカフェタイムを楽しむ人もいるそうだ。
このお店の焼きたてクロワッサンとコーヒーのモーニングなんて、筆者だったら楽しみすぎて前の晩から眠れないかも。
朝7時にオープンしたら10時にはモーニングメニューから、終業まで提供されるオールデイメニューに切り替わり、ハンバーガーなども提供しはじめる。
店内を見回すと外国人の姿も目立つ。「グランドハイアット東京」に宿泊している人がわざわざこの店に来て朝ごはんを食べることもあるそうだ。
さて、今日はどんなモーニングにしようかな?
アボカド好きが狂喜乱舞。ふっくら農民パンのアボカドトースト
メニューを見てみると、朝は食パンのセットやパンケーキ、自家製のグラノーラなどがある。先ほど店頭でチェックした焼きたてパンに、プラス250円でコーヒーか紅茶をつけるのもアリだ。うーん、どれもおいしそうでなかなか決められないな。
「一番人気はコンビーフエッグベネディクトです。ブリコラージュブレッドに、豆腐サワークリーム、沖縄『TESIO』のコンビーフ、アリスの卵、オランデーズソースなどがかかっているんです。農民パンを使ったアボカドトーストもおいしいですよ」と河本さん。
ああ、さっき黒板で見た農民パン! 卵やバターを使わずシンプルに焼き上げた素朴なパンで、「そのままorバタートーストでも(おいしい)」と書いてあった。一番人気のメニューも気になるが、筆者はアボカドも大好物なので、アボカドトースト1450円にしよう。さらにモーニングタイムはプラス250円でTODAY’S COFFEEがおトクに飲めるということで追加した。
ダイニングから見えるオープンキッチンで調理の様子を見せてもらった。
まずはスライスした農民パンをトーストし、豆腐サワークリームを塗る。続いてカットしたアボカド、ハチミツ、パプリカパウダー、砕いたナッツをかけ、最後にフレッシュなレモンの果皮を上からおろしかける。
マヨネーズの代わりに使用する自家製の豆腐サワークリームは、ほかのサンドイッチメニューにも使用されている。「食材とパンをつなげてくれる」のだそう。
「サワークリームだけだと味が立ちすぎるんですけど、少し甘みがあって、自家製なので微調整ができるのがいいですね」
「農民パンはハードそうに見えるんですけどすごく柔らかいんです。小麦粉は味わいが濃い千葉県の『今村製粉所(イマフン)』さんの全粒粉と、北海道産の小麦粉を使っています」と河本さん。見た目だけでも香ばしさが伝わってくる。早く食べたい!
そしてたっぷりアボカドにはちみつを。天然の甘みがこのトーストには欠かせない。
ワクワクしながらテラスに戻り待っていると、アボカドトーストがコーヒーとともにやってきた。
まずはコーヒーをひと口。この日は『FUGLEN COFFEE ROASTERS TOKYO(フグレンコーヒーロースターズトウキョウ)』の“ブランブリ”だ。フルーティでナッツのような香ばしさもあり、後味がすっきりとしているから朝にピッタリ。
アボカドトーストにナイフを入れると、思ったよりパンが柔らかくて簡単に切れた。ひと口食べてみると、パンの外はパリッとしているが中はふんわり。咀嚼するごとに全粒粉の旨味や香ばしさ、アボカドのまろやかさ、ザクザクとしたデュカが全員手をつないで迫ってくるような衝撃が襲ってきた。最後にレモンがふわ〜っと香ってきて、なんともさわやかだ。
上にのっているのは個性的な食材ばかりなのに、農民パンの味わいが主体になっているのがすごい。
「自家製の酵母から旨味を感じるのかもしれませんね。うちはパン屋なのでパンを使った料理が多いんですけど、逆に言うと、それは家庭でもできるパンのアレンジの仕方の提案でもあるんです」
顔の見える生産者から素材を吟味して使用する
『bricolage』はパン作りや料理の技術だけでなく、素材を吟味しているのも特筆すべきところだろう。パンの原料となる小麦粉はすべて国産を使用。小麦粉だけで10種類ほどを取り寄せ、パンの種類によって配合を変えているそうだ。
「使用する食材はできるだけ作っている人の顔が見えるものを使いたいんです」と語る河本さん。そこには食の安心、安全のほかに生産者へのリスペクトもあるのだろう。取材した4月は旬の食材を使ったイチゴのタルティーヌやレモンクロッカンなどが並んでいた。
パンと料理、それから『bricolage』に欠かせないのがコーヒーだ。富ケ谷にある『FUGLEN COFFEE ROASTERS TOKYO』と、目黒にある『SWITCH COFFEE TOKYO(スイッチコーヒートウキョウ)』から、バリスタが豆を選んでいる。
「『フグレン』さんのはフルーティさがありながら甘さも感じられるコーヒーで、『スイッチ』さんは少し深い味わいなのでカフェラテに合うんですよ」
「おいしいパンとコーヒー、それをつなぐ料理によって、日常が少しでも豊かになったらいいなと思っていますね」と河本さん。
たかが朝ごはん、いいや! されど朝ごはん。1日のはじまりにおいしいものを食べれば、その日はうまくいきそうな気がする。おかげで今日は元気モリモリ120%だ〜い!
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢