平等院「阿弥陀如来坐像」【京都】
10円玉に描かれたあのお寺
京都府南部、宇治市に位置する平等院。
10円玉でこちらの鳳凰堂の建築はお馴染みですね。
実はこのお堂の中には、日本の仏像の歴史の中でも重要な「阿弥陀如来坐像」(国宝)が鎮座しています。
なぜ重要なのかというと、この像が後の阿弥陀如来像のスタンダードになったため。
作者の定朝という仏師は、穏やかな表情や浅めに彫られた衣の表現で、当時の平安貴族に愛される優美な仏像を生み出し「定朝様式」と呼ばれる、定番スタイルを作ったのです。
さらに、それまで一本の木から仏像を掘り出す「一木造り」だったところから、パーツごとに制作をしてそれをプラモデルの様に組み合わせる「寄木造り」を発明。
これによって、仏像はより大きくより動きのある表現ができるようになったのです。
三十三間堂「千手観音像」【京都】
1000体以上の仏像が並ぶ圧巻の風景
技法や年代を言われてもピンとこなくて仏像に詳しくないという方でも、「大きい!」「多い!」というプリミティブな感動から、仏像好きになることがあります。
この「多い!」という興奮を得られるのが、京都市にある蓮華王院本堂(通称:三十三間堂)です。
全長120mという長~い本堂には、1001体もの千手観音像が祀られています。しかも全てが国宝!
ひな壇状になったお堂に、仏像がこれだけ並ぶ様子だけで声が漏れるほど圧巻ですが、もちろん全てが手彫り!
そのため、一体一体に個性がありじっくり何時間でも見ていられます。
また、千手観音の前には眷属(けんぞく)の二十八部衆も。
鬼の様な姿の風神雷神や、老爺の姿をした像から女神像まで、バリエーション豊かで見飽きることがありません。
最初に仏像を好きになるにはうってつけなお寺です!
東寺「立体曼荼羅」【京都】
仏像がビシッとフォーメーション!
三十三間堂の「多い!」同様に、仏像好きでなくても感動を与えてくれるのが京都市の教王護国寺(通称:東寺)です。
こちらでは、「大きい!」「カッコいい!」という直感的な興奮に見舞われることでしょう。
いくつかお堂がある中で必見は講堂。真言宗を開いた空海は、仏教先進国だった唐から曼荼羅を持ち帰りました。
それは仏の世界や悟りを開く過程を、仏画や図として表したもので何体もの仏が描かれています。
東寺の講堂にあるのは、この曼荼羅を仏画から仏像にした「立体曼荼羅」。
暗いお堂の中に、2mを超える大きな仏像が21体もズラリ!
それが曼荼羅の様にフォーメーションを組んでいるので、カッコ良さは抜群です!
さらに、穏やかな表情の如来から、怒号が聞こえてきそうな迫力の憤怒相(ふんぬそう:怒りの表情)の明王まで様々なので、きっとあなたのお気に入りが見つかるはずです。
これが、平安時代に登場した事を考えると、当時の人の驚きは想像を絶するものがありそうですね。
東大寺三月堂「不空羂索観音立像」【奈良】
おなじみの大仏以外も仏像的見どころが満載!
奈良の大仏でおなじみ、奈良市の東大寺。
大仏についてはみなさまご存知の通りですので、東大寺には他にも魅力的な仏像がある事をご紹介します。
仏像好きに愛されるのが法華堂(通称:三月堂)。
西暦740年前後に建てられた、東大寺最古の建築とされるこのお堂には、奈良時代に作られた10体の仏像(全て国宝)が所狭しと安置されています。
こちらの本尊は「不空羂索(ふくうけんさく)観音立像」で、観音菩薩が33の姿に変身するうちの一つで、どんな人の悩みも救いとる羂索を持っています。
大きさは3mを超え、天平文化(奈良時代)の煌びやかさを伝え、同時代を代表する作品です。
法華堂には他にも、日光・月光菩薩像や4mを超える梵天・帝釈天像などが立ち並び、堂内の暗さも手伝って、仏の世界に来た様な(行った事ないけど)気持ちになってきます!
興福寺「阿修羅像」【奈良】
仏像ファンから圧倒的人気の阿修羅像
これまで日本には、何度かの仏像ブームが到来しています。
古くは、敏腕仏師が活躍した平安時代や鎌倉時代。最近では、美術家の岡倉天心らが、日本美術を世界に再評価させることに成功した明治時代。そして、最も新しいのが「国宝 阿修羅展」(東京国立博物館)を発端とした2009年からのブームです。
会期中に94万人以上が来場し、平成以降の美術展で圧倒的なトップに君臨しています。
そんな「阿修羅像」があるのが、奈良市の興福寺。
少年の様な、切なく儚いながらも、内に秘めたエネルギーが感じられる唯一無二の同作のほか、数十もの国宝・重要文化財の仏像が祀られています。
阿修羅像のほか、白眉なのが「無著・世親(むじゃく・せしん)立像」です。仏像は、伝説に則った、超人的でSFな表現をされることが多い中、無著と世親は実在の人物なのでリアリティが群を抜いています。
有名仏師、運慶指導の元で彼の弟子が制作したこの2体は、今にも動き出しそうなほどリアルで必見です!
覚園寺「薬師如来坐像」【神奈川】
仏像好きがオススメするお寺
仏像といえば奈良や京都が多くなりますが、東京近郊にも素晴らしい仏像はいくつも!
オススメの一つが、鎌倉市の覚園寺。
鎌倉には他にも超有名なお寺もありますが、仏像好き垂涎のお寺がこちらです。
本堂(薬師堂)の中央には、薬師如来坐像が鎮座。どっしりして安心感のある体躯に優しい顔立ち。台座から衣を垂らした中国風の表現が特徴的です。
また、薬師如来といえば片手を上げて前に向けた印相(手のポーズ)が一般的ですが、こちらはお腹の前で組む形をとっており、こちらも個性的です。
両脇には、日光・月光菩薩。さらに、お堂の壁沿いには薬師如来の眷属である十二神将がズラッと並んでいます。
どれも人間と同じほどの大きさで、私たちの目線より高い位置に祀られているので、威厳たっぷり。
仏像に囲まれる貴重な体験ができます!
また、毎年8月10日には「黒地蔵盆」として午前0時に開門。
夜中に仏像を拝観するという稀有な機会が!
暗闇に浮かぶ仏像群は、昼間よりも静謐で厳粛な空気に包まれています。
五百羅漢寺「羅漢像」【東京】
数百体の仏像群!
都内にも仏像好きに愛されるお寺があります。目黒の五百羅漢寺。
三十三間堂について「多い!」というプリミティブな興奮が得られるとしましたが、同じ感動がこちらのお寺でも体感できます!
その名の通り、本堂の両脇にはたくさんの羅漢像(らかん:悟りを開いた僧侶)がギッシリ並んでいて圧巻!
中心は本尊の釈迦如来坐像で、その顔立ちは日本の仏像とは少し違った独特なもの。サイズも約3.5mと大きく、目の前に座ると仏教徒でなくとも思わず合掌してしまう様な雰囲気を持っています。
あまりにも多い羅漢像は、本堂だけで入りきれず羅漢堂にも。
こちらだけでも146体もの羅漢像が安置されています。それぞれの羅漢像には、得意分野があり自身にあった像に手を合わせるのも良いですね!
また、動物の様な四つ足ながら、顔は人間の男性で目が三つ、さらに身体中にも目が付いているという、幻獣「獏王」も目が惹きつけられるはずです!
都心で仏像を楽しむならここで間違いなし!
今回は、メジャーなスポットを中心に仏像の素晴らしいお寺をご紹介しました。
ここで興味を持たれた方は、さらにたくさんの仏像を巡って、充実の旅やお出かけライフを送ってください!
文=Mr.tsubaking