長年の自己研磨の末、完成したオリジナルの絶品手打ちうどん
JR両国駅から徒歩4分。立地的には決して目立つ場所にあるとは言い難いが、そんなことはお構いなしに、『うどんダイニングYoshi』のランチタイムは、常時この店のうどんを求める客でにぎわっている。
驚くことに、オーナーの早瀬さんは『うどんダイニングYoshi』を始めるまで、本格的なうどん作りの経験があったわけでも、飲食店経営のノウハウがあったわけでもないらしい。
「過去にはうどん屋で働いていたこともありましたが、当時はたまに厨房に入る機会がある程度のみで……。元々自分がうどん好きだったので、一念発起して自分でうどん屋をやってみようと思ったんです」
当初は集客にも苦労した。時には自らの手で、チラシ配りをすることもあった。しかし、「おいしいうどんを作りたい」「その味を多くの人に味わってもらいたい」という信念のもと、早瀬さんは集客に苦戦しても、うどん作りの研究を止めることはなかった。
ときには小麦の配合を変えたり、またあるときには加水量を調整してみたり……とにかく実践に実践を重ねることで、ようやく今のうどんに行き着いたそうだ。
早瀬さんが「おいしいうどんとは?」を追求し続けた結果、今や『うどんダイニングYoshi』は、両国の人気うどん店としてその名が知れている。長年の試行錯誤の末に完成した手打ちうどん、一体どんな味わいなのか……期待に胸が膨らむ。
こだわりの出汁と一緒にいただく、艶めく茹で立て手打ちうどん!
取材日は3月上旬だったが、この日の東京は曇り空。日中の最高気温は10度にも満たない冷える一日だったため、今回は体が温まりそうな、とり天&玉子天うどん820円をいただくことにした。
待つこと10分ほど。目の前に運ばれてきたうどんは、無数の湯気をまといながら真っ白にきらきらと輝いていた。
艶めく茹でたてうどんを一口食べて思う、「空腹を我慢して待った甲斐があった!」
コシともっちり食感を兼ね備えたこのうどんは、早瀬さんが3種の小麦を独自にブレンドして作り上げているそう。
そして、そのおいしさを引き立てるのが、旨味がしっかりと際立った出汁。聞けば、昆布や煮干し、 宗田節など、複数の出汁をバランス良く合わせているんだとか。温かな出汁が、冷えた体に染み渡る。
次にいただいたのは揚げたてのとり天。サクサク食感の衣とは裏腹に、中の鶏もも肉はしっとりジューシーな味わいだ。そのまま食べてももちろんおいしいが、ちょこっと塩をつけていただくのも美味。
絶妙な半熟加減の玉子天は、『うどんダイニングYoshi』の名脇役ともいえよう。いうまでもなく、単品でもその味わいが抜群だ。その上、半熟の黄身を少しうどんに絡めると、うどんに濃厚なコクがプラスされ、また別のうどんのおいしさに出合える。
艶・コシ・味のいずれもが揃った、茹で立てうどん。体が温まったのはもちろん、お腹も心も満たされて、食後は多幸感でいっぱいになった。
オーナーのうどん愛があるからこそ、“味”で勝負ができる店
「実は、ここ最近の小麦や油の価格高騰の影響を受けて、うちの店もメニューの値上げをせざるを得なくなって……」
そう語る早瀬さん。しかし、断腸の思いで値上げの決断をしたものの、料金改定後も客足が遠のくことはなかったらしい。
そう、この店を訪れる客が重要視しているのは、値段ではない。“味”なのだ。早瀬さんの作るうどんが食べたいから、このお店に訪れる。早瀬さんの作るうどんは、両国で働くサラリーマンや、地元民の胃袋をガッチリ掴んでいるのだろう。
「夏と冬では過水量や茹で時間を変えて、そのシーズンならではのうどんのおいしさを提供したいなと。夏には冷やうどんでしっかりとしたコシを、冬は温かなかけうどんでもちもち感を味わってもらいたいですね」
寡黙な早瀬さんだが、取材中は端々から早瀬さんのうどん愛が伝わってきた。
平日だけでなく、週末もにぎわい続ける店でありたいという想いから、最近では土曜のランチ営業も始めたという。平日の13時以降や、土曜のランチタイムは比較的すぐに入店しやすいようだ。
一杯でお腹も心も満たされる『うどんダイニングYoshi』の手打ちうどん、両国を訪れた際には、ぜひ味わってほしい。
取材・文・撮影=杉井亜希