銭湯絵の鉄道と猫ちゃんには歴史が
建物自体はかつてのままになっているので、東京の伝統的な銭湯建築が残されており、高い天井が開放感満点!
そこから差し込む太陽の光が、浴室内をキラキラと輝かせます。
改装とともに新しくなった銭湯絵。富士山の雄大さが印象的です。
そんな絵をよく見てみると、猫と電車が描かれています。
実は、改装前はロビーに本格的で巨大な鉄道模型が置かれており、それ目当てにやって来る人もいたほど。さらに保護猫の活動をしていることもあって、ロビーは人間だけでなく、猫ちゃんも憩う空間でした。
時代の流れとスペースの関係もあって、鉄道と猫は改装とともにロビーからお別れをしましたが、『友の湯』の顔でもあった鉄道と猫は、現在では銭湯絵の中に息づいているのです。
なお、女湯には描かれているのは、同じ富士山ながらオレンジ色に輝く赤富士で、こちらも必見!
軟水ブームの先駆け?トロトロの水質を味わおう
浴槽は大きくはないながらも、白湯にジェットバス、横になれるリラックスバスに電気風呂とバリエーション豊富!
気分や疲れに合わせて入れるのがうれしいですね。
そして何より『友の湯』を特徴付けるのが水質。
井戸水を汲み上げて機械を通して軟水にしています。現在では、同様の装置を使っている銭湯もありますが、店主の岩崎さんによれば「軟水の機械を入れたのは、おやじ(先代)の時代で40年くらい前なので、東京で最初らしいですよ」とのこと。
すぐに軟水だとわかるほど、触った瞬間にトロッとした感触が得られます。
湯上りも肌がつっぱることなくスベスベが続くのも特徴。
温度は41~42度で、お客さんからの声や季節によって変えているそう。
万人を受け止める銭湯らしい変化
洗い場の蛇口から出て来るのも軟水。シャンプーや石鹸の泡立ちもよくなるので、喜ぶお客さんも多いようです。
そして、改装で変わったものの一つが、この洗い場。
銭湯の多くでは、鏡の上に固定されたシャワーと、湯温調節のない蛇口が設置されていますが、こちらでは改装でシャワーホースと湯温調節可能な蛇口になりました。
子供づれのお客さんにとっても、動き回る小さな子供が洗いやすかったり、足腰が痛い高齢の方にとっても、ホースが伸びくれるので、苦労が減ります。
老若男女を受け止める銭湯にとって、とても重要な変化だと思います。
最強!? 極悪!? スチームサウナを体感せよ
そして、改装以前からこちらの代名詞となっているのがサウナです。
銭湯自体の改装がサウナブームの真っ只中だった2021年ですが、その流行に乗ることもなくスチームサウナを続けているのが特徴です。
じんわり熱くなるイメージの強いスチームサウナですが、こちらは完全に別格で侮っていたら火傷します!比喩ではなく本当に!
「設定温度は昔からずっと60度ですね。ただ、広くないのでスチームが充満しやすいので熱くなります。最初の頃は『熱すぎて入れねぇじゃねーか!』とか、苦情も多かったです(笑)」と店主。
スチームが噴射されれば、視界ゼロになるほどの濃度で全身が蒸気に覆われます。さらに、その噴射のペースは2~3分に一度という超ハイペース!
つまりは、ずっとロウリュし続けている状態と言っても過言ではないようなレベルです。
ちょっと恐ろしげなポスターが表現する通り、大きく息を吸うと熱々のスチームが喉に入って来るのがわかります。
さらに、スチームサウナなので天井や壁についた雫が落ちて来きますが、これが熱いのレベルを超越!もはや雫が「刺さる」ような痛みに近い感覚です。
このスチームサウナは、一度体験する価値ありです!
子供の頃から来ていたという常連の田中さんにもお話を聞けました。
「友の湯の魅力は、全部が尖っているところです。サウナはもちろんですが、軟水のヌルヌル加減もそうですし、電気風呂の強さも他の銭湯より強烈なんです」
かつては鉄道模型や猫ちゃんでも人気だった同店。しかし、改装後は”お風呂そのものの魅力”で利用者が惹きつけられています。
古き良き風情を残しながらも尖った『友の湯』、訪れてみてはいかがでしょう。
写真・文=Mr.tsubaking