ソルマリとは酒の産地で有名なネパールの地名
『ソルマリ 蒲田店』は、2017年に新大久保『ソルマリ』の支店としてオープン。新大久保の『ソルマリ』は、当時まだ珍しかった現地の味そのままのネパール料理を出す店として注目を集め、2019年に女性店主のバスネットさんがオーナーとなり独立した。
店名の「ソルマリ」とは、ネパールの東部にある酒の産地として有名な村の名前。「ソルマリ」という名前の酒もある。ネパールではテレビドラマで一躍有名になった地名で、今では「お酒の飲める場所」が「居酒屋」の代名詞にもなっているそう。
店内は、そんなお酒を飲んでパーティーができる店をイメージしているのか、極彩色でエキゾチックな雰囲気。居酒屋だけあって、夜はネパールビールやラム酒など各種アルコールと、ネパール風蒸し餃子モモやスパイシーなチキンなどおつまみが充実している。夜の営業が主体の店だが、ランチメニューも充実しているので見逃せない。
ネパールの伝統料理ディドは、そばがきのような味
ネパールに隣接する北インドのカレーやナンもあるが、ここはネパールの伝統食、ディドでカレーを食べてみたい。
ディドとは、ネパールで主食としてカレーやおかずと共に食べられているそば粉を練ったもの。水と純度の高いバターオイル、ギーだけで練られ味つけはしていない。水分の多いそばがきのような素朴な味わいで、これを少しずつちぎってカレーや豆のスープ、ダルやギーをつけて食べる。
ディドはそば粉のほかにトウモロコシの粉で練ったものもあるそうで、小麦で作ったナンと違い胃もたれしない優しい後味だ。でもぽってりと大きいので、食べきれない人もいるかも知れない。
ディドセットには、カレー1品とダル、タルカリ、アチャル(アチャルトマトの漬物)、ヨーグルトとギー、そして青菜の炒め物サーグがディドの周りを取り囲んでいる。カレーはマトンやチキン、野菜などから選ぶことができる。ネパールは宗教上の理由で牛肉は食べないので牛肉のカレーはない。
北インドのカレーのようにバターや生クリームを使わないので、スープのようにサラサラとしているのが特徴だ。「ダル」とは豆のスープ。日本で言う味噌汁のような料理で、各家庭のおふくの味がある。ソルマリのダルは、豆のまろやかなさに生姜やクミンなどスパイスが効いた、身体が温まる味だ。
店主のバスネットさんは「カレーは他にも、発酵させたタケノコとジャガイモ、黒豆のカレー『アル・ボディ・タマカレー』が人気です。好き嫌いの分かれる味ですが、好きな人にはたまらないみたいですよ」と教えてくれた。独特な酸味がクセになるのだそう。かく言う筆者もネパールを旅し、チベットや中国、インドなど様々な文化が混じり合ったネパール料理の奥深さに魅せられた一人。ネパールの食文化に興味を持った人は、ぜひ試して欲しい。
ソルマリ風、ビリヤニもぜひ味わって欲しい
最近人気のビリヤニも1000円で用意している。ビリヤニはネパール料理ではないが、主にインドやバングラデシュのイスラム文化圏で食べられている米料理。パエリアや松茸ご飯と並ぶ世界三大炊き込みご飯の一つで、結婚式などお祝いの席に出される特別な日のごちそうとして親しまれている。細長いバスマティ米と一緒に羊肉や鶏肉とさまざまなスパイスを加えて炊き上げた香り高い一品だ。
この店のビリヤニは、チキンの骨つき肉1本がのる豪快な一皿。チキンの味が沁みたバスマティ米に、スパイスや香草の香りが加わり、食欲をそそる。量は多めに感じてしまうが、サラサラとした粘り気のない米なので意外と食べきってしまう。骨付き肉をほぐしてご飯と混ぜながら食べて欲しい。
女性店主が切り盛りするアットホームな店
女性店主のバスネットさんが、ネパール人の料理人たちと一緒に店を切り盛りしている。ランチタイムは16時(ラストオーダー15時45分)まで提供しており、遅いランチ利用にも最適。
ビル2階の奥まった場所にあるが、女性一人でも安心してくつろげる。ランチメニューは650円~とお手頃価格な上で、全てのランチセットにサラダとソフトドリンクがついてくる。辛くない料理も多いので、子どもと一緒にも楽しめると評判だ。
ひとりでも、友達や家族とでも楽しめそうな、ネパール流居酒屋でのランチ。ぜひ試してみてはいかがだろうか。
取材・⽂・撮影=新井鏡子 構成=アド・グリーン