「一歩外に出たら海」をコンセプトにした内装
店内は鎌倉に関する雑誌や、海の写真が飾られ、BGMにはギターの音色が心地よいジャック・ジョンソンのメロディーが流れる。入り口の大きな窓も相まって、目をつぶれば波の音が聞こえてきそうな、まさに「海辺にあるカフェ」が再現されている。
「小さい頃から海が好きだった」という店長の佐野さん。今も頻繁に鎌倉など、海のある場所へ行っては買い物やサーフィンを楽しんでいるという。
そんな佐野さんの「海が好き」という気持ちが、このお店には詰まっているのだ。
お昼からお酒も楽しめるランチメニュー
豊富なメニューの中でもキーマカレーとたっぷりチーズ1200円が看板メニューとなっているが、一番リピート率が高いのは、15種類以上もある生パスタだという。
「休みの日なんかは、お昼からお酒飲む方もいらっしゃいます。」というお話を聞き、早速グラスワインセット(白)400円と、それに合うシラスとあおさのペペロンチーノ950円を注文することにした。
店長の佐野さんは、竹を割ったような性格の持ち主。白ワインを頼む私に「昼間からお酒飲んでいいんですかー?」と言うもんだから、一瞬肝が冷えたのはここだけの話だ。
まずは白ワインを一口。度数がそんなに高くないおかげか、ワイン独特のキリッとした感じが全くない。ジュースみたい、というと言い過ぎだが、それくらいスッキリとしていて飲みやすい。これなら何杯でも飲めそうだ。
続いて生パスタの方は、麺がモッチモチ。あおさの味がしっかりとしている中にピリッとした辛さがあり、アクセントになっていて、とてもおいしい。こちらも白ワイン同様、さっぱりとした味わいなので、10分もしないうちに完食してしまった。
そして、あまりの生パスタのおいしさに、常連さんから大人気だという厚焼き玉子サンド950円を注文。こちらはテイクアウトの場合800円と、少しお得になる。
厚焼きというその名前の通り、挟まれた玉子の厚さはおよそ2cm。食パンと合わせると5cmにもなるサンドイッチは、一口では収まりきらないほどボリューミーな仕上がりだ。
2024年6月には6周年を迎える
『Cafe slow season』は2024年6月で丸6年を迎える。コロナ当時は客足が途絶え、かなり苦しい時期もあったというが、人が来ようが来まいが、ランチは毎日15時まで続けていたという佐野さん。
そんな中でも足を運んでくれたのは、お店に来ては「今日はこれ食べたい!これ作って!」と言ってくる、怖いけどどこか優しいおばあちゃんで、佐野さんとはまるで嫁と姑のような関係だったという。
6周年を迎えられるのも、そんな常連さんのおかげだと言う佐野さんは、そのおばあちゃんが老人ホームに入ることを知った際、感謝の手紙を送ったというエピソードを聞かせてくれた。
「私は私。何事もやってみないとわからない。」
若い頃に自分でお店をやっていた経験から、娘さんが高校に進学したら絶対にまたお店を開くと決めていたという佐野さん。カフェという形は初めてだったため、40代から飲食店でバイトをして仕入れや経営など、カフェをやる上でのノウハウを学んだ。
さらには通信でナチュラルフードの勉強を行っただけでなく、家で何度も料理の試作を重ねた努力の末に、この『Cafe slow season』がある。
OLも経験したことがあるという佐野さんに対し、なぜまたお店をやろうと思ったのか尋ねると「人に雇われるんじゃなくて、自分で好きなようにやってみたかったから。大変だと分かっていたけど、やらずに後悔したくない。私は私。自分はできるという自信があった」という、思わず身が引き締まる、心強い回答をいただいた。
お会いした瞬間からピシッとした空気があり、正直ちょっと怖い人なのかな?とも思っていたのだが、自分の芯がしっかりとした、一人の格好良い女性がそこにはいた。
「自分がせっかちだから、人生ゆっくりしてほしい」という佐野さんの想いが込められた『Cafe slow season』。今度は週末にお酒をいただきに行くとしよう。
/営業時間:11:00~15:00・18:00~21:00(日・祝は11:00〜16:00)/定休日:月・第3火曜、月が祝の場合は翌火/アクセス:JR京浜東北線大森駅から徒歩7分
取材・文・撮影=SUI