カフェのような、居心地の良い空間。
ウェイティングリストの時間になったら、木の扉を開けて中に入ることができる。店内は8席と決して広くはないが、木の温かみを感じられるカウンターが広がっているため、窮屈さは全く感じない。おしゃれな照明が店内を照らしていて、老若男女問わず入りやすい空間になっている。
食券は入り口の券売機で購入することができる。季節によっては期間限定のラーメンもあって、迷うこと間違いなしだ。クレジットカードやQR決済は受け付けていないので、来店する際は必ず現金を持参しよう。
1番人気のラーメンは、醤油らぁめんの特状トッピング1950円。王道の醤油らぁめん1250円に、煮卵やチャーシューなど豪華なトッピングがこれでもかと付け加えられている。
常連客の中では、ワンタンメン1300円も隠れた人気メニューとのことだった。
こだわり抜かれた至高の一杯
今回いただいたのは、王道の醤油らぁめん1250円である。スープは、やまがた地鶏の丸鶏・ガラ・枕崎産本枯鰹節・煮干・道南産真昆布などから抽出した出汁を、丁寧に配合したあっさりとした醤油ベースだ。ほのかにチャーシューの香ばしさがスープに溶け出し、最高のアクセントになっている。
トッピングされている2枚のチャーシューは、それぞれ黒豚と林SPFの2種を使用している。それぞれ嫌な脂っこさがなく、噛むほどにしっかりと肉の旨味を感じることができる。塩と砂糖と醤油をベースとしたシンプルな味付けで、素材の味を活かすというこだわりがあるそうだ。
さっぱりとした白髪ネギに合うメンマは、乾燥状態のものを3日間かけて出汁を含ませて戻すという一手間が加わったことで、味が染み込んでいて弾力がある。
もちもちとした細麺も、喉越しが最高で箸がどんどん進む。この麺は深谷さんのこだわりで、6種類程度の小麦を直配合しているそうだ。温度湿度に応じて、毎週配合を変えていることは驚きである。
ラーメンに込められた深谷さんの想い
閉店後のお店で、深谷さんに『Homemade Ramen 麦苗』で提供されるラーメンのこだわりについてお話を伺った。『Homemade Ramen 麦苗』で作られるラーメンは、そのこだわり抜かれたおいしさだけでなく、化学調味料を一切使用していないことでも有名である。
味のパンチをつけるため、ラーメンではよく使用される化学調味料。これを一切使わない理由について聞くと「自身の1番大切な人には、健康的でおいしいものを食べてほしい」という想いをもっていたと深谷さんは語る。お金をもらって料理を提供するのであれば、人に対して提供した時に恥ずかしくないものを作り上げたいと強く感じ、可能な限り全て自分の手で作り提供すると心に決めたそうだ。
自身の信念のもとこだわり抜いて作られたラーメンは、国内外問わず多くのお客さんから人気である。化学調味料の味に頼らず、それでもラーメンとしてのおいしさを追求し続けたからこそ実現できた、まさに至高の一杯だ。
食べログラーメンTOKYO100名店への複数回選出や、ミシュランガイドの東京ビブグルマンを数回受賞している『Homemade Ramen 麦苗』の人気はとても高い。ウェイティングリストは、当日の枠が埋まり次第提供が終了という形になっている。平日は開店前には埋まらない日もあるが、土日祝は10時頃には埋まってしまうことがあるため要注意である。
ラーメン作りに関してはストイックに向き合う深谷さんだが、『Homemade Ramen 麦苗』では気軽にアットホームな場でラーメンを食べてほしいと微笑みながら話してくれた。
その思いこそが居心地の良い店内と、多くのリピーター客を惹きつける魅力に繋がっていると感じた。全てにおいて妥協しない深谷さんの作る最高の一杯を、堪能しよう。
取材・文・撮影=丸山 亜海