可愛いものを詰め込んだカラフルなインテリア
店長である田口さんは、学生時代に2年間シアトルへ留学。スターバックスの発祥地でもあるシアトルは、少し歩けば必ずカフェがある場所で、留学時に気に入ったカフェの可愛い部分を集めたのが今の『CAFE MEMOL』だという。
一度浸水があり、全て自身で飾り付けを行った当時の内装ではなくなってしまったそうだが、どこか海外に来た気持ちになる、カラフルな内装は今も健在だ。
客層は近所に住む60代〜70代が中心で、「歳を重ねると嫌でも身につけるものが落ち着いてきてしまうから、コーヒーを飲む場所は明るい場所が良い」と、この彩り豊かな内装を気に入って来てくれるお客さんもいるという。
店内は5席のみで大人数は収容できないものの、1人で来たお客さん同士が仲良くなったり、店長の田口さん自身がお客さんとして来た若者の夢を応援したり、人生の先輩たちの話を聞いたりする、お昼版Barとも言うべき地元のコミュニティの場となっている。
席予約は承っていないため、実際に現地に足を運んでみて、席が空いていたらふらっと立ち寄る、そんな気兼ねのなさが良いのかもしれない。
また、『CAFE MEMOL』の魅力は豊富なドリンクメニューにもある。
コーヒーはもちろんのこと、お酒の提供も行っているため、仕事帰りに一杯飲みたいけど1人でBarに入るのは気が引ける、そんな時にもピッタリなのだ。
お客さんに寄り添った日替わりランチ
旬の食材を意識して作られている日替わりランチは、お店のInstagramから確認することができる。
この日はハロウィン時に試作で作ってみて好評だったという、かぼちゃクリームパスタ。
これも常連さんからの「もう一度食べたい!」という声に応えたランチメニューだ。
甘すぎないカボチャのしっかりした味がパスタと具材にからまり、とても濃厚で美味しい。
パスタとしていただいた後は、かぼちゃのスープとしても飲み干せるほどクリーミーな味わいである。
この日替わりランチは、単品1050円、コーヒーor紅茶、カフェラテのセット1350円。
1週間以内にリピート注文すると100円引きの1250円でいただけるのだが、今やほとんどのお客さんがリピート注文なのだそう。
また、全体的に量を多くしており、「一人暮らしの方が多いので、持ち帰って夕飯としても食べられるように多めにしているんです」と、店長の田口さんは話す。
ランチメニューだけでなく、量までもお客さんのニーズを考えた、地元民から愛されるお店なのだ。
愛犬の名前を起用した『CAFE MEMOL』
店名である『MEMOL』という名前は、店長の田口さんが仕事で疲れ切っている時に自分を癒やしてくれた愛犬の名前である。
そこには「いつか愛犬がいなくなってもお店の名前として残せれば、いつでもMEMOLを思い出せる。」といった想いが込められている。
「だからオーナーはMEMOLで、私は雇われ店長なんです」と冗談交じりに話してくれた。
今はもういなくなってしまったMEMOLだが、MEMOLの子どもたちはお店のInstagramに頻繁に登場している。
「街の誰かのためになる仕事に就きたい」という想いからオープン
店長の田口さんは、学生時代から長く飲食店で働いていたが、30歳の時に一度OLに転身。
当時は二度と飲食に戻ることはないと思っていたが、33歳で転職を考え始めた際に「違う分野に飛び込むよりも、今まで自分がやってきたことを突き詰めよう!」と、再び飲食業界に飛び込むことを決意した。
その際、飲食店に就職するか自分でお店をやるか迷ったが、東日本大震災の時に炊き出しをやる機会があり、大変なことがあっても温かいごはんがあれば元気になる、ということを目の当たりにし、自分でお店をやることを決めたという。
カフェをやるにあたり、大森という土地を選んだのは田口さん自身の出身地だから。
「何かあったら両親の元へすぐに駆けつけられるだけでなく、自分を育ててくれた場所に少しでも恩返ししたい」と、話してくれた。
OLとして働いていた頃は1日の空の移り変わりや、木々の移り変わりを見ることがなく、日々を雑に生きている気がしたという。
お店がある場所は、公園が目の前にあり、春には1本桜が満開になる。「季節の移り変わりを感じながら、寒くなったねー、春だねーとか言いながら生きたい」と語ってくれた田口さんにピッタリの場所なのだ。
そんな『CAFE MEMOL』は地元民に愛され、2024年で10周年を迎える。
忙しい毎日にホッとする瞬間を取り入れに、また足を運ぼう。
取材・文・撮影=SUI