店内に広がる鰹節の香りに食欲をそそられる
駅から『らーめん かつお拳』の店前まで来ると、リアルな鰹の飾りが出迎えてくれた。ラーメンなのに鰹!? と期待で胸が躍る。
店内に入ると、ふわっと鰹節の香りが漂ってくる。これはお腹が空いてくる。
壁一面には何匹もの鰹の絵。海の中を表現しているのだろうか。黒のみで描かれた壁は、おしゃれで、そしてどこか日本らしさを感じさせてくれる。
ガツンと来るコクのあるスープは、追いがつおでさらに濃厚に
さて、何を食べようか悩む。
店主の星野さんにどのメニューがよく出るか聞くと「らーめん780円、濃厚ぶっつぶしらーめん820円、濃厚つけめん850円は同じくらい出ますよ」とのこと。
悩んだ末、味玉が乗った特製らーめん920円を注文することにした。
かつおタタキ丼280円も食べたかったが、鰹を売りにしていることもあり、やはり人気なようだ。ランチタイム中で既に売り切れだった。次来た時は絶対に食べたい。
食券を渡して、5分もしないうちに着丼。鰹節の香りが強くなる。
早速スープを一口。かつおの旨味が押し寄せてくる。飲み込んだ後でも余韻が残るもんだから、相当濃い。
『らーめん かつお拳』と名乗る意味が分かる。まさに、鰹のパンチを食らったようだ。
星野さんこだわりのスープは、丸鶏を中心とした動物系の素材に、削りたての鰹出汁、寝かせた鰹出汁、低温で取った鰹出汁の三つを合わせて作られている。丁寧に温度管理して抽出されたこのスープは、口に入れてから3秒もの間、余韻を楽しむことができる。
出汁に使用している魚介類の価格が高騰している中、これほど贅沢に鰹出汁のスープを堪能できるのは、おそらくこの店だけだろう。
麺の上には4枚のチャーシュー、ねぎ、メンマ、味玉、そして追いがつお。
なんと、さらに鰹節で出汁を取って好みの濃さにできるようだった。
味噌のように、スープに鰹節をつけて混ぜる。こんなに贅沢に鰹出汁が楽しめるだなんて。
濃くなるのは出汁だから、味は全くしょっぱくならない。あくまでも旨味のみが強くなるのだ。
麺は中太ストレート。モチモチとした食感で、ペロリと食べられる。
チャーシューはほろほろと柔らかく口の中で溶ける。そして、素材の全てに出汁がマッチして、何を食べても旨味を感じられる。
どちらを頼もうか悩んだ濃厚ぶっつぶしらーめんのスープも少し飲ませてもらった。こちらは、特製らーめんと比べると思った以上にまろやか。よりパンチの効いたクセのある味かと思っていたが、そうでもない。むしろ、少しとろみがあり、どんどん麺が進みそうな味だった。
濃厚つけめんはさらに甘みがあり、より濃厚な味だという。
100種類もの素材を試して出合った「かつお」
店主の星野さんは元々、イタリア料理を専門にしていた。その後、ラーメン屋を営んでいた兄に誘われ、ラーメンの道へと進むことに。現在の店を始める以前は「らーめんほしの」という店名で濃厚系のラーメンを提供していた。
星野さんに、どうして鰹出汁のラーメンを提供しようと思ったのか聞いてみた。
「100種類以上の素材でアレンジや試しをしてみて、その中で面白いなと思ったのがかつおでした。それに、鰹節は日本独自のものなので、和を感じることができます」
他にも、チャーシューをどろっどろに炊いて100%チャーシューのスープを作ってみたり、仕入れの段階で面白い食材があったらそれを使って限定メニューを出してみたりと、創作的だ。星野さんの「面白い」からはじまったかつおのラーメンに皆、虜(とりこ)になってしまうだろう。
取材・文・撮影=まとりょーしか