名店の味を継承する行列必至の人気店
浅草通りと清澄通りが交わる稲荷町交差点近くにある『支那そば 大和』。店名が書かれた赤い日除けテントが目印になる。行列ができることが多く、道行く人たちもその行列やメニューに目を向けている光景が見られる。
暖簾をくぐって店内に入ると、白木のカウンター席やテーブル席が並び、白を基調とした店内は落ち着いた雰囲気。
店を切り盛りする店主の田中享(きょう)さんは、ワンタン麺の名店・池尻大橋『八雲』で修業をしていたという。おすすめを聞いたところ「白出汁特製ワンタン麺1100円でしたら、肉とエビの2種類のワンタンが食べられますよ」と教えてくれた。
旨み凝縮の黄金スープに、特製中細麺がよく合う
丼が到着すると、まず目に飛びこんでくるのが輝くように美しい黄金色のスープ。存在感のある大ぶりでプリプリのワンタンに目が奪われる。
スープを飲んでみると、魚介系と動物系の旨さが口の中に広がる。刺激的な味ではなく、コクと深みが絡み合う繊細なやさしい味で、ずっと飲んでいたくなるほどだ。
「味の決め手となる魚介系は、煮干しがふんだんで、昆布も使っています。以前は羅臼昆布を使っていたのですが、釧路昆布に変更しました。昆布の味がより強くなりました」。また、「でき上がったスープは、一度冷まして味が落ち着いてから、注文ごとに再度温めています。お客様から“無化調?”と聞かれるのですが、スープ1000杯分に対して1gの化学調味料を入れて味を調えているので、微化調ですかね」と話してくれた。
スープに合わせるのは、特注のしなやかな中細麺。やや硬めに茹でられていて、コシも強い。「このコシをだすために製麺所で2度練りをしてもらっています」と田中さん。この麺もまた、スープのおいしさを一段と引き上げてくれるようだ。
名店の味を引き継ぐワンタンはもとより、トッピングも旨い
お次は『八雲』直伝の人気のワンタンを。まずは肉ワンタンから。つるんとしてモッチリとした食感の皮に包まれた餡は、噛むと肉汁があふれ出す。わずかにショウガが香り、スープの旨みと一体なる。
エビワンタンは、プリプリとした弾力がたまらない。ショウガ汁や刻んだ玉ネギなどがエビのおいしさをいっそう引き立てている。
ワンタンはもちろん絶品だが、調味料につけ込むことで縁がピンク色になったチャーシューもおいしい。チャーシューではあまり見かけないランプ肉を使用。煮豚ではなく、コンベック(ガスオーブン)でじっくりと焼いている。肉々しい食感があり、独自に配合した香辛料が効いていて、噛みしめる度に肉の旨みが広がってくる。
青ネギが意外な存在感をみせてくれた。田中さんによると「鮮度のいいネギを常に仕入れています」という。やさしいスープと一緒に飲めば、ネギの風とシャキッとした食感が加わり、より奥深くなる。
自宅でいつでも食べられるお持ち帰り
生ワンタンのお持ち帰りも好評。肉ワンタン、エビワンタンのほか、特製ワンタン(肉とエビの2種類)がある。特製ワンタン18個1200円。ワンタン自体に下味が付いているので、茹でるだけでそのままおいしく食べられる。
ほかにも、ワンタンは付かないが、支那そば3食セット2400円も販売。自宅でおいしいワンタン麺を食べることができる。
まずは白出汁から試してもらいたい
田中さんは「『八雲』で修業をした基本を守りながら、オリジナリティあふれるラーメンを提供しています。ワンタン麺は黒出汁と白出汁、ミックスがありますが、まずは繊細な味の白出汁から食べてみてください。夏期にはスダチがたくさんのったすだちそばも登場します。さわやかな風味をぜひ楽しんでください」と話してくれた。
やさしい味のスープと、しなやかな中細麺、餡がたっぷりと入ったワンタンなどおいしさが満載。浅草からも近いので、ひと足のばして絶品ワンタン麺を味わうことをおすすめしたい。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン