「紅葉前線」に異常あり⁉ 長引く暑さで紅葉もスローペースに
2023年の秋は異例の幕開けでした。というよりも、秋がなかなかやってこなかったのです。関東地方をはじめ東日本や西日本では、11月に入っても「夏日」や「真夏日」の日があり、東京都心では7日に最高気温27.5℃を観測し、11月としては過去最も高い気温となるなど、とにかく夏の暑さが長引きました。本来はおでんなど温かい食べ物を食べたくなる頃ですが、キンキンに冷えたかき氷が売れたというニュースもありました。
紅葉は冷え込みが強まって最低気温が8℃以下になると始まるといわれているため、暑さが長引くと色付きのスイッチが入るのも遅れるはずです。
気象庁では、全国各地の気象台で「かえで」(品種はイロハカエデ、ヤマモミジなど複数あり)の紅葉した日・落葉した日を観測し発表しています。2023年は11月21日時点で紅葉を観測した地点は、札幌や旭川など北海道の6地点と青森、奈良だけです。平年なら北日本の各地や北陸でも紅葉しているため、全国的に紅葉前線の進みは遅いことがわかります。
「地球温暖化」でどうなる?紅葉のほかにも影響が……
2023年の記録的な暑さは「地球温暖化」が一つの原因だと考えられています。7月には国連のグテーレス事務総長が「地球温暖化の時代は終わり、“地球沸騰”の時代が到来した」と発言したことも注目されました。11月30日よりアラブ首長国連邦・ドバイで開催される「COP28」でも、地球温暖化について議論される予定ですが、このまま温暖化が進行すると、紅葉にもますます影響が出てしまうおそれがあります。
これまでの観測データを振り返ると、東京におけるかえでの紅葉日は1950年代と比べて2020年には10日以上遅くなっています。10年単位でみると、大体2日~3日ほど遅れています。平年の紅葉日は11月28日なので、50年後は今より10日ほど遅れると考えた場合、12月半ばにようやく紅葉する計算になります。年によってばらつきがあるため、クリスマスに紅葉シーズンを迎えるということもあるかもしれません。
温暖化で変わる散歩の景色。首都圏は水没の危機も!?
紅葉のほかにも、地球温暖化によって私たちの散歩の景色は大きく変わる可能性があります。たとえば、春の散歩で楽しみなサクラは、これまでに比べて開花が早まる傾向が現れています。入学式の頃にはサクラがすっかり散ってしまっていたという経験をしたことはないでしょうか。夏の暑さはますます厳しくなり、東京では熱帯夜も増加すると予測されているため、日が沈んでから夕涼みに散歩するのも難しくなりそうです。
また、地球温暖化は天気にも影響を及ぼします。気温が上がると、空気中に抱え込める水蒸気(飽和水蒸気量)の量が大きくなります。水蒸気は雨雲のもとなので、空気中に水蒸気が増えると雨雲が発達しやすくなり、大雨も増加するおそれがあるのです。大雨の日が増えると、傘を持たずに散歩できる日も減ってしまいそうです。
さらに、温暖化は海でも起きています。海面水温が上昇すると海水が膨張して水位が上昇するおそれがあります。堤防などの対策を取らない場合、海面1mの上昇で大阪や東京などの都市部はすっかり水に浸かってしまうという予測もあるのです。そうなると、散歩どころではなく、移動はボートを使ってするしかないなんて状況も考えられます。
散歩はエコな移動手段!豊かな自然の中で散歩を楽しむためにできることは?
お説教がましく聞こえてしまうかもしれませんが、地球温暖化の進行を少しでもゆるやかにするために、どんなことができるでしょうか?温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスを減らすためには「移動にはなるべく鉄道などの公共交通機関を使う」、「使っていない部屋の電気やエアコンなどは消す」、「テレワークを活用する」、「電気を再生可能エネルギーに変える」など様々な対策があります。日々の暮らしの中でできることもたくさんあります。私たち一人一人の行動によって得られる効果はとても小さいですが、積み重ねることで大きな影響をもたらす可能性があり、やがて国や社会のしくみも変化させる力となるはずです。そもそも、散歩は自動車や飛行機などのように二酸化炭素を排出せずにできる、究極にエコな移動手段です。何か一つでもできそうだと思うことがあれば、この先も自然豊かで美しい散歩の景色を守るために一緒にチャレンジしてみましょう。
参考
気象庁「かえでの紅葉日_観測方法」
https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/kaede2020.pdf
気象庁 東京都の気候変化
東京都のさくらの開花日とかえでの紅葉日のこれまでの変化
https://www.data.jma.go.jp/tokyo/shosai/chiiki/kikouhenka/html/tokyo.html
気象庁 日本の気候変動2020 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/index.html
全国地球温暖化防止活動推進センター
https://www.jccca.org/_bosys/wp-content/uploads/2020/10/panel04_pdf_all.pdf
写真・文=片山美紀