これが川越の街の誇りと文化の集大成だ!

川越がもっとも人であふれる日こそ、言わずもがな、この川越まつりの開催日である。関東では珍しい山車を曳行(えいこう)するスタイルで街を練り行き、特に夜には提灯に照らされた山車がなんとも美しい。

昨年(2022年)は川越市の市制施行100周年を記念してすべての山車が勢揃いという珍しい年だったが、コロナ禍の影響はまだ大きく、規模の縮小や街のにぎわいを演出する出店が出ないなど、さまざまな面で制約があった。だが今年は違う。2019年以来の通常開催となったのだ。さらに日付もいいと来た。各町内の方も盛り上がっている。

川越氷川神社の例大祭は例年10月14日と決まっており、川越まつりは10月の第3日曜とその前日となっている。今年はたまたまその日が重なって、例大祭も川越まつりも同日に行われるのだ。例大祭の後に行われる祭祀である神幸祭も例年は土曜日の開催だが、今年は例大祭が14日の土曜日なのでその翌日、これが本来の形であるらしい。

そもそも川越まつりの始まりは、徳川三代将軍家光の治世下での、川越藩主、松平信綱が氷川神社に獅子頭や神輿等を寄進したことに始まる。江戸と水運で繋がっていた川越は、絢爛豪華な江戸の祭りに追いつけ追い越せときらびやかな山車を作り、曳き廻し、現在の川越まつりに至っている。今は氷川神社だけでなくほかの有力な神社の氏子連も参加して、山車の総数は29を数えるまでになった。

今年街に繰り出す山車は全部で18台。これは各町会がそれぞれ話し合いをして今年は出す出さないを決めたり、あるいはそもそも三年に一度だけ出すという取り決めがある町があったりと、町同士のさまざまな調整があった上で決まることになっている。いつもなら全台揃い踏みの翌年は数が少なくなるそうだけれど、今年は日のめぐり合わせも良いし、何よりも久しぶりの通常開催、それぞれが気合を入れて準備した結果、いつもより多めの山車が出ることになったのだ。

そしてなんと言っても、川越まつりの華は「曳ひ っかわせ」。山車同士がすれ違う際に正面を向き合って、提灯を掲げ囃子を鳴らし、声援が飛び交うのだ。交差点などでは複数の山車がかち合って、祭りの雰囲気を大いに盛り上げる。

370年の伝統は令和の時代も現役だ!

しかし通常開催になり街も盛り上がる中、観客として訪れる際に気をつけたいのはその混雑だ。昨年は規制下でも57万人、コロナ禍以前の2019年は88万人が訪れた川越まつり。コロナ禍以前の形に戻った今年、特に提灯に火が入ってからの20時台の混雑は半端なものではないと予想され、まともに動くことができないレベルだと覚悟した方がいい。ただそれも一部の混雑が集中する地域に限ったことではあるので、そこを避けつつまつりを楽しむのがベストだ。

ちなみに「川越まつりナビ」というアプリには、市内中心部のマップはもちろん山車の位置や混雑情報など各種情報が満載。訪れる際にはスマホに入れておこう。

さまざまな場所から多様な背景を持って川越にやってきた人たちが、老いも若きも一同に集まって楽しむ「まつり」は、今までのやり方だけでは難しいことも多くなるだろう。けれど近年の川越の街における観光の成功は、そういった困難をさまざまなやり方で克服してきたからこそのはずだ。川越まつりもきっとそういったノウハウを大いに利用して、まつりそのものを変えずに、しかし時代の波にさらわれず、これからさらに盛り上がっていくに違いない。

令和5年度川越まつり開催概要

2023年10月14日、15日に開催。特に両日にわたる市内中心部全域を使っての山車の曳行「曳っかわせ」は必見。また開催日以外でも、『川越まつり会館』(入館料一般300円)ではお囃子の実演、山車の展示を観覧可能だ。

取材・文=かつとんたろう 取材協力・写真提供=川越市役所観光課
『散歩の達人』2023年10月号より

小江戸・川越は見どころの多さや都心からの距離も、お休みの小旅行に最適な街。喜多院や川越城本丸御殿で江戸時代をしのび、蔵造りの家並みが続く川越一番街で明治時代を体感する。裏通りには看板建築の商店が立つ大正浪漫夢通りもあり、近年は昭和の街も注目されている。川越さんぽは、タイムマシンにのって時間旅行をしている気分になれる。