だんだんカップ酒のデザインに惹かれていく

Yさんは、そんなかわいらしい柄のカップ酒が好きで、各地のカップ酒を集めている。私自身には当初、カップ酒を集めるという趣味はなかった。旅先から持ち帰るには重いからである。しかし、おシャレなYさんのお眼鏡にかないそうなカップ酒を各地で探すうち、「あれ、もしかしてカップ酒のデザインっていいかも」と思い始めた。実はYさんは下戸で、中身はもっぱら料理に使うとのことなので、大量には差し上げられない。あれこれ持ち帰ってYさんに1つ選んでもらったのち、残りのカップ酒を自分用の土産とするというセコい手を使い、私は自らのコレクションを増やしていった。

現在では旅行に行かずとも、東京近郊であれば、各都道府県のアンテナショップでかわいいデザインのカップ酒を買い求めることもできる。今回は、そんな各地のカップ酒のデザインの傾向を見ていきたい。なお収集のルールとして、ラベルが紙のカップ酒は除外している(再利用を考えて)。

さっそくデザインの傾向を見ていこう

まずカップ酒の形状について。ほとんどのカップ酒は、有名な「ワンカップ大関」のようにズドンとした円筒状をしている。ところがデザインカップ酒には、飲み終わった後の再利用を考えてか、少しくびれているもの、

カップ酒によく見られる桜デザイン。少しくびれがあると格段に持ちやすい(「宮の舞」松田酒造・愛媛)。
カップ酒によく見られる桜デザイン。少しくびれがあると格段に持ちやすい(「宮の舞」松田酒造・愛媛)。

大きくくびれたもの、

すりガラス加工が、しんしんと降る雪を連想させる(「こしのはくせつ」弥彦酒造・新潟)。
すりガラス加工が、しんしんと降る雪を連想させる(「こしのはくせつ」弥彦酒造・新潟)。
見返り美人が描かれる、渋いデザイン(「なんぶびじん」南部美人・岩手)。
見返り美人が描かれる、渋いデザイン(「なんぶびじん」南部美人・岩手)。

普通のコップのように底部がデザインされたものなど、さまざまな形状がみられる。お気に入りの形を集めてみるのもよさそうだ。

他にも菜の花や椿、レンゲ柄もある(「土佐路」高知酒造・高知)。
他にも菜の花や椿、レンゲ柄もある(「土佐路」高知酒造・高知)。

素材もほとんどは透明のガラスでできているが、「こしのはくせつ」(弥彦酒造・新潟)や、とぼけた雪男のキャラがかわいい「雪男」(青木酒造・新潟)は、すりガラス状の仕上げになっていて素敵だ。

とぼけた雪男がかわいい。他にもスノボ雪男もいる(「雪男」青木酒造・新潟)。
とぼけた雪男がかわいい。他にもスノボ雪男もいる(「雪男」青木酒造・新潟)。

描かれるモチーフも多様である。やはり多いのは花だろうか。その中でも桜は人気だが、

桜柄ではあるが、筆文字のおかげで渋さが増している(「やまと桜」佐藤佐治右衛門・山形)。
桜柄ではあるが、筆文字のおかげで渋さが増している(「やまと桜」佐藤佐治右衛門・山形)。
白とピンクの桜で、淡い印象(「桜うづまき」桜うづまき酒造・愛媛)。
白とピンクの桜で、淡い印象(「桜うづまき」桜うづまき酒造・愛媛)。

キキョウやチューリップなどがレトロなデザインであしらわれているものもある。

小ぶりな花柄が控え目でかわいらしい(「雪雀 媛カップ」雪雀酒造・愛媛)。
小ぶりな花柄が控え目でかわいらしい(「雪雀 媛カップ」雪雀酒造・愛媛)。

山形の錦爛酒造のカップ酒は、山形の県花である紅花と、郷土玩具のお鷹ぽっぽが描かれており、郷土愛にあふれたデザインとなっている。

裏にお鷹ぽっぽの絵柄がある(「錦爛」錦爛酒造・山形)。
裏にお鷹ぽっぽの絵柄がある(「錦爛」錦爛酒造・山形)。

郷土愛は花ばかりではない。地域の名所を描いたもの、

隠岐の国賀海岸の絵柄。他にも白島柄もある(「隠岐誉上撰」隠岐酒造・島根)。
隠岐の国賀海岸の絵柄。他にも白島柄もある(「隠岐誉上撰」隠岐酒造・島根)。

伝統文化を描いたものなどもある。

隠岐の伝統文化、牛の角突きが描かれる(「隠岐誉上撰」隠岐酒造・島根)。
隠岐の伝統文化、牛の角突きが描かれる(「隠岐誉上撰」隠岐酒造・島根)。
錦鯉と牛突きという、もりだくさんのデザイン(「オフクカップ」お福酒造・新潟)。
錦鯉と牛突きという、もりだくさんのデザイン(「オフクカップ」お福酒造・新潟)。

伝統的な酒造りと地域の名産とは、そもそも親和性の高いものなのかも知れない。旭山動物園のデザインカップ酒なども、ある意味「ご当地カップ酒」と言えるだろうか。

まるで子どものジュースが入っていそうな、かわいらしいデザイン。他にも2種ある(「ずZOOっと旭山」高砂酒造・北海道)。
まるで子どものジュースが入っていそうな、かわいらしいデザイン。他にも2種ある(「ずZOOっと旭山」高砂酒造・北海道)。

モチーフはかわいらしい動物からくまモンまで

魚介類もおおむね地域の名産がモチーフとなっているようだが、

錦鯉の産地として知られる小千谷のお酒(「長者」新潟銘醸・新潟)。
錦鯉の産地として知られる小千谷のお酒(「長者」新潟銘醸・新潟)。
カニを中心とした、北海道の海の幸の大集合。色違いが2種ある(「北の勝 鳳凰カップ」碓氷勝三郎商店・北海道)。
カニを中心とした、北海道の海の幸の大集合。色違いが2種ある(「北の勝 鳳凰カップ」碓氷勝三郎商店・北海道)。

動物は上記の旭山動物園含め、バンビやパンダなど、かわいらしさから採用されたものが多い印象だ。

手塚治虫タッチのかわいいバンビ(「若鹿バンビカップ」舟木酒造・福井)。
手塚治虫タッチのかわいいバンビ(「若鹿バンビカップ」舟木酒造・福井)。
なぜパンダなのかと思ったら、パンダが初来日した頃に発売されたそう(「御代櫻」御代桜醸造・岐阜)。
なぜパンダなのかと思ったら、パンダが初来日した頃に発売されたそう(「御代櫻」御代桜醸造・岐阜)。

かわいらしさから言えば、キャラクターカップ酒も負けてはいない。くまモンや呉氏などのご当地キャラはもちろん、

おなじみ、くまモンのカップ。他にも梅酒がある(「瑞鷹 くまモンカップ」瑞鷹・熊本)。
おなじみ、くまモンのカップ。他にも梅酒がある(「瑞鷹 くまモンカップ」瑞鷹・熊本)。
呉氏が全面にデザインされた、にぎやかなデザイン(「千福」三宅本店・広島)。
呉氏が全面にデザインされた、にぎやかなデザイン(「千福」三宅本店・広島)。

地元出身のマンガ家・高橋留美子先生のキャラを用いたらんま1/2カップ、桃太郎伝説にちなんだ岡山の桃太郎カップなど、かわいらしさと郷土愛を兼ね備えたデザインが多く見られる。

パンダはらんまの父・早乙女玄馬なので、主人公ではないが、まあいいか(ふじの井酒造・新潟)。
パンダはらんまの父・早乙女玄馬なので、主人公ではないが、まあいいか(ふじの井酒造・新潟)。
80年代のファンシーグッズにありそうな桃太郎(「嶺の誉」渡辺商店・岡山)。
80年代のファンシーグッズにありそうな桃太郎(「嶺の誉」渡辺商店・岡山)。

カップ酒を収集する弊害

こうしたカップ酒の一番の特徴は、飲み終わった後にコップやペン立てなどに再利用できることだろう。しかし問題は、各地のカップ酒を考えなしに買い集めた結果、大量のガラス容器が家に溢れかえることだったりもする。

イラスト・文・写真=オギリマサホ

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