祐天寺の人気ラーメン店『Ramen Break Beats』の姉妹店
丸ノ内線新宿御苑前駅を出て閑静な路地に入っていくと、道中には飲み屋やバーの看板が目立つ。レストランやラーメン店もポツリポツリと見受けられるが、どうもこの辺りは夜になるとにぎやかになるらしい。
徒歩5分ほどで到着した『Ramen Afro Beats』は、一枚板の看板が印象的な、ナチュラルとモダンを掛け合わせた外観だ。引き戸を開けて中に入ると店長の庄司裕貴さんが対応してくれた。
「いらっしゃいませ〜!」と、元気いっぱいに迎えてくれた庄司さん。店内は黒とグレー、白を基調にしたモダンな内装だ。天井が高く開放感があって、客席はカウンターのみ。
「この店は2023年3月11にオープンしました。祐天寺にある本店『Ramen Break Beats』と同じ鶏が主体のスープなのですが、まったくベクトルの違うテイストなんですよ」という。本店はクリアな鶏清湯なのに対し、『Ramen Afro Beats』は白濁した濃厚な鶏白湯。庄司さんが言うには、博多名物の水炊きみたいな濃厚な鶏スープとか。それは期待が高まる!
コックリと鶏の濃厚さがありながら後味はさわやかなレモン風味の特上鶏白湯らぁ麺
何気に周辺にはラーメン店が多く、国内外のラオタ(ラーメンおたく)も一目置く新宿御苑エリア。一番人気の特上鶏白湯らぁ麺1650円をオーダーした。
このラーメンの肝となるのは、一度は絶滅寸前になったことでも知られる希少な地鶏、天草大王のフルボディをふんだんに使って、旨味をじっくり引き出したスープ。鍋で温めたのち、白醤油や乾物などを合わせたかえしや香味油とともに丼に注がれ、ブレンダーで泡立てる。
並行して麺も茹でる。本店でも使用している三河屋製麺のストレート細麺だ。茹で上がった麺の上にレモンの輪切りを乗せ、さらにその上に手の平大のチャーシューが3枚もON。
テーブルにやってきた特上鶏白湯らぁ麺。ふたつの泡による効果はどのように発揮されているのだろう。さっそく食べてみよう。
丼を引き寄せると湯気と共に上品な鶏の香りがする。れんげでスープをひとさじすくって飲んでみると、濃厚な鶏の香りと旨味。力強い鶏の存在感がスープを占めている。だが、後味はあっさりして舌に残らないのがいい。
2種類の大ぶりな豚肩ロースのチャーシューの下からストレートの細麺をすくって食べてみた。
するとチャーシューの下に忍ばせていた薄切りのレモンがふんわり爽やかに香る。麺に絡み合うフライドオニオンの芳ばしさや、生のタマネギ(アーリーレッド)の食感や清涼感がスープと相まって、絶妙な味の層を作り出す。
「味玉には黄身が濃いマキシマムこいたまごを使用しています」と庄司さん。オレンジ色の黄身を食べてみたら、しっかり醤油だれで味つけされていた。
庄司さんに食べ方を聞いた時「半分くらい食べたところで、エスプーマを少しずつ溶かして食べてみてください」と言っていたのを思い出した。順調なペースで食べすすめ、うっかり忘れるところだった。
エスプーマだけすくって舐めてみると、生クリーム仕立ての冷製コーンスープのようだ。すでにスープの熱でやわらかくなってきていたが、少しだけ箸でスープに混ぜて麺と一緒に食べたら、とうもろこし風味が濃厚な鶏白湯に違和感なくなじみ、また雰囲気の違うスープになっている。不思議だ、マジックにでもかけられている気分だ。
最後に残ったレモンを食べてフィニッシュ。満足そうな筆者をみて「レモンを食べると口がさっぱりしますよね〜」と庄司さんもエビス顔だ。
店長の庄司さんがラオタから仕込みバイト、さらに夢のラーメン店店主へ転身
「実は私、元々は祐天寺にある『Ramen Break Beats』の常連客で、2023年6月から『Ramen Afro Beats』の2代目店長をやってます(笑)」という庄司さん。ムムム、なんか面白そうな話が聞けそうだ。
庄司さんは大学時代にラーメン研究会に所属していて、ほとんど毎日ラーメンを食べている生活だったそう。「その時々で好きなテイストが変わりましたが、直近だと鶏清湯にハマっていて。とくにお気に入りだったのがクリアな鶏スープの『Ramen Break Beats』。週に2〜3日は通っていました」。
そのうちに『Ramen Break Beats』の店主・柳瀬さんから声をかけられ、店の仕込みを手伝うようになった。本業はいわゆる堅めな職場だったが、上司は副業を許可してくれていた。
「仕込みの手伝いをはじめて半年くらい経った頃、その3カ月ほど前にオープンした『Ramen Afro Beats』に行列覚悟で行ってみようかなと思っていたら、柳瀬さんから『店長やってみない?』って声をかけられて! めっちゃくちゃ驚きましたよ!」
でも、まんざらではなかった庄司さん。というのも、学生時代からラーメン店を開いてみたいという夢をもっていたからだ。「就活のときにもラーメン屋をやってみたいと思っていたんですけど、堅実な道を選びました。だけど、今29歳なんですよ。やりたいことをやれるのは20代までと思っていたから、このタイミングで“店長に”という誘いには運命を感じてしまいました」。
両親に長年の夢に対する自分の思いを伝え、職場も円満退社し夢のラーメン店店長になったのだそう。さぞ前のめりで肩をブンブン振り回しているのかと思いきや……。
「いや〜、日々営業をこなすことでいっぱいいっぱいで。柳瀬さんからも『新メニュー作ってよ』って言われているんですけど、ぜんっぜん余裕がないんです!」と額の汗をぬぐう庄司さんだが、なんだかとっても楽しそう。
「ラーメンにはまだまだ伸びしろがあります!」という庄司さんのこと、きっとあっと驚くラーメンを作ってくれるはずだ。オリジナル麺の誕生を楽しみに待ってます!
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢