浅草を愛する気持ちにあふれる店内
『浅草名代らーめん与ろゐ屋』は、観光客でにぎわう浅草仲見世通りから伝法院通りに入ってすぐ。蔵を思わせる和風の外観には「らーめんはすでに日本を代表する和食である」という松本氏の思いがこめられている。そのため『与ろゐ屋』では「ラーメン」の表記が全てひらがなの「らーめん」だ。
店内に入ると、1階はカウンターのみとなっている。カウンターの上には浅草の古い写真も飾られている。
2階席も用意されており、家族や団体客が利用できるテーブル席がある。
壁には秘仏である浅草寺の御本尊、聖観世音菩薩の錦絵も掛けられている。この他にも季節ごとに掛け替えられる壁絵などもあり、目にも楽しい。
たまごは特製のふたごの味玉。懐かしの醤油らーめん
『与ろゐ屋』の食券は手書きの大きな特別製だ。ちなみに店内にある達筆な毛筆の書は松本氏の手によるものだという。
今回は特製のふたご味玉の乗った縁たまらーめん1050円と和風ぎょうざ400円を注文した。
きらきらと脂の光る澄んだ醤油スープに、否が応でも期待が高まる。味玉は特注のふたご玉子。お客様との良いご縁、そして皆様の幸運を願って提供されている。スープは煮干しと鶏の風味溢れる懐かしい味わい。そこにゆずのさわやかさが、すっとした清涼感をもたらしてくれる。
煮干しは以前は2種類だったが、松本氏の御子息が4種類に増やしたという。伝統的な醤油らーめんだが、アップデートに余念がない。
麺は長野産の小麦がベース。香り高くスープとの相性も抜群だ。毎日仕込んでいる自家製メンマも脇役とは思えない味わい深さ。しっかりとした歯ごたえと、しみこんだダシががたまらない。開店以来継ぎ足しされているタレに付け込まれたチャーシューは歯ごたえと柔らかさのハーモニーが絶妙。ふたご玉子にもしっかりと味がしみ込み、柔らかい黄身が満足感を引き出す。
来店客の二人に一人が注文するという和風ぎょうざ400円は大ぶりで迫力満点。ニンニク不使用で、豚肉の代わりに鶏肉を使い、春雨、少量の長ネギ、ニラがぎっしり詰まっている。仕込みは手作業で、成形も機械に頼らない。
餃子の皿にはタレが注がれているが、おすすめは山椒塩。山椒塩が肉汁溢れるまろやかな鶏肉のうま味をがつんと引き出す。
素朴でありながら味わい深く、懐かしさを感じる『浅草名代らーめん与ろゐ屋』の醤油らーめんをぜひ体験しよう
『浅草名代らーめん与ろゐ屋』は、醤油らーめん発祥の地・浅草で、正統派の醤油らーめんを提供し続けている。伝統的な醤油らーめんばかりではなく、らーめんにも旬があるという考えのもと、季節毎の限定らーめんも展開。海外観光客の増加やニーズの変化に対応するヴィーガン用のらーめんの提供もしている。伝統を保ちつつも新しいことにも果敢にチャレンジする『浅草名代らーめん与ろゐ屋』で、新しくもあり懐かしくもある味わい抜群の醤油らーめんをぜひ試してみよう。
地下鉄浅草線浅草駅から徒歩7分
つくばエクスプレス浅草駅から徒歩10分
取材・文・撮影=かつの こゆき