『花やしき』のお膝元にある抹茶クレープ専門店

『浅草花やしき』を目印に行けば、花やしき通りの路地裏にある。
『浅草花やしき』を目印に行けば、花やしき通りの路地裏にある。
立て看板がなければ、見逃してしまいそう。
立て看板がなければ、見逃してしまいそう。

『浅草花やしき』入り口近くに店を構えるが、少し分かりにくい場所にある。花やしき通りを西に進み、『天然温泉 凌雲の湯 御宿 野乃 浅草』の看板が見えてきたら、その路地を左に入る。

この一帯は、長屋に居酒屋がいくつか店を構え、下町らしい風情が色濃く残っている。『寿清庵』もその長屋の一部にあり、路地に面した小さな窓口が目印だ。

「店名は二人の娘から一字ずつとって付けました」と、優しい笑顔が印象的な須永さん。
「店名は二人の娘から一字ずつとって付けました」と、優しい笑顔が印象的な須永さん。

店主の須永(すなが)司さんは、京都出身ということもあり、宇治抹茶を使ったこの店をオープンさせた。

「大学卒業後に一般企業でサラリーマンをしていましたが、脱サラして飲食業界へ転職しました。後に、エジプトに勉強に行ってキッチンカーのエジプト料理店を始めたのが始まりです」と話す。

キッチンカーでは、エジプトの国民食・コシャリという料理を提供していた。ご飯にパスタ、豆などを加え、フライドオニオンとトマトソースをかけた混ぜごはんで、オフィス街や大学の近くなどに出店。エジプト大使館にも協力してもらい、日本初のエジプトフェスティバルも開催したという。

「いずれはスイーツのお店も出してみたいという思いがありました。やるなばら、どこにもない専門店がいいなと考えて抹茶クレープ専門店をオープンさせました」と須永さん。

こうして、和スイーツにはピッタリの浅草で、念願の店をオープンさせた。

老舗問屋の最高品質の宇治抹茶

茶道にも使われる最上質の抹茶を使用。
茶道にも使われる最上質の抹茶を使用。

使用する抹茶は、須永さんの出身地である京都にある宇治抹茶の老舗問屋「桑原善助商店」のものを使用している。香り、色、口当たりもよい抹茶粉は、茶葉を石臼で丁寧に挽いている。

この抹茶を生地に直接練り込んでいるのだが、「抹茶を生地に練り込むと硬くなりがちなので、もっちりとした生地を作るために配合は試行錯誤の連続でした」と須永さん。

できあがった生地は抹茶本来のきれいな色で、見るだけでもおいそうなのが分かる。

生地にも抹茶本来のきれいな色が表現されている。
生地にも抹茶本来のきれいな色が表現されている。

抹茶クレープは常時4種類あり、今回注文したのは八坂880円。広げた生地にホイップクリームと自家製の抹茶クリームをのせ、丹波地方で生産された黒豆をのせている。これが食べたときに、意外なアクセントになるのだ。

 

抹茶ソースをたっぷり含んだ一口サイズのティラミスもおいしい。
抹茶ソースをたっぷり含んだ一口サイズのティラミスもおいしい。
マスカルポーネチーズクリームは、優しい酸味が後から効いてくる。
マスカルポーネチーズクリームは、優しい酸味が後から効いてくる。

そして、抹茶ソースをたっぷりとつけたティラミス、仕上げにはマスカルポーネチーズクリーム、さらに抹茶パウダーをふりかけて完成。

抹茶一色のクレープは手に取るとずっしりとした重みがあり、ボリュームがあるので少しでもバランスを崩すと抹茶パウダーがくずれ落ちそう。

和洋の不思議なバランスがたまらない新感覚クレープ!

きれいな抹茶色で、崩して味わうのももったいないほど。
きれいな抹茶色で、崩して味わうのももったいないほど。

早速、スープンで崩して味わってみると、真っ先にマスカルポーネチーズクリームのやわらかな酸味が口の中を支配する。抹茶のほろ苦さと絶妙に調和し、隠し味の自家製レモンジャムも効いて、後味は意外にもさっぱりしている。

食べ進めていくと、抹茶ソースにつけられたしっとりとやわらかなティラミス、時折ニョキニョキと顔を出す黒豆など、変化に富んだ食感のトッピングを発掘する楽しさもある。

黒豆が下のほうにも入っており、最後まで楽しめる。
黒豆が下のほうにも入っており、最後まで楽しめる。

食べ終わる頃にはすっかりお腹もいっぱいになった。甘み、酸味、苦みの調和が見事で、最後まで飽きずに食べられる。

混雑時は2時間以上の待ち時間になるということで整理券制にしている。券売機で整理番号が印字されたチケットを購入し、注文するようになっているので、待ち時間に周辺の浅草散策を楽しむのもいいだろう。

住所:東京都台東区浅草2-7-21/営業時間:11:00〜17:00/定休日:不定/アクセス:私鉄・地下鉄浅草駅から徒歩10分

取材・文・撮影=千葉香苗 構成=アド・グリーン