学生街にあって、地元の人たちに愛される人気店
東京工科大学、蒲田キャンパスのはす向かいにある『麺屋 ちょこざい』。場所柄、学生が多いのだろうと思い、店主にうかがってみると、「確かに学生たちは来ていただいていますが、どちらかというと近所に住まわれている方が多いようです。帰宅途中に寄っていただき、ビールとともにラーメンやつけ麺を楽しむ方もいます」と話してくれた。
地元に愛されるこの店で一番人気は、特製梅と煮干しつけ麺1200円。
濃厚な煮干し系のつけ汁がさわやか味に変化する梅のエスプーマ
運ばれてきたきた丼を見ると何やら見慣れない物が。レンゲに泡がのっている。店主は「以前は働いていた店舗で梅のタレを絡めるつけ麺を提供していたのですが、より梅を味わっていただきたくてエスプーマにしました。つけ汁に入れてしまうと梅の味や香りが薄まってしまうので、麺に絡めて食べてみて下さい」と教えてくれた。エスプーマとは、エスプーマ機を使用して液体を空気のような軽い泡状にしたもので、食材の味をそのままに感じられる。
つけ汁は煮干しの香りと味が力強く出ているが、魚介特有のえぐみは感じられない。店主は「煮干しだけでなく、鶏ガラや豚ガラ、昆布やシイタケなども加えているます。これらが合わさって複雑な風味が出ているのだと思います。提供直前に魚粉を入れているので、より魚介を感じられます」と話してくれた。
まずは中太ストレート麺をつけ汁に浸して食べる。すすった瞬間にパンチのある煮干しの味が広がり、モッチリとした食感の麺がさらに味に膨らみをもたらす。
お次はエスプーマを麺に絡めて食べてみる。提供直前まで冷蔵庫でキンキンに冷やしたエスプーマは、梅のさわやかさが感じられ、まるで冷製梅そばのよう。ちょっと食欲がないときでもあっさりと食べられそう。
そして、麺にエスプーマを絡めて、つけ汁に浸す。麺とスープ、エスプーマが口の中で混ざり合い、濃厚さとさわやかさが一体となり、どんどん食が進む。
約6時間かけて低温調理をしたチャーシューも好評。脂身の多い部分と赤身の2種類の肩ロースチャーシューが食べられる。とろけるように甘さが広がる脂身の多いチャーシュー、噛めば噛むほど味が出てくる赤身のチャーシュー、どちらも秀逸の出来といえる。
味玉はチャーシューの煮汁を加えて、2日間かけてじっくりと味を染み込ませている。提供前に温めながら風味をつけてるので、食べるとトロリと黄身がこぼれてくる。シャキッとした歯ざわりのメンマもいい味付けだ。
白コショウや煮干酢、ユズなどで味の変化を楽しむ
卓上にある調味料は白コショウと、煮干しを酢に漬け込んだ煮干酢のみ。店主は「白コショウは、刺激が少なく、香りがいいので、つけ汁に入れずに麺にかけて食べてください。煮干酢を入れれば、煮干しの風味を損なうことなく、スッキリとした味わいになります」と教えてくれた。
麺の上には、ユズやカイワレ大根が添えられているので、調味料と合わせて味変をして楽しみたい。
卓上に置かれた割りスープで締めを。割りスープも煮干しが効いていて、最後まで煮干しの風味を楽しむことができる。
濃厚さとさわやかさを兼ね備えたつけ麺を味わう
店主は「世の中には、さまざまなつけ麺がありますが、梅を使ったつけ麺はあまりないと思います。
梅増し50円もできますが、梅が苦手な方は梅抜きや柚子胡椒に変更ができますので、味わってみて下さい」と話す。
パンチのある煮干し系はある。柑橘を使ったさわやか系もある。ただ、両方のよさを兼ね備えたつけ麺というのはなかなかない。唯一無二のつけ麺をぜひ味わってみよう。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン