地域に愛されてきたそば店の3代目が開いたカフェ

ナチュラルな雰囲気のカフェ『CAFE IZUMIYA』。目黒川のたもとにあるTimesのビルを右折すると店がある。道を挟んだ斜向かいで地域に住む人たちに愛され、約50年営業してきた日本そば店「いづみや」が、2020年に閉店。その翌年に、3代目にあたる店主の小林剛史さんと奥さまの直子さん夫婦がこのカフェをオープンした。

ワンちゃん連れやベビーカー、車椅子など誰でも入りやすいよう設計に工夫した入り口。
ワンちゃん連れやベビーカー、車椅子など誰でも入りやすいよう設計に工夫した入り口。

「家族で「いづみや」をやっていたのですが、父と母がもう歳なのと、フロアがここの3倍くらいあり私たち2人では大変だなということで閉店しました。新しく店を構えて何かできないかと考え、ランチの延長でお茶と甘味も食べられるカフェにしました」と剛史さん。

店の主力はスパムおにぎりと甘味、そして夏季限定のかき氷だ。「私が甘味好きで、五反田にあんまり甘味のお店がないかなということで」と直子さん。

コロナ禍でのオープンだったため、ひとつでお腹いっぱいになり、手軽に食べられて冷めてもおいしいものをと考えたところ、スパムおにぎりに行き着いた。ランチのスパムおにぎりセットには、そば屋自慢のだしを使った味噌汁や日替わりのお総菜がつく。

スパムおにぎりに2種のおかず、味噌汁、デザートまで! たくあんマヨや梅など全8種あり、一番人気はスタンダードないわゆるポーク卵。
スパムおにぎりに2種のおかず、味噌汁、デザートまで! たくあんマヨや梅など全8種あり、一番人気はスタンダードないわゆるポーク卵。

「ランチとうたっていますが、夕方でも提供しています。それとお弁当としてテイクアウトもやっています。スパムおにぎりには、沖縄から取り寄せた油味噌をつけているのがこだわりです」。

おにぎりや甘味は近所の人たちの利用が主だが、夏季限定のかき氷は遠くからでも食べに来るマニアも増えた。「これまでは朝にランチとかいろいろ忙しいので13時から提供していたんですけど、今は朝からかき氷を提供しています」と剛史さんがいう。

雪のようなきめの細かい氷と自家製シロップが自慢のかき氷。
雪のようなきめの細かい氷と自家製シロップが自慢のかき氷。

ひとつずつ丁寧に作っているメニューには好感が持てる。残るもうひとつの柱・甘味も期待できそう。

粒とこしをバランスよく合わせたあんこがおいしい、おしることあんみつ

これだけいろんな飲食店があるのに、甘味処が減っていることは残念で仕方がない。寒天に目がない筆者は、すぐさまメニューにあるあんみつに熱視線を送った。すると、直子さんが「あんみつとおしるこのセットもあるんですけど、どうしましょう?」と言うではないか。

ああ、これこそ盆(冷たい)と正月(温かい)が一緒に来たってやつですねえ。腕まくりとねじりハチマキで挑む筆者。撮影が大変だが、ぜひそれをお願いします!

おしるこの餅は、オーダーが入ってから焼く。
おしるこの餅は、オーダーが入ってから焼く。
つぶしと粒をいい具合の比率で混ぜているおしるこには塩を少々。このひと塩がおいしさのポイント。
つぶしと粒をいい具合の比率で混ぜているおしるこには塩を少々。このひと塩がおいしさのポイント。

「あんこは父の知り合いの製あん所から仕入れています。某大手製パン会社などに卸している上質なものです。つぶしと粒を混ぜたあんに、気持ちだけ塩を混ぜて甘さをひきたてているんですよ」と、甘味好きの直子さんのこだわりが光る。

直子さんによる自家製寒天。ひんやりパートは寒天におまかせだ。
直子さんによる自家製寒天。ひんやりパートは寒天におまかせだ。
あんみつの上にはあんこ、あんず、黄桃にパイン。あと季節の果物が乗るのだが、この日はスイカだった。最後にえんどう豆が乗って完成だ。
あんみつの上にはあんこ、あんず、黄桃にパイン。あと季節の果物が乗るのだが、この日はスイカだった。最後にえんどう豆が乗って完成だ。

直子さんがティーポットで入れてくれたサービスのお茶を従え、あんみつ・おしるこセット850円がやってきた。まずはあんみつから。黒蜜をたっぷりかけていただきます。

ぷりっぷりの寒天にたっぷり黒蜜をかけて食べるのが好き。
ぷりっぷりの寒天にたっぷり黒蜜をかけて食べるのが好き。

寒天を口の中でブリンブリンと噛み砕くと、冷たさが喉を滑り落ちていく。ああ〜、おいしいっ! ちょうどいい甘さのあんこと甘酸っぱいあんずと一緒に食べればもっと幸せ。ほくっとしたえんどう豆も、食感と風味で重要な役割を果たす。

半分ぐらい食べ、すっかり汗がひいたところで、次はあたたか〜いおしるこ。それぞれ好みはあると思うが、筆者としては、すすれないほど濃くてもいけないし、甘いだけであんこが薄くシャバシャバすぎると味気なくていやだ。

餅がうっすらと汁をまとっていて筆者好み。
餅がうっすらと汁をまとっていて筆者好み。

さっそくおしるこの汁をすすると濃度も甘さもちょうどいい。餅に焦げ目がつくまで焼いているので、餅米の味わいや香ばしさも感じられてサイコー。直火で焼くひと手間は大切なんだなあ。

食後に温かいお茶がありがたい。有料のコーヒーや紅茶もあるのでお好みでどうぞ。
食後に温かいお茶がありがたい。有料のコーヒーや紅茶もあるのでお好みでどうぞ。

これらはハーフサイズでそれぞれに単品もある。筆者としては2種類食べられるし、量がちょうどいいから断然このセットがおすすめだ。友人とそれぞれおにぎりセットを食べたあと、あんみつおしるこセットを頼んでひとつずつシェアするのもいいかもしれない。

看板犬のモコちゃんが店長!? ワンちゃんにもきてほしい

食後にお茶を飲みながら店を見回してみる。シンプルでナチュラルな内装は「男性も女性も、いろんな人に入りやすいようにしています。あとはウチ、動物もOKなんですよ」と直子さん。愛犬でペキニーズのモコちゃんは6歳の男の子で、このカフェの人気者。だいたい毎日午後には“ご出勤”して店内を見回るカワイイ店長さんだ。

つぶらな目で見つめてくるモコちゃん。入り口の窓から姿を見つけた人が「モップが動いてる!」と正体を確認しに店へ入ってきたことも。
つぶらな目で見つめてくるモコちゃん。入り口の窓から姿を見つけた人が「モップが動いてる!」と正体を確認しに店へ入ってきたことも。

五反田にはペットOKのカフェも多いが「オープンカフェではワンちゃんがかわいそうな時季もあります。だからどんなコも店内同伴OKにしてあげたかったんです」といい、床材も清掃しやすいものを選んだ。一般的なマナーとして店内では抱っこかリードをしてもらうことや、犬連れでない人にも声かけするなどして配慮をしている。

甘党男子もおひとりさまで躊躇なく入れるシンプルな店内。
甘党男子もおひとりさまで躊躇なく入れるシンプルな店内。

お散歩は好きじゃないし、運動量も激しくないけど脱走癖がある。でも店にくると忙しなく歩き続ける働き者のモコちゃんに癒やされる! しばしば筆者の足元にやってきてはモコちゃんがグルグル唸っている。どうしたのかな? 「怒っているんじゃないんです。コミュニケーションをとっているみたいなんですよね」とのこと。モコちゃんが「いらっしゃいませ〜」とか、「今日はどちらから?」なんて言っているのかもしれないと思うと、ますますかわいくなっちゃう。

ちなみに硬派(⁉)なモコちゃんは男性びいきらしいので、犬好きの男性諸君はぜひ会いに行ってみては。

住所:東京都品川区西五反田2-17-4/営業時間:9:00〜18:00(土は11:00〜16:00)/定休日:不定/アクセス:JR・私鉄・地下鉄五反田駅から徒歩5分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢