【IKEBUKURO EASTSIDE AREA】
多彩で濃厚な池袋カルチャーを醸成
駅ビルばかりに人が集まる「駅袋」と呼ばれながらも、駅から外へ、人を街に導き続けるランドマークが『サンシャインシティ』だ。中でも展望台は1978年の開業当時、東洋一の高さを誇る海抜251mから見渡す360度のパノラマが東京を代表するスポットとして認知され、時代のニーズに応えて演出されてきた。2023年、近隣住民をもターゲットにした「てんぼうパーク」に生まれ変わったのも、そうした変化の一形態だ。
もうひとつ、池袋東口の流れで見逃せないのが2020年7月、移転した豊島区役所跡地にグランドオープンした『Hareza池袋』の存在だ。
伝統的な演劇やクラシック音楽、3Dなど最新技術を駆使したエンターテインメントの表現の場が新たに誕生した。もともと東口エリアは最新設備の映画館や書店が多い上、『アニメイト池袋本店』を拠点としたマンガ・アニメ文化や「乙女ロード」などを含むサブカルチャーの発信地だったが、こうした既存の文化が新施設で展開されるコンテンツと融合して、濃厚なハイパーカルチャーのスープが醸成されつつあるのだ。
昼は子供、夜は大人に愛される天空の公園『サンシャイン60展望台 てんぼうパーク』
2023年4月にニューオープン。人工芝スペースや植栽など緑あふれるなか、寝転んだりカフェを利用したり、アロマやBGMも心地良い空間に大変身した。昼はファミリーを中心に子供たちの歓声が飛び交う一方、夕方以降はムーディーな演出を楽しむ大人が集う。「池袋エリアに4つの公園が整備されましたが、私たちはここを『5番目の公園』ととらえて地域に貢献したい」と、展望台運営担当の篠原聡さんの説明にも熱がこもる。
誰もが「主役」になるためのハレ舞台『Hareza池袋』
2020年7月、豊島区が掲げる「国際アート・カルチャー都市構想」の中核施設としてオープンした『Hareza池袋』。ミュージカルや伝統芸能を公演するホールや映画館、サブカルチャーを楽しめる空間など、個性の異なる8つの劇場を備える大規模複合商業施設だ。道路や近接する中池袋公園も含めた、まちを舞台にしたイベントも多数開催して、池袋の魅力づくりを多角的に展開している。
【IKEBUKURO WESTSIDE AREA】
池袋西口が脚光を浴びたのは、なんといっても2000年、石田衣良の小説『池袋ウエストゲートパーク』(I.W.G.P)が長瀬智也、窪塚洋介らの出演でテレビドラマ化されてからだろう。池袋西口公園がドラマの聖地となり、隣接する東京芸術劇場は西口のシンボル的存在として、世界的な演目の上演やさまざまな自主公演を行って話題をつくり続けてきた。
さらに2019年、池袋西口公園は野外劇場「グローバルリングシアター」が整備され、クラシック音楽のコンサートやダンス、演劇などのイベントが盛んに行われ、文化の発信地に。
視点をさらに西に進めると、南長崎に2020年にオープンした『トキワ荘マンガミュージアム』は、3周年を迎える2023年で来館者10万人を突破した。
そもそも池袋西口の周辺エリアは、大正の終わりから終戦にかけて「池袋モンパルナス」と呼ばれ、貸し住居つきのアトリエ村に画家、音楽家、詩人などさまざまな芸術家が独特の文化圏を形成していた伝統があるのだ。
現在、池袋駅西口の再開発の一貫として、アゼリア通り、乱歩通り、立教通りの整備が進められているが、これによって駅前のにぎわいと文化と芸術の香りが結びつけば、西口は新たな活気に満たされるに違いない。
池袋西口発!脳内国際線フライト『FIRST AIRLINES 池袋国際空港』
地上にいながら航空、世界旅行の気分を味わうことができるバーチャル航空体験施設。
「Airbus 310 340」のファーストクラスで実際に利用されていた座席に座るだけでもテンションが上がる。各国の特色を活かしたフルコースの機内食を堪能しながら、NY、パリ、ローマ、ハワイなど、約120分のバーチャルフライトを。視覚、触覚、味覚を駆使する、まさに究極の脳内旅行だ!搭乗はウェブ予約でお早めに。
西口を拠点に30年以上。本格アートを発信『東京芸術劇場』
都民の芸術文化振興の拠点として1990年10月にオープン。国内外のクラシック音楽、演劇、舞踊、演芸など多様な芸術を提供してきた。さらに、2009年に初代芸術監督として野田秀樹を迎えて以降は芸術劇場主催の自主公演にも積極的に取り組み、「発信型の劇場」として躍進。2024年9月30日から25年7月中(予定)まで設備更新工事のため一時休館となるが、その前にぜひとも劇場を訪れておこう。
【COLUMN】池袋全体が舞台に!?“アト・カル”構想とは
豊島区が掲げる将来像は「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」。伝統芸術から最先端のカルチャーまで、文化資源を最大限に活かしながら空間を整備し、表現の舞台をつくる。この「アート」「カルチャー」の魅力で世界を惹きつけるまちづくりが「国際アート・カルチャー都市(通称アト・カル)」構想だ。いわゆる箱モノ行政とは異なり、“演劇のまち”池袋を牽引する演劇祭やアートイベントを公園や街の中でも催したり2023年春には世界最大規模のアニメショップ『アニメイト池袋本店』がオープンしたりと、官民一体で推進しているのだ。
街の魅力が高まることで、住民を呼び込み、誰もが住み続けたいまちづくりにもつながる。誰もが主役になる=誰一人取り残さない理念はSDGsに結び付き、2020年には「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に選出された。豊島区の文化を軸としたまちづくりは、注目を集め続けている。
取材・文=ボブ内藤 撮影=新谷敏司、中村宗徳
『散歩の達人』2023年7月号より