常連客から愛される昭和から続く老舗とんかつ店
筆者は揚げ物が大好物で皿の上の茶色い分が多いほど幸せを感じるが、同時に健康診断の数値も気になってしまう今日この頃だ。そんなとき、ヘルシーな揚げ物ランチをいただけるお店があると聞いて、そんな夢のようなものがあるのかと疑問に思いながら、早速、大久保へ向かった。
そのお店はJR大久保駅のすぐ近くにある『とんかつ しゃぶしゃぶ にいむら 大久保店』。お店に到着したが、店頭には本日来店した目的である“すっきりヘルシー”をアピールするものが何も無い。少々不安に感じながら、店に入る。
「歌舞伎町の本店は1961年、ここ大久保店は1985年に開店しました。とんかつ店としては西新宿にも支店があります。歌舞伎町にはしゃぶしゃぶとステーキの店もあるんですよ」と教えてくれたのは店長の儀間直也さん。
歌舞伎町の本店は昭和から続く老舗とんかつ店として地元の人から長年愛されている。親子4代で通ってくる常連さんもいるそう。某大物女性演歌歌手も『にいむら』のとんかつのファンで、新宿コマ劇場で公演中は毎日弁当の注文があり、楽屋へ届けたそう。ここ大久保店も歌舞伎町店と同様に多くの常連客が通う。
「当店の揚げ物の特長は“オーブン製法”にあります。まず、とんかつなどの揚げ物を揚げ色がつくまで油で揚げます。つぎに、フライパンに移してオーブンに入れ、火を内側まで入れます。すると、衣に染み込んだ余分な油が切れてヘルシーな揚げ物になるんです」と儀間さん。
なるほど、このオーブン製法がすっきりヘルシーな揚げ物の秘密なんだと納得。とんかつだけではなく、揚げ物はすべてこのオーブン製法で調理しているそう。余分な油が落ちているので、健康が気になる筆者でも安心していただける、夢のような揚げ物だ。
揚げ物満載なのにヘルシーなランチメニュー
今回注文したランチメニューは、梅シソ・海老・カニコロ1030円。ライス、味噌汁、漬物がつく。
とんかつ系ランチとどちらにしようか悩んだが、『にいむら』おすすめの3種類の揚げ物をいただける人気のセットに決定。さらに、「オーブン製法でヘルシーだから」という都合のいい言い訳で、禁断の追加メニュー・ミニメンチかつ200円を注文。
しばし待つと注文したランチがテーブルに出される。期待通り茶色が多い一皿だが、もちろん罪悪感はない。
早速、梅シソ巻きからいただく。オーブン製法で油分が少ないせいか、シソそのものの香りが口の中にふわっと広がる。オーブン製法はヘルシーだけではなく、素材の味を活かすという効果もあるようだ。
ストレスなく揚げ物を食べる幸せを久しぶりに感じながら、続いてカニクリームコロッケ、エビフライもパクリ。こちらも程よく油が落ちて衣もフワさくの食感だ。
つぎに追加で注文したミニメンチかつを一口いただく。肉汁じゅわっ系のメンチカツと違い、余分な油分が落ちているので、まろやかささえ感じるやさしい味わいだ。
そして、この揚げ物のおいしさを引きたてているのが、厳選した素材を混ぜ合わせ、6日間寝かしてつくりあげたという特製とんかつソースだ。常連客には、このとんかつソースとキャベツの組み合わせのファンも多いそう。
使っている豚肉は鹿児島産の黒豚、ご飯は茨城産のコシヒカリと食材にも隙がない。ボリューム満点の揚げ物3点と追加のメンチカツをいただいても、食後の油分のこってり感もなく、さっぱりした後味で大満足。ごちそうさまでした。
オーブン製法だからヘルシーとおいしいを両立できる
次に伺うときのために、儀間さんにおすすめのとんかつメニューを伺うと、ひれかつ定食とのご返事。厳選した国産のヒレ肉を使った丸いヒレかつは、オーブンで火を入れることで中まで程よく火を入れることができ、トーストのおこげのような、香ばしい香りも加わるそう。次回のオーダーは決定だ。
油分が少ないと味にパンチが欠けるのではと思っていたが、逆に食材そのものの味をしっかりと味わうことができた。ヘルシーというだけではなく、油が適度に落ちることで食材の旨味を最大限に活かすことができるオーブン製法のファンになってしまった。
とんかつ店は一般的に男性客が多いそうだが、『にいむら』では女性や年配の人の割合が多いそう。その理由が納得できるランチだった。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎