日本に仏教がやってきた!

奈良の大仏がある華厳宗の大本山『東大寺』。
奈良の大仏がある華厳宗の大本山『東大寺』。

今から1500年ほど前の奈良時代、仏教が「最新のイカした思想」として日本に入って来ました。

それらを「奈良仏教」と言い、現在は3つの宗派が残っています。

奈良の大仏でおなじみの東大寺を中心とする「華厳宗」

教科書にも載っているお坊さん、鑑真が伝えた「律宗」

仏像ファンから絶大な人気を集める阿修羅像を祀る興福寺と、薬師寺を中心とする「法相宗」です。

現代人の仏教との接点は、お葬式であることが多いですが、奈良仏教はお葬式をあげません。

また、檀家も持っていないのも他の宗派との違いと言えるでしょう。

役人や貴族は、こぞって奈良仏教を学び、仏教によって国を守り安定させようとしたのです。

スター空海と、アベンジャーズを育てた最澄

ことわざなどでは「弘法大師」の名でもおなじみの空海。
ことわざなどでは「弘法大師」の名でもおなじみの空海。

平安時代になると、「仏教は、役人や貴族など偉い人だけのものではダメだ!」という考えが、民衆に広がります。

その頃に名を馳せていたのが、最澄と空海。

二人は密教を学び、「天台宗」(最澄)と「真言宗」(空海)を開きます。

それまで国の役人らだけに向けられていた仏教が、一般の民衆にも広まるようになりました。

密教は仏の前で、「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」などの「真言」を唱えます。

他の宗派が唱える「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」は、訳すことができますが、真言は訳すことができません。

これは、人間の言葉ではなく仏の言葉であるとされているためです。

こうしたことから、秘された宗派という意味で密教と呼ばれているのです。

アニメ『ひみつのアッコちゃん』で唱えらる魔法の言葉、「テクマクマヤコン」にも通ずるところがあるとも言えるかもしれません。

密教では、この真言の働きなどによって、現生利益(げんせいりやく=この世で得られる幸せ)を得ようとしました。

真言宗寺院の本堂(千葉県『勝覚寺』)。
真言宗寺院の本堂(千葉県『勝覚寺』)。

真言宗は、空海のスター性と天才っぷりに牽引されて広まっていきます。

一方で天台宗は、最澄が師としての手腕を発揮し、法然・親鸞・道元・栄西・日蓮など、日本仏教アベンジャーズなメンバーを育て上げました。

みんなでgo to HEAVEN!

港区増上寺は浄土宗のお寺。
港区増上寺は浄土宗のお寺。

平和だった平安時代も末期から鎌倉時代になると、戦乱の世に。

そんな時代に、法然が「浄土宗」を開き「たくさん『南無阿弥陀仏』を唱えれば救われる」と説きました。

この「救われる」は「死んだ時に地獄ではなく、極楽に行ける」という意味です。民衆は戦の頻発によって、今ではなくあの世での幸せを願うようになっていたのです。

また、修行や出家を必要としないスタイルも、浄土系の宗派を広めた要因です。

生活のために出家や修行ができない人や、狩猟や漁が仕事で「生き物を殺してはいけない」という仏教のルールを守れない人々のあいだで、「南無阿弥陀仏」を唱えるだけで救われるという教えは一大ブームを巻き起こしました。

一遍の開いた「時宗」や、良忍が開いた「融通念佛宗」などの浄土系宗派も、全国に広まっていきます。

浄土真宗の宗祖である親鸞の像
浄土真宗の宗祖である親鸞の像

浄土系の中でも誤解を招かれがちなのが「浄土真宗」です。

親鸞が開いたとする解説も見かけますが、「弟子なんて、一人も持っていない」と親鸞が語る通り、人々がついてきたというのが実情。

教義についても、「一度でも『南無阿弥陀仏』を唱えれば救われる」と解説しているものもあります。

しかし実は、「全員すでに救われていて、それに気づいた時に『マジか!阿弥陀様!ありがとうございます!』と思わず南無阿弥陀仏が溢れ出す」というスタンスなのです。

世界に広まる日本の「禅」

日本最古の禅寺である福岡県の『聖福寺』。
日本最古の禅寺である福岡県の『聖福寺』。

スティーブ・ジョブズなども学んだ「禅」。

浄土系と同じ時代に「坐禅すれば悟りに近づく」と広まったのが禅宗系です。

栄西は日本に「お茶」を広めた功績も。
栄西は日本に「お茶」を広めた功績も。

そのひとつが栄西が開いた「臨済宗」

特徴は「公案」という対話形式の坐禅。師に「犬は、仏になる素質はあるか?」などと問われ、それを全身全霊で感じて回答します。

頭で考えたロジカルな回答は無用なので、一般の常識とは離れた”とんち”のようなやりとりになることも。とんちでおなじみの「一休さん」は、まさに臨済宗のお坊さんです。

常識を超えた発想が生まれるからこそ、現代の経営者も禅を取り入れているのかもしれません。

道元が開いた「曹洞宗」の禅宗のひとつ。

対話の臨済宗に対し、黙ってひたすら坐禅を組む「只管打坐(しかんたざ)」が特徴です。

また、歩く・座る・食べる・寝るなど、生活の全ての行動が修行だと考えられています。

そのため、トイレも「東司(とうす)」という修行場としての名前がつけられているほど。

禅宗ではその他、江戸時代に入ってきた「黄檗宗(おうばくしゅう)」も広まっています。

我が道を行く「日蓮宗」

浄土系や禅系の宗派と同時代にありながら一線を画し、孤高に信仰を広めたのが日蓮が開いた「日蓮宗」です。

数ある仏教の経典の中でも「法華経」が一番重要だとし、「法華経を大事にします」という意味で「南無妙法蓮華経」を唱えます。

孤高な宗派のため、日蓮宗にしかない仏像も多く存在します。

威厳ある姿の日蓮像。
威厳ある姿の日蓮像。

それぞれの宗派が、どんな成り立ちでどんな教えなのか、少しでも知っておくと、お寺へのお出かけも深みと面白みが増します。

近所のお寺が何宗なのか、お散歩の時にのぞいてみるのもいいですね!

写真・文=Mr.tsubaking