酒飲みの心を弾ませるカップ酒セルフ方式とは

どんなお店かを雄弁に語る暖簾。佐渡近海のネタに出合えることは間違いない。

暖簾を見れば一目瞭然である。2019年2月、酒場激戦区に割って入った立ち飲みの新店『寿司バル弁慶 神田店』は、さ=佐渡の すし=寿司と せ=清酒を そ=即堪能できるらしい。「あいうえお作文」の遊び心が、のっけから飲ん兵衛の心をくすぐるじゃないの。

冷蔵庫からセルフでカップ酒をチョイス。カウンターのほかに、4人まで立ち飲みできるテーブルも。

暖簾をくぐると、老若男女で大賑わい。合間を縫ってカウンターへ向かうと、背後の冷蔵庫にワンカップの清酒がずらり。しかも、女性客2人組が扉を開け、勝手にカップ酒を物色しはじめたではないか!

「佐渡の地酒をはじめオール新潟県産のカップ酒を、常時23~25種用意しています。カップ酒は、お客さんがセルフで冷蔵庫から自由に選んで飲めるシステムなんです」と店長の白木実さん。どれを選んでも各550円。色とりどりのカップ酒から「あれもいいし、こっちもうまそ」なんて迷いながら選ぶのが楽しいのだ。

日本海の鮮魚の刺し盛りがほぼワンコインの衝撃

刺身お任せ弁慶盛り550円、玉子焼きのくん製418円、佐渡の地酒・金鶴550円

さて、開宴の狼煙はどの酒で上げようか。迷った末に、暖簾の「佐渡の」という文字を思い出し、佐渡島の地酒・金鶴をチョイス。つまみは刺身お任せ弁慶盛りを。この日は身の弾力が心地よいコチ、すーっと旨みの余韻を残して口で溶けるブリなど4種のうち3種が佐渡産。本マグロまでついて550円は安すぎでしょ!

「ウチの母体は、佐渡島の元鮮魚店が平成元年に島内でオープンした『廻天寿司 弁慶』なんです。そのぶん、佐渡や新潟県の各港から魚介を安く仕入れられるんですよ」

話を聞きつつ、カップ酒をグビリ。最初は米の旨味がほのかに広がり、すっきりとした後味の金鶴は、脂ののったブリやアジと抜群に合う。

立ち飲みで職人の握りを味わえる幸せ

くじらの味噌漬け385円、太い根もずくと細い花もずくを味わえる佐渡産もずく食べ比べセット715円、北雪大吟醸YK35は130ml 1430円

第二ラウンドは新潟の郷土料理・くじらの味噌漬けで一杯。皮目の脂の部分を味噌に漬け込んであり、濃厚な味は淡麗な新潟の地酒をやりながらちびちびつまむのにちょうどいい。返す刀で頼んだ佐渡産もずく食べ比べセットは、極太の根もずくがコリコリトゥルトゥルという愉悦の食感をもたらす。「根もずくは、佐渡のミネラル分豊富な海域で育つからそこまで太くなる。うちで出している石もずくの十分の一程度しか獲れない、貴重なもずくなんです」

品書きに目をやると、カップ酒だけでなく瓶のお酒も豊富にある。貴重な根もずくに敬意を表し、佐渡の北雪大吟醸YK35を注文することに。酒米の山田錦を35%まで磨き込んだ大吟醸酒は、華やかな吟醸香と軽快な喉ごしにうっとり。世界的に人気が高いのも納得だ。

握り姿が凛々しい店長の白木さん。「春はカワハギやアジも旨いですよ」
握り5貫セット990円。この日は手前から本マグロ中トロ、ノドグロ、ブリ、南蛮海老、活ヒラメ。佐渡の地酒・真稜550円。

シメはもちろん握りを。一貫99円から味わえるが、せっかくなので握り5貫セットを注文する。目の前で職人が握り、ポンポンとテンポよくカウンターに置いてくれるスタイルは、本格的な寿司屋さながら。この日はうまみの濃いノドグロ、甘くとろける南蛮海老、活きジメヒラメなどが並び、新鮮な佐渡のネタの握りに恍惚。もはや、自分が立ち飲み屋にいることを忘れてしまう。

「自分で冷蔵庫のカップ酒を選び、すぐ目の前で職人が握った寿司と一緒に味わう。そんなLIVE感を満喫してくれたら嬉しいですね」

『寿司バル弁慶 神田店』店舗詳細

住所:東京都千代田区内神田3-8-10 本郷ビル1F/営業時間:11:00~14:00・17:00~22:00/アクセス:JR・地下鉄神田駅から徒歩3分

取材・文・撮影=鈴木健太