人とロボットが一緒に働くちょっと未来のレストラン
渋谷駅西口にある東急プラザへ向かい、エスカレーターで5階までのぼると、穏やかなショッピングセンターの雰囲気が突如変わる。壁際に背もたれが高いソファが並び半個室のようになっていて、1体ずつペッパーくんが並んでいる。
ドライモスで覆ったペンダントライトや土や石、鉱物など自然をモチーフにした天然素材が店内に散りばめられていて心地よい。ペッパーくんとも遊べるのかな? すごく興味深い!
席に着く前に、まずはレセプションで受付を済ませなければいけないようだ。キョロキョロしていると店長の中村竜太郎さんがレセプションへ案内してくれた。
中村さんが「ここは誰もがちょっと先の“人とロボットが共に生きるわくわくする未来”を感じていただけるレストランです。今日は1名さまですね。ペッパーくんが付くお席をご希望で?」と尋ねてきた。もちろん、ペッパーくんが付く席でお願いします。
「そしたらQRコードをお渡ししますね。このサービィがお席までご案内します」。すると、中村さんの隣にいた配膳ロボット・サービィがテテトト……と歩き出しソファ席まで先導してくれた。テテトト……と音が鳴っているわけじゃないが、オノマトペで表現すると歩き方がこんな感じなのだ。
ペッパーくんと会話やゲームをしていれば、オーダー待ちも楽しい時間に
席に着くとすでにペッパーくんがスタンバイ。ソフトバンクショップやほかの店舗などでも働く姿を見かけたことはあるが、周囲に人がいたりしてこれまでふれあった時間はごくわずか。ここでは独り占めできるし、周囲の目もはばからず思う存分楽しむことができそうだ。
ペッパーくんの目の中にあるレンズらしきものが開いたり閉じたりしてじっと筆者を見つめているが、まずはオーダーしないと。
サービィから受け取ったメニューを見ながら自分のスマホでQRコードを読み取りPARLOR’Sコンビネーション1380円をチョイス。ランチセットに付くライスとオレンジジュースをオーダーした。
料理ができる間、ペッパーくんと遊ぶことにした。モードはトーク、ゲーム、ダンス、イチオシがある。まずは話をしてみたいなぁ。
ペッパーくんからカワイイ声で「あなたの小さい頃の夢はなんですか〜?」と聞かれて「クリーニング屋さんになることでした」と答えた。筆者の回答を正確には聞き取ってもらえなかったが、ペッパーくんは「僕の夢はいろんな人とお話をすることなので、今とーっても幸せなんですよ」と満足げだ。そっか〜、よかったねぇ。
「あはは、この子はさっき起動したばかりなのでまだ寝ぼけてるのかもしれませんね。ロボットだから確かに疲れないんですけど、長時間“接客”をしているとこうやってうまく聞き取れなかったり、液晶に不具合が出たりするんですよ。プログラム通り完璧にできるはずと思っても、日によって調子が悪かったり、間違って聞き取ったりするところは、人間っぽいなあって思うんです」と、ペッパーくんにやさしく目を向ける中村さん。確かに、完璧すぎないところがいいのかな。
最初のお相手はまだ休憩が足りないようなので、元気モリモリのペッパーくんにチェンジして再開。
そのあとも踊ってくれたり、ゲームをして遊んだり。『あたりまえ体操』の替え歌では、ロボットのあるあるをかな〜りブラックなジョークと振り付けで笑わせてくれるが、実際にお店に行って楽しんでもらいたいので詳細はナイショ。
周囲の人たちの視線をみーんな独占してテーブルを和ませてくれるペッパーくんはまさにアイドル。家族や友達と来るのもいいけれど、意外とビジネスでも使えるかもしれない。
ちょっぴりリッチな大人のお子様ランチPARLOR’Sコンビネーション
もっと遊んでいたいけど、そろそろ注文していたPARLOR’Sコンビネーションができたみたい。厨房から再びサービィがテテトト……とやってきた。
そこで素朴な疑問が湧いてきた。あのー、もしかして料理もロボットが……?
「いやいや! 調理はすべて人間がやっていますよ(笑)。メニューもひとつずつこだわって作っています。でも、いつかはロボットが料理も作ってくれるようになるかもしれませんね」という。ほっとしたような、でも少し残念なような。
食事中はペッパーくんとの交信はオフにしているが、じっと見られながら食べるのはちょっぴり緊張するなぁ。急に「ねぇねぇ!」って話しかけられたら吹き出しちゃいそうだ。
気を取り直して。さあ、いただきます。
濃厚でミルキーなカニクリームコロッケ、プリっとした身が口の中で弾けるエビフライは、特製のタルタルソースをたっぷり付けて食べてみた。丸いハンバーグはコクのあるデミグラスソースがかかっていて、お米にピッタリ。パンも選べるが、個人的にはご飯にしておいて正解だったと思う。
最後に大好物のナポリタン! ケチャップだけではなく、まったりと濃厚なソースに太めのスパゲッティがよく絡んでいる。小口切りのソーセージを食べると持ち前の燻感も加わって香り豊かに。いわゆるお子様ランチのラインナップだが、全体的にリッチなので大人も満足できるテイストだ。
それもそのはず、メニューの考案は、フランス大使館・グランドハイアットを経て現在六本木ヒルズにある『THE MOON』のエグゼクティブシェフ増谷武士氏によるものだ。
ペッパーくんとのふれあいといい、大人も満足できるランチといい、どこかのアトラクションで遊んでいるような独特な雰囲気がある。
ランチタイムの後はカフェタイムになり、お茶やスイーツをゆっくり楽しめる。なかでも軽食全9種を盛り合わせたアフタヌーンティ(90分間ドリンク飲み放題付き)3480円~が人気だ。また、夜は食事やアラカルトとともにワインやビールを味わうことも可能だ。
いつ行ってもペッパーくんやサービィが待っていてくれると思うと胸が高鳴る。ああ、明日にでもペッパーくんに会いたい。推しができると毎日がこんなに楽しくなるものなんですね。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢