入り口近くの平台には野村日魚子の歌集や河出書房の新雑誌『スピン』など、旬の良本ぞろい。
入り口近くの平台には野村日魚子の歌集や河出書房の新雑誌『スピン』など、旬の良本ぞろい。

大人も子供も、“気軽にどうぞ”な新刊書店

開業は、ある独立系書店との出会いがきっかけだ。数年前、出産を経て本に触れる時間が激減してしまった長島さん。「子育て中はたまに大型書店に足を運んでも、何が話題なのか、読みたい本がなんなのかわからなくなってしまって」。

そんな折、たまたま家族で訪れた日暮里『パン屋の本屋』に感銘を受け、自宅近くで開業を決意。「小さな規模で、セレクトされた絵本も文芸書もあるお店なら、子供と一緒に楽しめるんだと知りました」。店名には、「気軽な存在感」と長島さんが思うポテトチップの名を冠した。大人も子供も気軽に楽しめるよう、絵本や図鑑も幅広く取りそろえる。

長島さんお気に入り、動物関連の本が並んだ棚。「何時間でも見ていられます」。
長島さんお気に入り、動物関連の本が並んだ棚。「何時間でも見ていられます」。
店内中央のベンチは、大人も子供ものんびりできる長島さんこだわりのスペースに。
店内中央のベンチは、大人も子供ものんびりできる長島さんこだわりのスペースに。

立石といえば「飲んべえの聖地」でおなじみ。再開発の動きもあり、駅前の風景はますます変容していく一方ではあるものの、新刊書店という新しい風には地元の人も興味津々。もとより書店の少ない地域ということもあり、開店を知った地元客がひとり、またひとりと足を運んでくる。

今は自身の子供も成長し、一緒に本の話ができるようになったことがうれしいと語る長島さん。「ここで絵本を読んだ子供たちが、大きくなる過程で小説を手に取ってくれるような、読書体験を通して一緒に成長していけるお店になれたら」と店の展望を描く。10坪の空間に、まだ動き出したばかりの希望がゆるやかに充満する。

 

取材・文・撮影=吉岡百合子(編集部)

住所:東京都葛飾区立石7-3-5/営業時間:10:30~16:30(土は11:00~18:00)/定休日:日・月/アクセス:京成電鉄押上線京成立石駅北口から徒歩5分