たまにしか営業しない理由は、おもちゃ屋さんだから
『toddlepuft』は2018年5月1日にオープンした。営業しているのは土日祝日がメインだが、たまに平日にも開くし、土日祝日がお休みの日もある。
「他の仕事もしているので、その仕事が休みの日にカフェをオープンしている感じです」とお店を運営する中島さんは話す。
その仕事とは「通販がメインのおもちゃ屋さんです。この場所は、もともとおもちゃの倉庫として使われていました。神楽坂の場所を倉庫だけに使うのはもったいないから」。
おもちゃ屋さんといっても、子供向けの新品のおもちゃを売っているわけではなく、扱っているのはアメリカで買い付けてくるようなコレクターズアイテムがメイン。
それでは店内に並ぶものは売り物なのかというと、ガラスケースに入ったもの以外は中島さんの私的なコレクションだ。物心ついたころから人形などが好きで、おもちゃ屋さんになるのが幼稚園時代からの夢だった中島さん。18歳でヴィンテージのおもちゃに出会い、その後は有名なおもちゃ店さんで働きながらヴィンテージアイテムを集めてきた。そのころ通っていたヴィンテージのおもちゃ店でスタッフをしていた人物が、現在中島さんが勤める店のオーナーだ。
アイスクリームのビジュアル好きだから生まれたメニューたち
中島さんはカフェの責任者として、メニューを考案。しかし、ご本人は甘いものもコーヒーも苦手で、カフェに足を運ぶこともほとんどなかったというから驚く。そんな人がなぜカフェを? と尋ねると「アメリカンなアイスクリームの形が好きで、アイスクリームを出したいという気持ちがありました」。
アメリカンなアイスの形とは、アイスディッシャーの半球からアイスがムチムチはみ出して、しかもそれがダブルやトリプルに重なっているあの形状のこと。「アイスの形がおうちになっているアメリカのおもちゃと出会って、こんなかわいいおもちゃがあるのか! と思いました」とアイスクリームとおもちゃへの気持ちを話してくれた。
そんな理由で『トドルパフ』にはアイスを使ったメニューがいくつもある。自慢のメニューのひとつが、トドルパフフロート。やさしい紫色のドリンクに、ストロベリーアイスがドン。その上にクリームとチェリーがのっていて、かわいさこの上なし。
「かわいいだけでなく、せっかく出すならおいしく味わってもらいたいんです」と中島さん。ドリンクはブルーベリーで色を出し、ヨーグルトも合わせてさっぱりしながら甘酸っぱい。ストロベリーアイスも含めて、全体的に甘さがとっても控えめなのも好印象だ。
他にもクリームソーダやストロベリーシェイクなど、アイスを使ったドリンクは種類豊富。ソーダは透明感のあるピンクやブルーなど。他ではあまり見ない色合いだが、フラワーシロップで色を付けて、好みの色に仕上げた。
2カ月ごとにデザインが変わるカップケーキとアイシングクッキーも人気メニュー。1月と2月はバレンタインのデザイン、3、4月はイースターなど、季節感のあるかわいいカップケーキは、生地がふわふわ。こんもりクリームが絞られていて、チョコレートなどのキュートなアクセントが付いている。
食べてしまうのがもったいないほどかわいいが、スイートな見た目に反して、どれも甘さは控えめ。そのためフロートドリンクなどとカップケーキ、またはアイシングクッキーを一緒に食べても、重い感じはしない。
メインカラーはピンクとミントグリーン。ときどき不思議なアイテムあり
かわいいのはもちろんメニューだけではなく、店内のインテリアも。中島さんたちができる範囲で内装を手がけて、店内はピンクや淡いミントグリーンがメイン。昔アメリカの住宅などでよく使われた色で、同じ色がバービー人形のパッケージにもよく使われている。
客席ももちろんかわいい。ソファ席もあるが、よく見るとアイスをかたどったテーブルも置かれているし、シュガーポットや紙ナプキンが入った入れ物にもキュンとしてしまう。
カウンターの上には日本のキャラクターもいれば、ETの人形も。壁には漫画家高橋真琴さんのイラストや映画『ビッグアイズ』でも有名なキーンの絵も飾られていて、よく見るとさまざまな要素がミックスされているのも魅力のひとつだ。
かわいいだけじゃない雰囲気がたまらない『トドルパフ』。どんな人が訪れているのか聞いてみると、「推しのお人形や写真を持っていらっしゃって、写真を撮る方も多いですよ」とのこと。
アメリカンなおもちゃとアイスクリームへの愛がつくる神楽坂の異空間。かわいいや好きなものへの熱に引き寄せられて、好きなものにエネルギーを注ぐ人が多く訪れているようだ。
取材・撮影・文=野崎さおり