◆散歩コース◆

体力度:★☆☆
難易度:★☆☆

  • 登山シーズン 1月~6月、9月~12月
  • 最高地点 270m(富士見塚休憩所)
  • 登山開始地点 97m(秦野駅)
  • 歩行時間 3時間35分
  • 歩行距離 約13.0km
スタート
秦野駅
今泉湧水池に立ち寄り、白笹稲荷神社方面へ。坂を登り、渋沢丘陵の尾根に上がる。今日一番の急登。

震生湖
湖に沿った周遊路を歩き、再び尾根へと上がる。尾根沿いの道を進むと、徐々に山道らしくなってくる。

栃窪会館
頭高山方面へと進むが、頭高山には行かず、先を進む。しばらく常緑樹の道を進むと、開けた場所に出る。

畑の展望台
ベンチでお昼休憩。段々畑を見ながら、坂を下る。隧道が見え、しばらく進むと、窪地にある峠集落へ。

峠の集落
集落の中の車道を進み、分岐を右に行く。「松田 篠窪」の青い標識が目印。尾根沿いの小道を進む。

地福寺
坂を下ると、地福寺。こちらも二階堂氏が開基したお寺。ここからが篠窪集落となる。

富士見塚見晴休憩所
三嶋神社を過ぎ、坂を登り切ると富士見塚。矢倉沢往還の古道が終わると、新松田の町に到着する。

ゴール
新松田駅

アクセス:
[行き]新宿駅から小田急小田原線で秦野駅へ、約1時間10分。
[帰り]新松田駅から小田急小田原線で新宿駅へ、約1時間30分。

表丹沢の絶景と、集落と古道に思いを馳せ、矢倉沢往還を歩く

秦野駅から少し歩くと、住宅街の中に突然、今泉湧水池が現れる。丹沢山地の豊富で澄んだ水が湧き上がり、水面はキラキラと光っていた。「秦野の水は私たちの自慢ですから」と散歩中のおばあさん。

今泉湧水池は秦野盆地湧水群で最大の湧水量を誇る。春には桜の名所となる。
今泉湧水池は秦野盆地湧水群で最大の湧水量を誇る。春には桜の名所となる。

白笹稲荷神社へと続く道の途中に、「栗原精麥(せいばく)落花生」と書かれた、趣のある古い石蔵を見つけた。隣の木造の商店では採れたての野菜を販売していた。ずしんと重いキャベツが130円。これが下山道なら迷わず買っていたが、まだ登ってもいないので諦めた。だが、先行する登山者はこの重いキャベツを手に持って、丘陵へと登っていった。

道端には道祖神や庚申塔があり、歴史を感じさせる。白笹稲荷神社からは登りが急になり、だんだんと畑の中の道になってくる。一歩進むごとに丹沢の表尾根がよく見えてきた。畑と秦野市街の背景にどんと横たわる雄大な丹沢山地。目を凝らすと遠くに湘南の海が輝いていた。丘陵の尾根に向かうまでの道が、とくに美しい。何度も立ち止まってはたくさん写真を撮った。尾根まで登り切り、ここから丘さんぽが始まる。右手の景色に心を奪われながらも道を下り、震生湖に立ち寄ることにした。

丹沢表尾根を眺めつつ、丘さんぽ開始

尾根沿いの平坦な道はまっすぐ延びる。傍らでは地元の人々が畑仕事に勤しむ。
尾根沿いの平坦な道はまっすぐ延びる。傍らでは地元の人々が畑仕事に勤しむ。
渋沢丘陵の尾根に向かう坂道からは、キャベツ畑越しに、丹沢表尾根が一望できる。
渋沢丘陵の尾根に向かう坂道からは、キャベツ畑越しに、丹沢表尾根が一望できる。

震生湖は関東大震災で土地が陥没し生まれた湖。バス釣りに来た人たちが釣り台で待機していた。

再び尾根道に戻り、分岐の頭高山(ずっこうやま)方面を目指す。自然薯畑のあたりからは海がよく見え、伊豆大島まで望むことができた。

しばらく尾根道を歩くと、栃窪の集落に辿り着く。そこから木々が鬱蒼と茂る山道となる。道が二手に別れたら右手に進み、畑の展望台を目指す。

視界が開け、段々畑が見えてくる。畑の展望台のベンチに腰掛け、表丹沢を眺めながら、お弁当を食べてひと休み。里山の風景が美しい。

畑の展望台辺りは斜面を利用して、段々畑になっており、里山の美しい景色を眺められる。
畑の展望台辺りは斜面を利用して、段々畑になっており、里山の美しい景色を眺められる。

坂を下り、峠集落へ。車道脇に朽ちた土壁の蔵や竹林があり、郷愁に浸れる道だ。集落を通り抜け、次は篠窪集落へと向かう。

みかん畑を通り過ぎると篠窪集落。車が発達する前は街道沿いの集落として栄えていたが、今ではその面影はほとんどなくなってしまった。出会ったのは一人。ゆっくりと歩いてきたおばあさんが、ニコニコして挨拶を返してくれた。

了全山に登ると、集落を一望できる。かつては藁葺きの民家が並んでいた篠窪集落は昭和30年代が全盛期だった。
了全山に登ると、集落を一望できる。かつては藁葺きの民家が並んでいた篠窪集落は昭和30年代が全盛期だった。

集落の端に三嶋神社がある。車道を飲み込むほど大きく伸びた椎の木はものすごい存在感。境内は古代から続く森に囲まれており、かなり神聖な雰囲気だ。

しばらく古道を登ると、源頼朝も足を止めたという富士見塚に着いた。すっかり日が傾き、もやの向こうに富士山が大きく姿を現し、箱根連山や駿河湾も見える。

富士見塚から眺める富士山。展望台広場にはトイレとベンチがあり、ゆっくり休憩できる。
富士見塚から眺める富士山。展望台広場にはトイレとベンチがあり、ゆっくり休憩できる。

古道の雰囲気がある矢倉沢往還を下ると高速が見え、車通りの激しい大通りに出た。時を超えた山さんぽは終わり、一気に現実に戻された。

三嶋神社と椎の木森

急な階段を登り、境内へ。社殿の背後にも広大な常緑樹の森が続く。森を周遊できるコースもある。
急な階段を登り、境内へ。社殿の背後にも広大な常緑樹の森が続く。森を周遊できるコースもある。
御神木の椎の木。根元の空洞に祠が置かれている。
御神木の椎の木。根元の空洞に祠が置かれている。

この地を治めた二階堂氏が静岡県の三嶋大社から勧請したことが始まりとされ、神社の前には矢倉沢往還が通る。道路を覆うように樹齢500年の椎の木が立っているが、鉄柱に支えられなんとか持ちこたえている。境内は樹齢800年以上の大木が自然林をつくり、厳かな雰囲気。住民が保全を行い、環境が維持されている。

矢倉沢往還

富士見塚からは土道となり、往時の雰囲気が残っている

江戸から箱根へと抜ける脇街道として利用され、足柄峠付近にある矢倉沢の関所へと至る。古くは万葉集にも登場する古い道だが、江戸時代に東海道が整備されると、矢倉沢往還は庶民が使う物流の道として発展を遂げた。秦野から篠窪を抜ける道は、川を通らないため、主に雨天時に使われていたが、起伏が激しく大変だったという。

山歩きメモ

丘歩きのためアップダウンはないが、ゴールまで距離はある。基本的に車道を歩くコースとなる。途中の集落に売店などはないので、水分や携行食を持って行く。

アドバイス

秦野駅から出発し、新松田駅に到着するので、アクセスしやすい。渋沢丘陵に登るまでは住宅街の中を歩くから、地図を見て進む。下山して新松田駅までは大型トラックの通りが激しいので、注意して歩く。

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ 低山をきわめる!』より