子どもたちが「乗ってみたい!」と思うもの

すべり台が特殊な形状で制作される場合、子どもたちが「乗ってみたい!」という欲を掻き立てられるモチーフが選ばれることが多いのではないだろうか。そうなると、「乗り物」をモチーフとしたすべり台がまず思い浮かぶ。

新宿交通公園(葛飾区)に、消防車のすべり台があるという噂を聞いたので出かけてみた。パトカーや消防車、クレーン車などの「はたらくくるま」は多くの子どもたちが憧れるモチーフだろう。きっと多くの子どもたちが消防車から滑り降りているに違いない。私は胸を躍らせて出かけた。しかし実際に現地に赴いてみれば、消防車は残されていたものの、すべり台部分が無くなっている。

以前は左後部にすべり台が設置されていたようだ。現在も上に登ることはできる(新宿交通公園)。
以前は左後部にすべり台が設置されていたようだ。現在も上に登ることはできる(新宿交通公園)。

「公園遊具はあるうちに見に行け」という教訓を改めて胸に刻み、私は金町駅までの徒歩20分の道のりをトボトボと帰った。

海の乗り物はどうか。かつて付近一帯が海であったという本芝公園(港区)には、船のすべり台がある。

以前あった木製の大きな帆船は、船体の真ん中が真っ二つに割れているデザインだったのも良くなかったのだろうか。こちらはこぢんまりとまとまっている(本芝公園)。
以前あった木製の大きな帆船は、船体の真ん中が真っ二つに割れているデザインだったのも良くなかったのだろうか。こちらはこぢんまりとまとまっている(本芝公園)。

こちらも以前は木製の大型帆船のすべり台であったものが、老朽化のためか、小ぶりなFRP製の船に変わっていた。

続いては空の乗り物。成田空港にほど近い長原第一街区公園(成田市)には、飛行機のすべり台があった。

左側面から見ると普通の航空機に見える。機体記号(JA)からすると、日本の航空機という設定なのだろう(長原第一街区公園)。
左側面から見ると普通の航空機に見える。機体記号(JA)からすると、日本の航空機という設定なのだろう(長原第一街区公園)。

すべり台の位置的に緊急脱出用のシューターを連想しなくもないが、

右側面から見ると確かにすべり台である(長原第一街区公園)。
右側面から見ると確かにすべり台である(長原第一街区公園)。

飛行機の中をくぐってから滑り降りるのは子どもたちにとっては楽しいに違いない。

萩中公園(大田区)のすべり台はスペースシャトルである。

上昇するスペースシャトルの機首部分から滑り降りるという、凝ったデザイン(萩中公園)。
上昇するスペースシャトルの機首部分から滑り降りるという、凝ったデザイン(萩中公園)。

側面に描かれた宇宙飛行士や人工衛星が、宇宙への憧れの気持ちを掻き立ててくれる。

宇宙への憧れを感じさせる(萩中公園)。
宇宙への憧れを感じさせる(萩中公園)。

本当に乗りたかったのは「巨大ロボット」ではないか

ところで、子どもたちが乗ってみたいものは「乗り物」だけではない。昭和の時代からの子ども達の夢、それは「巨大ロボットに乗ってみたい」ということではなかったか。全国各地の公園にある巨大ロボットのすべり台が、その夢をかなえてくれる。

以前、奈良県・天理駅近くの公園で見かけたロボット。腕部分が両方すべり台になっており、背中から上るようになっている(田井庄池公園)。
以前、奈良県・天理駅近くの公園で見かけたロボット。腕部分が両方すべり台になっており、背中から上るようになっている(田井庄池公園)。
王子にあるロボット。こちらは右腕が階段、左腕がすべり台になっている。背後に階段を設置するスペースがないからか(王子六丁目児童遊園)。
王子にあるロボット。こちらは右腕が階段、左腕がすべり台になっている。背後に階段を設置するスペースがないからか(王子六丁目児童遊園)。

このロボット達は、表情や両腕をズーンと前に突き出した造形が共通していることから、恐らくは同じメーカーのすべり台なのだろう。しかし色や階段の位置など、細かい部分で違いがあり、それぞれに個性があって楽しい。いつか全国のロボットすべり台をコンプリートしてみたい。

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大人になると、公園ですべり台を滑り降りるという機会はほぼ無くなる。しかし、たまには童心に返って「あれに乗ってみたい!」というすべり台を滑ってみてもよいのでは……と思っていたところ、多くの公園遊具には年齢の上限があることを知った。いい大人である私は、ひっそりと面白いデザインのすべり台を眺めるだけに留めておこうと思う。

正面から見ると、優しく出迎えてくれているように見える(王子六丁目児童遊園)。
正面から見ると、優しく出迎えてくれているように見える(王子六丁目児童遊園)。

イラスト・文・写真=オギリマサホ