“新中野系武蔵家”の家系ラーメン店
週末の午後、昼食時間が過ぎたにもかかわらず店頭に行列を作る店舗がある。『武蔵家 池袋』はカウンター8席だけのこぢんまりとした店舗だが常に満席状態だ。
田上晃店長は「中野にある武蔵家からののれん分けの店舗です。僕は2022年6月から店長を任されるようになりましたが、それまでは同じ系列の川越店で修業してきました」と話す。
『武蔵家』は、中野に本店を構える首都圏で20店舗以上展開している家系ラーメン店で、のれん分けされた店舗も多く、“武蔵家(新中野系)”とか“新中野系武蔵家”などと、ファンの間ではいわれている。
「この店が面白いのは、家系の基本の味を守りながらも各店舗で微妙に味が違うことです。川越店にも足を運んでいたお客様は、こちらの味と食べ比べてあっさりしていると話していました。各店舗の采配に任されいることも多いので、やりがいがあります」と田上店長は話す。
スープの濃さや脂の量も選べ、味変アイテムで楽しむ1杯
店舗入り口にある写真付きメニューと券売機に目を配りながら、今日食べるメニューを決める。やはり初めては、デフォルトのラーメンで試してみることにする。
卓上には味変アイテムのおろしニンニクやショウガ、ゴマやコショウなどが並べられる。食べながら、自分好みの味にできるのは家系ラーメンの楽しみの一つだ。
麺は硬めから柔らかめ、味は濃いめから薄め、脂も多めから少なめのそれぞれ3段階で注文できるが、初めて味わうなら真ん中の普通で味わってみよう。
厨房には大きな寸胴が2つ並べられている。一つはメインのスープとなり、日々煮込んだスープに新しい豚骨を入れて、古い豚骨はサブスープの方へ移し替え、フレッシュ感を出している。
「生醤油を加えたかえしを使い、豚骨の塩味と醬油の旨みを活かしたインパクトが残る味を目指しています」と田上店長。
周りを見ていると、ほとんどの客がライスを頼んで、残りのスープをライスにかけて楽しんでいるじゃないか!ライスが無料というのもあるようだが、ライスを欲する濃度ということだ。気になる。早く食べたい!
食べやすく、やさしい風味の濃厚スープ
待つこと数分、ようやく目の前に丼が提供された。醬油がふわりと香り、空いたお腹を刺激してくる。早速味わってみると、思ったほど塩味を感じない。醬油のコクなのだろうか、後を引く奥深い味で、最後まで楽しみたいおいしさだ。
特注の中太ストレート麺は、濃厚スープに負けないインパクトで、口の中でスープと麺が混然となる。
低温調理でしっとりと、ジューシーな仕上がりの自家製チャーシューが旨みを主張しながらも、全体の味はまとまっている。
しょっぱ、辛めのライスで締めを
残ったスープは、無料ライスで最後まで楽しもう。おかわりが自由なのも大食漢にはうれしいポイントだ。
壺漬けや一味醬油、豆板醤など好みの薬味をご飯に盛ったら、最後にスープをかけて味わうのが武蔵家流。ラーメンの濃厚さに負けないパンチのある味で、一味醬油や豆板醤のピリリとした刺激が、味に変化をもたらしてくれる。
食べている間も客は入れ替わる。カウンターから「学生さん?玉子か海苔かほうれん草をサービスするよ」と気さくに声をかける。その気取らない接客も心地よく、人気があるのも納得だ。
味はもちろんのこと、従業員のサービスの良さもあり、また訪れたいと思った。
取材・文・撮影=千葉香苗、構成=アド・グリーン