代表格はタコのすべり台じゃないだろうか

調布駅前公園に設置されていたタコ。「タコ公園」として親しまれてきたが、駅前再開発により撤去されることに。
調布駅前公園に設置されていたタコ。「タコ公園」として親しまれてきたが、駅前再開発により撤去されることに。

「水の生き物のすべり台」と聞いてまず真っ先に思い浮かぶのは、タコではないだろうか。グネグネと複雑に入り組んだ足から滑り降りるタコすべり台は、子どもたちの人気も高く、現在では全国に設置されている。

その後、場所を移してタコが再建された。タコすべり台がいかに地域住民に愛されているかがわかる(調布市・鉄道敷地公園 《仮称》)。
その後、場所を移してタコが再建された。タコすべり台がいかに地域住民に愛されているかがわかる(調布市・鉄道敷地公園 《仮称》)。

中でも初めてタコすべり台が設置されたという足立区には11基が集中し(※注1)、区のホームページでも所在地や特徴が紹介されているほどである(※注2)。

タコすべり台の聖地・足立区のタコ。潜水艦をモチーフにしたカラフルな塗装(足立区・千住ほんちょう公園)。
タコすべり台の聖地・足立区のタコ。潜水艦をモチーフにしたカラフルな塗装(足立区・千住ほんちょう公園)。
鉢巻姿で気合の入ったタコ(足立区・千住東町公園)。
鉢巻姿で気合の入ったタコ(足立区・千住東町公園)。

それぞれに個性豊かな塗装がなされているので、タコすべり台好きはぜひ足立区に巡礼に訪れて欲しい。

他の地域のタコに比べると小ぶりで、頭が大きいスタイルの恵比寿のタコ(渋谷区・恵比寿東公園)。
他の地域のタコに比べると小ぶりで、頭が大きいスタイルの恵比寿のタコ(渋谷区・恵比寿東公園)。

また各地には一般的なタコすべり台の造形とは多少異なるデザインのものもあり、その違いを楽しむのもよいだろう。

タコ以外の水の生き物はどうだろうか

波に乗るクジラのデザイン(台東区・隅田公園)。
波に乗るクジラのデザイン(台東区・隅田公園)。

ところで、タコ以外の水の生き物はどうか。その大きさから、クジラがモチーフとして選ばれることも多い。

滑り降りる部分も広く取られている。
滑り降りる部分も広く取られている。

浅草・隅田公園のクジラすべり台は、頭の方から登って尾の方に滑り降りる形になっており、大きなクジラと遊んでいるような気持ちになれる。

一方で普通の魚がすべり台になっている場合には、尾の方から登って口から滑り降りる形状が多いようで、大きさの違いから来るものなのか、あるいは別の理由なのか、興味深い。

通称「きんぎょ公園」にあるすべり台。口から滑り降りる形のため、顎が出ているように見える(三鷹市・新川児童公園)。
通称「きんぎょ公園」にあるすべり台。口から滑り降りる形のため、顎が出ているように見える(三鷹市・新川児童公園)。
今は撤去されてしまったが、大手町の再開発地区に設置されていた錦鯉のすべり台。これは胴体から滑り降りるタイプ。私は撮りそこなってしまったため、こちらは友人Mさんが撮影した写真である(千代田区・TOKYO TORCH)。
今は撤去されてしまったが、大手町の再開発地区に設置されていた錦鯉のすべり台。これは胴体から滑り降りるタイプ。私は撮りそこなってしまったため、こちらは友人Mさんが撮影した写真である(千代田区・TOKYO TORCH)。

水の生き物はそもそも、その造形が複雑にできているものが多いように思う。それをすべり台にする場合、どこから登ってどこに滑り降りるようにするかというのは、制作者の腕の見せどころなのかも知れない。

公園の真ん中にいる巨大なカメ(足立区・東保木間公園)。
公園の真ん中にいる巨大なカメ(足立区・東保木間公園)。

東保木間公園にある巨大カメのすべり台は、そもそも登るための階段やはしごなどが見当たらず、

小さい子は登るのが難しそう。
小さい子は登るのが難しそう。

甲羅の頂上に登るには鎖を使ってよじ登らなければならないという上級者向けの造りである。

一方豊洲の巨大カニすべり台は、カニの顔やハサミの部分から登り、甲羅部分から滑り降りる形になっていてわかりやすい。

こちらは小さい子でも登れそうなカニすべり台(江東区・豊洲五丁目公園)。
こちらは小さい子でも登れそうなカニすべり台(江東区・豊洲五丁目公園)。
よく考えられたデザインである。
よく考えられたデザインである。

その中でも、もともとのモチーフと、すべり台としての造形がうまく合致していると感心したすべり台を宇都宮で発見した。サザエである。

巻貝の構造を生かしたらせん状すべり台。大人は幅的に無理そうである(宇都宮市・桜美公園)。
巻貝の構造を生かしたらせん状すべり台。大人は幅的に無理そうである(宇都宮市・桜美公園)。

背後にあるはしごから登り、巻貝の中をらせん状に滑り降りる形で、さざえ堂を連想させる。いい大人である私は、中で詰まってしまうことを恐れて実際に滑り降りることはできなかったが、子どもであればさぞ楽しいに違いない。

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ここまで、生き物がモチーフとなったすべり台を見てきた。ところが、すべり台のモチーフとなるのは何も生き物とは限らないのである。生き物以外にすべり台モチーフとして用いられるものとは何か……?来年もまたすべり台探索の旅は続く。

※注1=出典:「読売新聞」2022年5月2日( https://www.yomiuri.co.jp/national/20220501-OYT1T50206/ )
※注2=出典:足立区ホームページ( https://www.city.adachi.tokyo.jp/koen/takosan.html )

 

イラスト・文・写真=オギリマサホ