【製麺所その1】タチバナ製麵所[上野]
立ち上る蒸気より出づる褐色の蒸し麺
1952年創業の製麺所の自慢は、二度蒸し焼きそばだ。蒸籠で長時間蒸し、その後冷水でザブザブ洗う。この工程を二度繰り返し、冷蔵庫で寝かせれば、水分をたっぷり含んだプリプリ焼きそば麺の出来上がり。「女性の髪を洗う感覚で、丁寧にやさしく麺をほぐしています」と、元美容師の代表・嶺村武さんは笑う。袋を開けた瞬間にほぐれる使い勝手のよさが卸先から重宝され、特に三社祭の時期には注文が殺到。家庭で使えば、出店の味に近づけるかも。
『タチバナ製麵所』詳細
JR・地下鉄上野駅から徒歩7分。7:00~18:00、日休。
東京都台東区東上野5-21-9
☎03-3841-0471
【製麺所その2】丸八製麺所[三鷹]
絶品油そばとモチモチパスタはリピ確定
武蔵野・府中・多摩近郊を中心に100軒以上の店舗に卸す、創業65年(2022年時点)の老舗。「麺は大量に作ると、熱がこもらずしなやかに仕上がるんです」とは、代表の大島正靖さん。小売りの人気は有名専門店に卸している油そばだ。モチモチつるりの食感と自家製タレの後引く味わいに、ハマる。また、「新しいこともしたくて」と、数年前から始めたのが、生パスタ。どっしりコシある麺は、食べ応え抜群! いつしか人気を呼び、近隣の居酒屋からも注文されるように。
『丸八製麺所』詳細
JR中央線三鷹駅から徒歩10分。5:30~15:00、日休。
武蔵野市吉祥寺北町4-13-1
☎0422-52-0808
【製麺所その3】大久保製麵所[西馬込]
オリジナルのシャンコ麺を見逃すな!
「これ見て。看板のシャンコ麺を作るためだけに入れたの」。
特注の製麺機を誇らしげに見せるのは店主の大久保二郎さん。通常の麺は麺切りで完結するが、切り出したちぢれ麺をさらに三度プレスしたものがシャンコ麺。シコシコの強いコシを生み、より複雑に縮れて、スープがよく絡むようになる。他にも味噌に合う“ストレート”や冷やし麺にも合う“チヂレ”、醤油に合う“サッポロ”など、さまざまなスープに合う麺を揃える。また、銀座の有名中華料理店に卸す餃子の皮も隠れた人気商品だ。
『大久保製麵所』詳細
地下鉄都営浅草線西馬込駅から徒歩5分。9:00~17:00、日休。
東京都大田区南馬込5-26-10
☎03-3776-4133
【製麺所その4】麺の大石[中野新橋]
うどんの品揃えが圧巻!商店街の麺総合商社
大正8年(1919)創業の製麺所は、卸なし。店頭販売のみの完全地元密着スタイルだ。「子供の頃から、親父に製麺を教え込まれて」とは、代表の大石一朗さん。蓄えた豊富な知識と一点の曇りなき手際の良さで、日々多種多様な麺を作る。中華麺や日本そば、焼きそばなど、なんでもござれ。特に、せいろめん、生うどん、生ひやむぎといった、うどんのバリエーションは圧巻のひと言。つゆ、スープの品揃えも多く、毎日違う味わいを楽しめるのもうれしい。
『麺の大石』詳細
地下鉄東京メトロ丸ノ内線中野新橋駅から徒歩10分。10:00~19:00、水休。
東京都中野区弥生町3-24-15
☎03-3372-0451
『麺の大石』で、製麺行程を見せてもらいました!
1.生地こね
小麦粉とかん水を加えてよく混ぜる。
2.プレス(1回目)
こねた生地を余さずプレスのローラーへ。
↓
生地がプレスされ“麺帯”が出来上がる。
3.プレス(2、3回目)
二つの麺帯を合わせてプレス。コシを出す。
4.麺切
麺の太さに合わせた切り刃をセット!
↓
切り出した麺を箱に詰め、冷蔵で寝かせる。
↓
完成!
取材・文=高橋健太(teamまめ) 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2022年12月号より