品川の路地裏で発見! ひとり焼肉もできる隠れ家的な焼肉屋
JR品川駅を港南口(東口)方面に向かい広場に出ると、飲食店の看板がズラ~リ。そのなかで、ちょっと気になったのが「路地奥右折」と書かれている『焼肉居酒屋 とんとん』の看板。赤い矢印がなにやら怪しげ(?)な細い道を指し示している。
路地裏に入ってすぐの角に『焼肉居酒屋 とんとん』を発見。店から出てくる客の姿からして、どうやらここはビジネスパーソン御用達のランチ処らしい。
店頭に掲げられたメニューを見ると、焼肉ランチセットはなんと850円から、お肉増量セットはプラス100~200円程度なので、1000円前後で焼肉ランチを楽しめる。
人気の定番ランチにラインナップされているのは、ハラミ、厚切りカルビ、もつ焼きの各種セット。厚切りカルビセットは大盛り170gで1250円と超お値打ち! 数量限定の黒毛和牛カルビセット1280円も捨てがたいが、筆者はハラミに目がないので厚切り上ハラミも気になるところ。
どれにしようか選びきれなかったので、店長の藤江雅典さんにおすすめを聞いてみた。「3種類のホルモンを召し上がっていただけるもつ焼きセットと、厚切り上ハラミセットは食べごたえがありますよ」とのことだったので、まさかの2人前、贅沢にいただいちゃいます!
肉の卸問屋ならではの品質&鮮度の良さと抜群のコスパ!
まずは、もつ焼きセットを塩味で注文。ランチタイムは基本タレ味で出てくるので、塩味がお好みの方は注文時に店員さんにお願いしよう。
平皿にたっぷり盛られたホルモンは、牛の小腸・マルチョウ、豚の頭部・かしら、首から肩にかけての部位・トントロの3種。それぞれボリューミーで、見るからに新鮮そのもの。
脂が溶けだしてうるうるしたマルチョウを口に運ぶと、プルップル。脂の旨みがじわじわと口の中に広がっていく。じっくり焼いて少しこんがりさせると香ばしくて一層美味。かしらは赤身のお肉感を堪能できて、歯ごたえのあるトントロもいいお味。続けて厚切りハラミもいっちゃいます!
ハラミは特製のもみダレに漬けてもみ込むそうで、お肉の旨みをぐんっと引き出している。口の中がおいしいお肉で満たされて、し・あ・わ・せ♪
「うちの店の母体は、1957年創業の肉の卸問屋なんです。東京都中央卸売市場食肉市場が近隣にあるので、鮮度のいいお肉をお客さまにご提供できるのが強みですね。ランチは特にボリューム感を出しています」と藤江さん。なるほど、とびきり新鮮でボリューム満点なわけだ。
ランチセットには、小鉢、サラダ、ご飯、味噌汁がつく。ご飯はおかわり自由なので、焼肉×白飯、禁断の焼肉のタレ×白飯で何杯もいってしまいそうになるのだが、待て待て、この店にはとっておきのご飯のお供があるではないか!
裏ワザを使ってご飯にハヤシソースをかけて食す!
それがコチラのハヤシソース。焼肉ランチセットを頼んだ客にも店自慢のハヤシライスを食べてもらいたいと、通常メニューのハーフサイズでルーだけ注文できるようにしたという。
デミグラスソースとトマトソースに牛肉をたっぷり入れて煮込んだもので、トマトの酸味と甘さが絶妙。焼肉を食べた後、デザート代わりに(!?)洋食を楽しむといった感覚でなんだかおもしろい。しかも、そのおいしさはまさに別腹ものなのだ。
こうしてお肉をおいしく楽しく食べてもらえるように工夫している『焼肉居酒屋 とんとん』。1990年にオープンして以来、焼肉をつまみに飲める居酒屋として多くのビジネスパーソンに愛されてきた。食肉市場があるこの地には焼肉屋のライバル店が多いはずだが、そのなかで今や老舗のひとつとなった。
『とんとん』以前にも焼肉店の経験がある藤江さんは、「味・品質・価格・サービス、何事もバランスが大事なんです」という独自の考えをもっている。
「高級な一流店から安価なチェーン店まで焼肉屋にもさまざまありますが、高ければおいしいのはあたり前で、安ければそれなりの味というのは違うと思うんですよ。例えばA5ランクの牛肉ならどれもおいしいというわけではなく、サシ(脂肪の筋)の入り方ひとつでお肉のおいしさは変わってきます。これもバランスですね」。
「私たちはおいしいお肉を仕入れてなるべくお得に召し上がっていただけるように、品質と価格のバランスを意識しています。お客さまに『これはお値打ちだ!』と喜んでいただけるように努力しているので、多くの方にそう思っていただけたら何よりです」。
藤江さんがおっしゃるように、この店にはまさに「このお味をこのお値段で、しかもこんなんにたくさん!」といった驚きと喜びがある。そして、お肉のおいしさや安さだけでなく、そのサービス精神にも魅力が感じられるのだ。
帰り際に店の看板をふり返ると、店名の当て字だろうか、「惇団」(とんとん)という文字が目についた。ちなみに「団」は「円満」を意味する漢字で、「円満」とは“調和”がとれていて穏やかなこと。“バランス”を重んじる藤江さんの言葉に通ずるものがあるなあと、しみじみ思った。
ゆったりした空間で気兼ねなく、ひとり焼肉も楽しめる『焼肉居酒屋 とんとん』。「近所にあるおいしい焼肉屋さん」のように、この先、筆者にとって親しみある店になるだろう。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=コバヤシヒロミ