国産大豆ミヤギシロメ100%使用。良質なタンパク質が豊富な豆腐の専門店
2021年11月にオープンした『豆富食堂』。豆腐の直売カウンターの横には食堂の入り口があり、併設する豆腐工房を横目に通り過ぎると、ナチュラルな木を基調にした客席が広がっている。代表取締役の尾山淳さんが迎えてくださった。
「五反田の鳥料理店『それがし』のほか、都内で小さな飲食店をいくつか経営してきました。コロナを経て、新しい店を作るなら今までとは違うモデルで、絶対になくならないものにしようと。食のインフラを考えた時、候補にあがったのは米と豆腐でした。なおかつ、長く食べ続けられるものは? と問うと糖質よりタンパク質だと」。
「私はランニングを習慣にしているんですが、トレーニングを効率よくするには良質なタンパク質が必要なんですよ。でも、プロテインや鶏肉ばかりじゃ味気ないですしね。その点、豆腐は日本だけじゃなくてアジアでもポピュラーな食材ですから、味のバリエーションも豊富で、温かくても冷たくてもオールシーズンで食べられる。何より私自身が大豆や豆腐が大好きで」と尾山さんは微笑む。
また、宮城で3代続く豆腐職人と出会えたことも大きかったそうだ。2名のスタッフがしっかり修業しイチから豆腐作りを学んできた。そして構想から1年半、『豆富食堂』がオープンした。
9種類の素材が入った豆腐汁を軸に、あの手この手で豆腐づくしの豆富御膳
ランチは和風のテイストで揃えた豆富御膳を筆頭に全4種。世界を旅した尾山さんは、海外の豆腐文化やおいしさをこの店で伝えたいと語る。「中国で食べた豆腐スープがおいしくて。鶏でしっかりスープを取って鶏白湯にしました。辛みを利かせたバージョンは韓国のスンドゥブみたいでうまいですよ!」
取材に訪れたのは、しとしとと秋雨が降る肌寒い日。豆腐白湯にも惹かれたが、温かいスープがあり、なおかついろいろな豆腐料理が味わえる豆腐御膳1430円をオーダーした。
トレーいっぱいに乗ったおかずを見て胸が踊る。そうそう、身近すぎて忘れてたけど豆腐って煮ても焼いても揚げても、もちろん生でも超優秀なグルメだったんだ。まずはアツアツの豆腐スープから。順番にひとつずつ味わっていこう。
一心不乱にモグモグ食べていると、尾山さんが静かにこう語った。
「豆腐のおいしさや多彩さを感じていただけましたか?(笑)食堂を併設したのは、こうして豆腐の楽しみ方を伝えたいと思ったからです。作りたての豆腐を冷奴で食べるのもおいしいけど、もっと自由に食べられることをみなさんにアプローチしたかったんです」。
夜は酒場になり、ワインを楽しめる料理を提供する。「ワインに合うよう、スパイスを使った料理を提供しているんですよ」とメニューを見せてくれた。
淡白でヘルシーだけど、アイデア次第でいろんな形に変えられる豆腐。それもこれも、工房のおいしい手作り豆腐があればこそ、なのだ。
作りたて豆腐からデザートまで揃うテイクアウトメニューが充実。
『豆富食堂』の料理は親しみやすいメニューが多いから、帰りに豆腐を買って自宅でも作ってみようかな、そんな気になってくる。店頭の売店では、できたての豆腐はもちろん、加工した油揚げや厚揚げ、いなり寿司やパンナコッタなどのデザートまで揃う。
どれも良質なタンパク質が含まれたヘルシーなものと思うと罪悪感なく食べられるし、そのままでも冷蔵庫にあるものでちゃちゃっと料理できるのもいい。
尾山さんは「豆腐は朝から晩まで抵抗なく食べられますからね。近所の方がよく買いに来てくださいますよ。店頭にはテーブルやベンチがあるので、散歩のついでにとうふアイスを食べて帰られたりね」と店頭の売店について話す。
『豆富食堂』に来て、豆腐で四季折々の楽しみ方ができることを再発見してしまった。帰りの道すがら満腹のお腹をさすりながら、明日はどんな豆腐料理にしようか? と考えてしばし幸せ気分に浸る。しばらくは豆腐料理にハマってしまいそうだ。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢