オダウエダ ……小田結希(トップ写真左) 植田紫帆(トップ写真右)
1995年生まれ愛媛出身のオダと1991年生まれ大阪出身のウエダ(共にNSC大阪36期)が2014年に結成。寺に入れられるほどヤンチャだったオダと小学校からカトリック系の女子校に通っていたウエダによるコンビ。2021年に「THE W」で優勝。
今回訪れたのは……『神保町よしもと漫才劇場』[ 神保町 ]
「神保町花月」をリニューアルする形で2020年にオープン。芸歴9年目以下の若手約60組が所属芸人として活動中。周辺には書店はもちろん、カレー屋、洋食屋、ラーメン屋、喫茶店など街歩きに欠かせないグルメも充実。最先端の笑いを楽しむならここ。
その芸人が一番したいことを笑ってくれる、コアな劇場
――こうやって、客席からステージを見ることもありますか?
ウエダ あります。コント師はネタ前にリハーサルがあるので、客席に座って自分のリハの順番来るのを待ってるんですよ。バチョフっていう芸人がいるんですけど、ほんまにリハーサル時間が長くて、ここでいつも「バチョフまだ終わらん」って言ってます(笑)。
オダ 単独ライブか! ってくらい延々リハやる(笑)。
――芸人同士でそう切磋琢磨(せっさたくま)している。
ウエダ ここでみんな、日々賞レースなどのネタを仕上げてますね。他の劇場と違って週に何回も出られるので、ブラッシュアップできる。微妙にボケ変えたり、微調整ができる場所です。
オダ 劇場ができたばかりの頃は芸人同士の関係性も薄かったんですけど、ニューヨークさんとかいろんな先輩が神保町劇場に注目してくれて「この期は問題あるぞ」とか「ここは仲悪いぞ」とか面白がってくれて。神保町の芸人の関係性は先輩方のおかげででき上がったと思う。
ウエダ 我々若手からするとニューヨークさんは、さんまさんみたいな感覚です。前いきなり出されて「おいお前最近どうやねん」てぐわーって戦わさせられて。
オダ もみくちゃにするだけして、その後ほんまに手ぇつけへんとか(笑)。
ウエダ まあでも神保町は、おかしなことをやっている芸人が多いのも事実で。言い換えれば最先端の劇場なのかもしれない。先ほどのバチョフを始め……。
オダ 例えばイエローっていう芸人がいるんですけど、無限大やルミネ、大阪漫劇の先輩たちまで「イエローってのがいるらしいぞ」と名が知られている。
ウエダ 黄色の“YELLOW”のお尻に、wが2つつく表記で。ネットスラングの「笑」みたいな。
――YELLOWwwさん、覚えました!
ウエダ 板橋ハウスとか、ネットで活躍している芸人が出ているのも神保町なんで。情報の最先端のものが集まる劇場でもありますね。
――どういうお客さんが多いですか?
ウエダ 演者が20代とか30代が中心なので、その辺りの層の人が多いですね。女子高生ばっかり、とかでもない。
オダ ライブによって男の人半分、女の人半分っていう時もあるし。夏はご家族連れも多かった。
ウエダ やっぱりメインは、各芸人たちのファンですね。すごくコアな、その芸人が一番したいことを笑ってくれる劇場です。「おもろいもん見たい」という欲望でギラついた、飢えた獣のようなお客さんが多いかもしれない。
オダ そして「THE W」で優勝した時に、一番温かく迎えて下さった劇場でもある。「おかえり〜」って感じで。うれしかった。
ウエダ 優勝して初めて神保町に出させてもらった時に、演者がお客さんに「手拍子で迎えてあげましょう」って呼びかけてくれて。でも私たちの出囃子は『シン・ゴジラ』の挿入曲の激しいやつなので、お客さんどこで手拍子したらいいかわからんという(笑)。
オダ バラバラやったな(笑)。
ウエダ でもほんと、お客さんが熱心な分、本当に手ぇ抜いてたらしっかりわかりますし。「今日は土日の寄席やから、いつものネタやろか」ってすると「あ〜新ネタ見せてくれへんのか」ていう、他の劇場よりシビアな面もありますね。
神保町芸人はタマネギ臭い⁉
――神保町でライブがある時に、必ず立ち寄る場所はありますか?
ウエダ 東京来てから油そばにめっちゃハマって。銀座でバイトしてたんですけど、『東京油組』の銀座店に狂ったように毎日通ってました。それぐらい好きな油組、劇場の近くにできたんですよ! それはもう狂ったように行くしかないと。
オダ ウエダめっちゃ偏食なんで、一回ハマったら毎日食べちゃう。
ウエダ でも近くにできて気づいたんですけど、油そばって食べたら体が重たくなるんです。食べた後ライブ出たら全然おもしろくなくなっちゃう(笑)。
オダ あと、油組はタマネギを好きなだけトッピングさせてくれるからついつい入れすぎちゃって、ネタするときにめちゃめちゃ口臭いんですよ(笑)。
ウエダ あとは近所のファミマですね。ファミマに行くと、後輩いっぱい連れた先輩が「おう〜なんでもいいから買いぃ〜」ってすっごい大盤振る舞いしてるのが見られますが、よくよく見ると、やっすいペットボトルをおごってるだけだったりします。
オダ ライブの後によく行くのは、やっぱり『けいちゃん』。世間知らズに教えてもらったんですけど、メニューがめっちゃ豊富なんですよ。
ウエダ タバコも吸えるし。喫煙者どんどん減ってるけど1人2人いると、せっかくやからタバコ吸えるとこがええよなって。じゃあもう絶対『けいちゃん』行こうって。早い時間からやってるし。みんなで来て、ライブの話してね。
オダ 泣きますよね。
ウエダ ここで泣いちゃうんですよ、みんなワーっとなって。お店の方には恥ずかしい様もお見せしてます(笑)。やっぱりコロナ禍でみんなと飲めなかったんで、みんなと飲むってすごい貴重なんですよ。
――青春ですね……。
やっぱりコントで1位取りたい
オダ 「THE W」で優勝して、やっとバイト生活から脱却できて。今は1日お笑いのことを考えていられる、仲間とこうしてお酒も飲める。最高です。
ウエダ 神保町はありがたいことに全然お客さん入ってへんで、やばいで、って時でもギャラを出してくれるんです。それでもやっぱりバイトはしないと生活はキツい。ただ年いけばいくほどね、体も色んなとこ痛なってくるし、もうこれしんどいわ〜って時に「THE W」で優勝させてもらったのはよかったですね。
オダ 私、清掃のバイトでぼる塾の田辺さんとずっとうんちを掃除してたんですよ。この間ぼる塾さんとオダウエダで『アメトークCLUB』に出た時に、「一緒にうんち掃除してたんやな」って思い出して、なんか感慨深かったです。
ウエダ ちょうど昨日『キングオブコント』では負けてしまったんですけど、やっぱりコントで1位獲りたい。もう1回、1位を獲りたいなぁ。
オダ 賞レース諦めようかなって思った時もあったんですけど、諦めても他にやることないなって思って。
ウエダ オダは落ちたことがショックだったのか、昨日急になんか奇怪なダンスを私に見せてきたんですよね……。
――えっ、どういうことですか?
オダ 賞レース落ちたから、踊ろうって思って。踊ったらちょっと元気になりました。やっぱり……神保町の後輩が頑張ってるから。落ちた子も変わらず頑張っているので、自分も頑張ろうって思いましたね。
オダウエダのいきつけ『大衆酒場けいちゃん』
芸人に優しい喫煙可。二人のオススメは「串揚げのセットとあと明太チーズだし巻き。キムマヨたこ焼きもおいしい(ウエダ)」「巻き寿司とかの海鮮系も外せません!(オダ)」。サッパリからガッツリまで充実のラインナップ。
『大衆酒場けいちゃん』詳細
取材・文=西澤千央 撮影=三浦孝明
『散歩の達人』2022年10月号より