池袋駅から10分。住宅地にポツリと立つ古民家
行き交う人でごった返す池袋駅東口から西武百貨店を通りすぎ、明治通りを雑司が谷方面に歩く。そろそろ人通りも減ってきたあたりで小さな看板を見つけた。大通りから入る場所がちょっとわかりにくいのでありがたい配慮だ。看板どおりに道を曲がると『浮浪雲』まではすぐだ。
自家製麺は毎日店内で打つ。足りなくなりそうになったらまた打って
テーブル席が3つとカウンター席の店内。それほど広くはない厨房の一番奥に、自家製麺を作るスペースがしっかりと確保されている。麺をこね、伸ばして切るまでのすべてがここで行われる。
しなやかな粘りが特長の小麦粉と、モチモチ感の得られる小麦粉の2種をブレンドすることで、「コシがあってモチモチ」の麺を目指す。どちらの粉も、中華そば用ではなくうどん用というのがおもしろい。麺は毎朝打ち、足りなくなったら営業途中に追加するため常に作りたての麺が提供されるのもうれしいポイントだ。
3日かけて作る鶏スープと魚の出汁をブレンドする絶品スープ
牛や豚を使わず、鶏のガラやモミジなど4つの部位と野菜を白濁するまで煮込んだスープと、種類は秘密という3種の魚からとる和風の出汁。この2つをブレンドして完成するスープに要する時間はなんと3日間。長い時間を経てようやく中華そばとつけ麺の両方に使用するスープができあがる。
さらりととろりが同居したスープとモチモチの麺が魅力!看板メニューの鶏白湯そば
ふんわりと鶏出汁のいい香り。トッピングはチャーシューと味玉のほかに、水菜と刻みタマネギ。うずらの茹で玉子が入っていて気持ちが上がる。シンプルなビジュアルの中、ちょっとしたかわいさにほっこり。
透き通った鶏白湯スープをひと口。すっきりしていて旨味がぎゅぎゅっと詰まった感じだ。う〜ん、これはおいしい。とろりとした舌触りがまろやかで、濃厚な鶏の風味がたっぷり。くどさがないのは後味に魚介のやさしい風味が広がるからだろう。脂っこさが少ないため、ついつい飲みほしてしまいそう。みじん切りのタマネギのシャキシャキ感もいいアクセントだ。
ストレートの中太麺は持ち上げるとしなやかな手ごたえがあり、つるつるっと小気味よくすすれるなめらかさもいい。モチモチと弾力があり、コシも十分で、適度な歯ごたえだ。さらりととろりが同居するスープに程よく絡むのも◎。
どのメニューでも同料金で麺の量が選べるのもうれしいポイント。茹でる前の重さで、ラーメンは並180g、大盛270g、特盛360g。つけ麺は並250g、大盛370g、特盛500g。腹ペコ具合に合わせて量を選ぼう。
ハーブの香りがたまらない!食欲をさらにそそる鶏チャーシュー
チャーシューも工夫の一品だ。最初にスープを飲んだときに「どこからかハーブの香りが?」と不思議に思い、トッピングを見直したもののこれといって見当たらない。なんだろうと思っていたら、答えはこのチャーシューだ。バジルなどのハーブに漬け込んで真空低温調理で仕上げる。ふわ〜っと食欲をそそる香り、そして肉の柔らかいこと!ぷるぷるの皮も実においしい。
味玉のとろっとした黄身がかかったスープはとてもまろやかで、水菜のシャキシャキ感もさわやか。さらりとしているのに濃厚なスープにはまったく飽きがこないし、スープを吸って少しやわらかくなった麺も滋味深いおいしさだ。お楽しみのうずらの卵をぱくり。気がつけばあっという間に食べ終えてしまった。軽やかで心と身体にやさしい味で、毎日食べてもいいと思うような一杯だった。目白や雑司が谷から、散歩がてら訪れるのもおすすめの名店だ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ