ショーケース展示のよくみかけるパターン。
観光地のターミナル駅のショーケースには、その土地の特産品が展示されていることが多い。
このショーケースの前に立ち止まってじっくり中を眺めている人は、私以外はついぞお目にかかったことはないのだが、通り過ぎるだけでもサブリミナル的な宣伝効果が得られるのかも知れない。
最近になって、山手線駅構内にJR東日本が運営する仮想モールのショーケース型店舗「JRE MALL Car」が設置されるようになったのも、実物の展示が購買欲に繋がるという確信があるからに違いない。
商売には直接結びつかないが、その土地ゆかりの展示物が展示されている場合もある。周辺地域のキャラクターのぬいぐるみがズラッと並べられた会津若松駅や、
郷土玩具が並べられた箱根ヶ崎駅、
カープ二軍練習場の最寄り駅である由宇駅などは、そのいい例だ。
もしかするとこの展示が、キャラクターグッズやカープグッズの購入に繋がることがあるかも知れないが、展示の主な目的は恐らくそこではなく、「うちの地元はこんなにいいところだよ!」という純粋な地元愛によるものと思われる。
そうか、ただ見てもらいたいものが置いてあるんだ。
駅ということもあってか、電車の模型が飾られているショーケースも割とよくある。大森駅のケースは、東北地方を走る新幹線の車両が展示され、旅を促す目的がはっきりしている。
しかし、自由が丘駅・大井町線ホームに設置されたケースは、大井町線の車両こそ上段に展示されているものの、下段には新幹線や犬、救急車や消防車が脈絡なく設置され、その意図が読み取りにくい。
もしかするとこのケースは、「宣伝」というより「作品展示」に近いものなのだろうか。
実は駅のショーケースは、こうした作品展示の場として用いられることも多い。豊川駅のショーケースは「自由通路ギャラリー」として、誰もが無料で自分の作品を展示することができる場として提供されており、ミニ四駆や鉄道模型、ミニチュアなど、思い思いの作品が展示されている。
巣鴨駅では、ホーム上の売店跡が「応募作品展示コーナー」に生まれ変わっており、きっぷの芯を用いた工作が展示されていた。
通過するだけの人が多いとは言え、ここまで多くの人が利用する施設は、駅をおいて他にあるまい。自分の作品を見てもらいたいという人にとって、駅のショーケースは格好の場なのだ。
そうした「見てもらいたい」という人の期待に応え、鑑賞するわれわれの側も、しばし立ち止まってショーケースを眺める心の余裕があっても良いのではないか。そんなことを考えて、今日も私は周囲の人に怪訝な顔をされながら、ショーケースの中をじっくり眺めている。
絵・文・写真=オギリマサホ