女性客が気軽に入れる“駅からちょっと離れた”ラーメン店
「名店ほど、駅から離れたところにある」というのがラーメン屋あるあるのひとつと言えるだろう。多くの飲食店が立ち並ぶ駅前ではなく、そこから10分以上歩いてようやく行列を見つけるなんてのはよくある話だが……池袋で人気を集めているラーメン屋『Hulu-lu』もそんな「ラーメン屋あるある」に当てはまる名店だ。
池袋駅から歩くこと実に10分ほど。お店の周辺に来ると個人の商店やマンションが増えてくるため「この道であってる?」とちょっと不安になってくるが……そうした不安をかき消すように見るからにハワイアンの明るい雰囲気のお店が姿を表した。
それがまさに『Hulu-lu』である。
「店内がこういう雰囲気だからですかね? ラーメン屋さんにしては女性客が多いんですよ」と話してくれたのはオーナーである古川雄司さん。自身のハワイ好きが高じて「ハワイ×ラーメン」という異色の組み合わせのラーメン屋が誕生したのは2012年のこと。オープン当初は立地に恵まれなかったことも響いて客があまり来なかったと言うが、今では池袋どころか都内屈指の人気店に成長を遂げた。
「お客さんたちのクチコミやSNSの投稿がそのキッカケです」と古川さんは語るが、それを生んだ理由は自慢のラーメンが“絶品”だったからに他ならない。
誰もが大好きな王道・醤油ラーメンに箸が止まらない!
ハワイアンな雰囲気に惑わされてしまいがちだが、実は古川さんは都内でも人気のラーメン店『ちゃぶ屋』で長年修業を積んできた職人。当時から「いつかは独立を考えていた」というように自身の理想の一杯を作ることを考えて開業されたため、ラーメンは本格派のそのものである。
例えばスープには「味にパンチがあるかもしれないけれど、香りが強すぎる」という理由でトンコツを一切使わず、鶏のみで仕上げていく。そのためすっきりとしたスープが生まれ、女性客を中心に人気を博している。
すっきりとしたスープに合わせる麺にも強いこだわりが。自身の理想に近づけるには麺も自家製にすることを決意。全粒粉を使用した麺はスープの味わいに合わせて細麺、太麺などすべてで4種類の麺を用意しているという。そうしたこだわりが味にうるさいラーメンファンの心をがっちりと掴んでいるのだろう。
今回は実際にお店で1番人気という「醤油SOBA」を食べさせてもらった。「ラーメンは見た目も大切」という『ちゃぶ屋』時代の教えを忠実に守った美しい盛り付けのラーメンは透き通ったスープとツルツルとした麺の相性が抜群。
トッピングのカイワレ大根からはシャキシャキとした清涼感が感じられ、焦がしネギと柚子の香りがレンゲをもう一口、もう一口と進めさせる。「20代から60代まで幅広い客層に愛される」という由来がよくわかる。取材もそこそこに夢中になって食べ進めた結果、気が付けば丼がキレイに空っぽになったほどだった。
店名『Hulu-lu』の意外な由来は?
美しく透き通ったスープにツルツルとのど越しのいい自家製麺。そして深い味わい……とどこを切り取っても「おいしい」という感想しか出てこなかった『Hulu-lu』の醤油SOBA。これなら地元の方はもちろんだが、「週末になると県外からもお客様がたくさんやって来る」というのも納得だ。
「今はコロナもあって、なかなか旅行とかも行きづらいですが……ハワイの雰囲気を味わいたくなったら、ぜひウチの店に来てほしいなって思います。ここまでハワイアンなラーメン屋さんっていうのも全国そんなにないと思うので(笑)、気持ちだけでも旅行したって雰囲気を味わってもらえればうれしいです」と、古川さんは笑顔で語ってくれた。
そして今回、個人的に最も気になっていたのが店名『Hulu-lu』について。ハワイ語でどういう意味があるのか? と伺ってみたところ、古川さんからは意外な答えが返ってきた。
「……実はお店の名前は僕のあだ名をハワイ語っぽくしただけなんですよ。フラダンス(Hula Dance)みたいな感じで。結構、雰囲気出ますよね(笑)?」
ユニークさ満点で一度覚えたら、絶対忘れない『Hulu-lu』。池袋に行ったらちょっと足を延ばしてみたくなるお店だ。
構成=フリート 取材・文・撮影=福嶌弘