◆散歩コース◆

体力度:★★★
難易度:★★☆

  • 登山シーズン 3月~7月、9月~12月
  • 最高地点 969m(棒ノ嶺)
  • 登山開始地点 253m(さわらびの湯バス停)
  • 歩行時間 6時間
  • 歩行距離 約14㎞

 

スタート
さわらびの湯バス停
バス停から車道を上がると、すぐ名栗湖。堰堤を歩き湖畔沿いの道を回って行くと登山口に。

白谷沢登山口
最初は普通の登山道。そのうち沢になり渓谷歩きに。藤懸の滝からゴルジュ帯へ入り、林道へ出てから上へ。

岩茸石
尾根上の岩茸石に到着。ここから滝ノ平尾根をまっすぐ登る。ゴンジリ峠から右へ。再びまっすぐな上り。

棒ノ嶺(棒ノ折山)
山頂から上がってきた道を戻り、ゴンジリ峠から直進。多少のアップダウンはあるが、さほどきつくはない。

黒山
黒山から逆川ノ丸を越えると展望地があり、富士山も。名坂峠から急坂を上がれば岩茸石山だ。

岩茸石山
埼玉県と雲取山方面の展望よし。ここから惣岳山へのルートも。高水山を巻いて直接常福院へ下りる。

高水山常福院
沢沿いの道をひたすら下り砂防ダムを越え高源寺脇へ。道が車道となり平溝川沿いに歩き駅へと向かう。

ゴール
軍畑駅

アクセス:
[行き]池袋駅から西武池袋線で飯能駅へ。飯能駅ら国際興業バスでさわらびの湯バス停へ、約1時間35分。
[帰り]軍畑駅からJR青海線で青海駅へ。青海駅からJR中央・青梅線で新宿駅へ、約1時間30分。

白谷沢のゴルジュ帯の道は岩場になるので、滑りにくい登山靴で。大雨のあとや冬場の凍結期は注意が必要だ。棒ノ嶺が目的なら滝ノ平尾根からの往復にすれば安全。逆コースはさらに危険。

棒ノ嶺は棒ノ折山(ぼうのおれやま)ともいうが、東京都と埼玉県の境界上にあり、その埼玉県側に貴重な渓谷がある。それが白谷沢で、ゴルジュ帯になっている。ゴルジュとは登山用語で、「喉」という意味のフランス語。岩壁が狭まった峡谷のことだ。正確には渓谷よりも狭い谷あいのこと。日本では黒部峡谷などが代表的なゴルジュである。

スケールでは黒部とは勝負にもならないが、東京から近いということなら白谷沢に一本だ。

計画は白谷沢を遡上して、棒ノ嶺へ上がり、ゴンジリ峠(権次入峠)から黒山を越える尾根歩きで岩茸石山(いわたけいしやま)へ。棒ノ嶺から岩茸石山のコースは、関東ふれあいの道「山草のみち」になっている。そのまま直進すれば惣岳山から御嶽駅へと下りるが、高水山へ寄って軍畑駅に下りるロングコースにした。

狙いが白谷沢と棒ノ嶺だけなら岩茸石から滝ノ平尾根を下って、出発地点に近い温泉施設の「さわらびの湯」へ戻るルートもある。東京に戻るなら高水山コースだろう。

飯能駅からバスに乗ってさわらびの湯バス停下車。歩行距離は14㎞、歩行時間は休憩なしで6時間は見なければならないので、早出のスタートが大切だ。季節にもよるが、高水山からの下りでは、かなり暗くなった。

坂道を上がるとすぐ名栗湖。有馬ダムでできた人造湖だ。堰堤を歩いて湖畔沿いに行くと白谷沢の登山口になる。ここから白谷沢沿いの道を歩くが、最初は普通の登山道、途中から沢の中を歩いていく。

入間川の支流、有間川に1986年にできたロックフィル形式の有馬ダム。それによって名栗湖が出現した。
入間川の支流、有間川に1986年にできたロックフィル形式の有馬ダム。それによって名栗湖が出現した。

スリリングなゴルジュ帯を抜け、棒ノ嶺山頂へ。

最初に2段に落ちる藤懸(ふじかけ)の滝が現れる。次に天狗の滝、白孔雀の滝と続くが、途中からゴルジュ帯へ突入する。通れるのかと思うくらい岩がぐぐっと狭まってくる。

壮観な風景だ。だいたいゴルジュは2カ所あり、それが終わると、クサリを伝ってゴルジュ帯から普通の登山道へ戻る。距離にしたら2、300mあるかどうかなので安心を。

白谷沢の核心部。スケール感のあるゴルジュ帯。東京近郊でこれだけ迫力のあるゴルジュ帯などはないのではないか。
白谷沢の核心部。スケール感のあるゴルジュ帯。東京近郊でこれだけ迫力のあるゴルジュ帯などはないのではないか。

林道へ出てから岩茸石が目印の滝ノ平尾根まで上がる。ここからゴンジリ峠までは、木段が上のほうへまっすぐ伸びている。山ではこの「まっすぐ」というのが問題で、曲がっているなら先が見えないのでごまかされるが、まっすぐは、なんのごまかしもきかない登りのこととなる。ひと言でいえば「つらい」ということだ。

滝ノ平尾根に上がると岩茸石がある。ここから尾根を下れば、さわらびの湯だ。
滝ノ平尾根に上がると岩茸石がある。ここから尾根を下れば、さわらびの湯だ。
岩茸石からゴンジリ峠まで一直線に階段状の道を上がっていく。勾配はそんなに急ではないが、先が見えるのがつらい。
岩茸石からゴンジリ峠まで一直線に階段状の道を上がっていく。勾配はそんなに急ではないが、先が見えるのがつらい。

ゴンジリ峠からもまっすぐな上り。どうにか棒ノ嶺に着くと山頂には気持ちのいい風が吹き、奥武蔵の山々が広がっていた。

棒ノ嶺はほかに棒ノ折山、棒ノ峰とも呼ばれる。展望はかなりよく。飯能市街から奥武蔵の山々が見える。
棒ノ嶺はほかに棒ノ折山、棒ノ峰とも呼ばれる。展望はかなりよく。飯能市街から奥武蔵の山々が見える。

しばし休憩後、再びゴンジリ峠まで戻って、そのまま尾根を直進する。

棒ノ嶺山頂は広く東屋もある。
棒ノ嶺山頂は広く東屋もある。
ゴンジリ峠の先に黒山。境界線上の道との分岐があり、そちらからは小沢峠に出られる。
ゴンジリ峠の先に黒山。境界線上の道との分岐があり、そちらからは小沢峠に出られる。

先はまだまだ長い。

ここは関東ふれあいの道のルート。多少のアップダウンがあるが、割合平坦で歩きやすい。ただし展望はそれほどない。富士山と大丹波川が見えるところが1カ所あり。黒山、逆川ノ丸を越えて名坂峠へ、ここからひと登りで岩茸石山だ。

岩茸石山から縦走してきた山々を振り返る。中央の高い山が棒ノ嶺になる。西側の展望もあり、雲取山もかすかに見える。
岩茸石山から縦走してきた山々を振り返る。中央の高い山が棒ノ嶺になる。西側の展望もあり、雲取山もかすかに見える。

山頂から直進の惣岳山(そうがくさん)ルートはやめて高水山方面へ舵を切る。周りがなんだか薄暗くなってきたようで、陽が落ちないうちに里へ出たい。高水山から常福院に立ち寄ってから、すぐ寺を離れた。あとは一目散で里へと下りた。

アドバイス

白谷沢のゴルジュ帯の道は岩場になるので、滑りにくい登山靴で。大雨のあとや冬場の凍結期は注意が必要だ。棒ノ嶺が目的なら滝ノ平尾根からの往復にすれば安全。逆コースはさらに危険。

高水山常福院

武将たちの信仰を集めた波切白不動明王

高水山の山頂近くにあるお寺。火災により古文書が焼失したので創建の時期は不明だが、畠山重忠など鎌倉時代の武士たちの信仰を集めた。本堂の前に大きな木の刀が何本も奉納されているのは、波切白不動明王が本尊であるため。境内では毎年4月に古式獅子舞が奉納される。

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ 低山をきわめる!』より