異系統からの転身。一から研究を重ねて完成した理想の一杯
下北沢駅前の喧噪から離れた、一番街商店街の一角で営業を行う『中華そば こてつ』。店主の大島徹也さんがラーメン界に足を踏み入れたのは20歳の頃だった。「昔からラーメンが好きだったんです。当時は、バーとかいろんな飲食店のバイトを掛け持ちしながらの1つという感じでしたね」。
その後、独立を見据えて道を一本に絞ろうと考えた大島さんは、1つのことを極めていく仕事が向いているのではないかという自身の適性などから、ラーメン店の社員になることを決意したという。バイト時代から換算し、10年近く横浜家系ラーメン店で修業を積み、2016年に満を持して独立。
家系とは大きく異なる淡麗系を専門とすることに不安はなかったのだろうか?
「周りからも家系で独立した方がいいんじゃないかと言われたこともありました。でも、せっかくなら自分がずっと好きな醤油ラーメンで勝負したいと思い、チャレンジしてみたんです」と大島さん。
一から独学で作り上げたラーメンは、まさに研究の賜物。数多くの醤油ラーメンを食べ歩き、理想とする一杯を完成させた。スープは鶏ガラの動物系と、煮干しや節、昆布といった魚介系にしいたけ出汁をプラスしたトリプルスープ。素材の状態などによって、配合や作り方をマイナーチェンジしながら一定の味を保つとともに、よりよい味へと進化させている。
醤油ラーメン用のタレには小豆島の濃口醤油と生醤油、群馬のたまり醤油、石川のイカでつくられた魚醤と4種の醤油をブレンド。「ラーメンの材料の中で一番高級なのがこのタレですね(笑)」と大島さんが明かすように、美味しさのカギを握る重要なパーツとなっている。
食べ応え抜群!オールスター級のトッピングが光る人気メニュー
麺は、低加水で仕上げたストレート細麵を使用。小麦の香りがよく、パツッとした歯ごたえが特徴だ。
一番人気のメニューである特製中華そばは、トッピングに自家製のチャーシューとワンタン、味玉がのったボリューム満点の一杯。「ワンタンが好きなので外せなかった」と大島さんが話すそのワンタンは、大ぶりで餡もたっぷり。
どこか懐かしさも感じるような深みのあるスープに、麺のパツパツとした食感も楽しい。例えるならば子どもの頃に訪れたテーマパークのような、麺やトッピングの1つをとっても驚きや満足感にあふれ、同時にノスタルジックさも感じる、そんなラーメンだ。
ランチタイムには、地元の人や近所で働く人でにぎわうという同店。開店から6年を迎え、今や地元の人々にとって欠かせない存在となっている。飽くなき探求心を携え、実直にラーメンと向き合う大島さん。ラーメンも大島さんも、これからどのような“進化”を遂げていくのか、活躍が楽しみである。
『中華そば こてつ』店舗詳細
/定休日:火/アクセス:小田急電鉄小田急線・京王電鉄井の頭線下北沢駅から徒歩5分
取材・文・撮影=柿崎真英