広々とした部屋にお洒落な内装! こんなところでひとりサウナなんて!

「本館サウナ付き和室」は、入るとまず12畳もの広々した大広間。壁にはおこもりステイにも重宝する65型の大画面液晶テレビも付いている。純和風というよりは、デンマークの照明器具をはじめ、所々に北欧テイストを感じるモダンな雰囲気。サウナの本場・フィンランドも意識した内装だ。

そして気になるサウナはというと、洗面所の隣に鎮座。扉を開ければ、大人2人が並んで座れる程度のコンパクトな板張りのスペース。フィンランド産のサウナストーブとサウナストーンを導入した本格派だ。でも、なぜサウナを客室に?

「それまでこの部屋は普通の和室でした。でも、近年、団体のお客さまが減ったこともあり、付加価値を付けたいと思いついたのがサウナだったんです。サウナは流行りでもありますし、客室にあれば24時間好きな時に楽しんでいただけると思って全面改装しました。このような部屋はまだ旅館では少ないと思います」とは、専務の富岡宏泰さん。

いよいよサウナと対峙。 果たして「ととのう」ことはできるのか⁉

そうなのだ。サウナを独り占めできるのがこの客室のいいところ。サウナ初心者(筆者)は「もう出ちゃ早いかな……」「あの人あんな格好で座ってるよ」などと、何かと周りを気にしがち。でも、ここなら自分のペースで好きなようにサウナと対峙できる!

サウナ温度は90℃。熱気のこもった重たい空気を全身で受け止めながら座れば、じりじりと汗が噴き出てくる。砂時計はまだ落ち切っていなくても、つらくなったら我慢しないで一旦退散。出ればすぐバスルームがあるので、あらかじめ水を張っておいた浴槽でクールダウン。ふ~っ、体が軽くなる。水分をしっかり摂りつつ好きなペースで繰り返すと、爽快感を感じるほど満喫できた。こ、これが「ととのう」ってことなのか⁉

楽しみはまだまだ。 地元食材満載の料理に舌鼓を打つ 

食事の豪華さも定評のある『味と湯の宿 ニューとみよし』。夕食は全ての宿泊プランに5種類以上の新鮮な刺し身が舟盛りで登場する(舟盛りスタイルは2名以上)。この日はプリップリの伊勢海老に、旨味を感じるマダイ、弾力がいいキンメダイ、肉厚でとろけるホタテ、アジ、サザエなどの盛り合わせ。その場で下ろす爽やかな風味の伊豆の本ワサビもたっぷりと使いたい。大きなキンメダイの煮付けに、ふっくらしたタチウオの塩焼き、季節を感じる前菜の盛り合わせにも味噌汁にも海の幸ばかりで、ボリューム満点。さすがは網代漁港もほど近い、海の宿だ。ああ、ごはんが進む。

ここまできたら、絶景の露天風呂も楽しみたい

さて、もう一つのお楽しみは温泉。『ニューとみよし』は屋上の展望貸切露天風呂も全22室の客室も相模湾に面していて、そのうち19室が露天風呂付きなのだ。夏は初島沖の水平線から、冬は網代山から日の出が見られるというので、翌日は頑張って早起きして“日の出風呂”にチャレンジ!

せっかくならばより開放的で24時間かけ流しの展望貸切露天風呂へ。信楽焼三彩釉の浴槽の「天」、高野槙による丸い浴槽の「海」、木曽檜による桝形の浴槽の「空」、伊豆石と黒御影石を組み合わせた浴槽の「風」と、4つもあり、空いていればどこでも入ることができる。空き状況や日の出時刻は、手渡されるリーフレットや客室の館内案内に記載されたQRコードで気軽にチェック。もしスマホがなくてもエレベーターに表示があるので安心だ。

目の前には大海原、南東を向けば対岸に網代港。水平線に赤みが差したと思ったら……、今日の太陽が現れた。空に、海に、明るさがだんだんと広がっていく。湯に浸かりながら、そんな朝のドラマをゆっくりと眺められるなんて、ぜい沢だなあ! 塩化物泉の湯は、肌をさするとツルツルして軽やかで肌触りがよい。よく温まり湯冷めしにくいというよさもある。が、それゆえのぼせやすいので、名残惜しいけれど長湯はほどほどに。

日の出も拝めて、身も心もサッパリ。気持ちよい朝を迎えられた。

また、『ニューとみよし』は客室のバラエティーも魅力。本館と新館で構成される館内には、和室、洋室、和洋室のタイプがあるだけでなく、ワ―ケーションにも対応した作業スペースのある部屋、ペット用の露天風呂まであるペット同伴可能な部屋、ウッドデッキや露天風呂が広い車いす対応の部屋などと、ニーズに合わせた個性派ぞろい。2015年の新館オープンから徐々に客室を見直し、改装されてきたという。「部屋指定されるお客さまもいらっしゃいます」と富岡さんの言葉にも納得の、客室を選ぶ楽しみもある宿なのだ。

取材・文=下里康子 取材・イラスト=さとうみゆき