中野の街に愛され10年以上。リフォームした古民家が目印だ

個性あふれる居酒屋が多い中野。駅から5分も歩けばちょっとした小路に入っていくが、そこにあるのはオンリーワンなメニューがウリな店ばかり。

本格寿司からジビエ料理、そしてイタリアンに……と、ついつい目移りしそうになるほど多彩なメニューに溢れているが、その中でもマグロ料理専門店として不動の地位を築いているのが、『マグロマート』である。

中野駅から歩いて5~6分ほど。一見すると住宅のようにも見える建物にマグロの絵が描いてあるのが目印だ。
中野駅から歩いて5~6分ほど。一見すると住宅のようにも見える建物にマグロの絵が描いてあるのが目印だ。

実は筆者、数年前にこのお店に行ったことがあった。インパクトのあるマグロの絵が印象的な店内。マグロの珍しい部位を使った刺身や料理をリーズナブルな価格で楽しめた上に、お酒のラインナップも充実していて、気になる品種の飲み比べができたほど。ついつい飲み過ぎてしまい、当時のお店の名物だったマグロの被り物を友人たちと被って写真を撮った記憶があったのだが……記憶をたどりながら向かった場所に店舗はなかった。

実は3年ほど前にほんの数百メートルほどではあるが、店舗を移転していたという。改めて住所を確認して現在の店舗があるところに向かうと……そこには『マグロマート』名物(?)とも言えるユニークなマグロの絵が描かれていた。

古民家を改装したという店内は開放感抜群。ちなみに2階にはカウンター席も用意されている。
古民家を改装したという店内は開放感抜群。ちなみに2階にはカウンター席も用意されている。

「中野に店舗を構えて2022年で11年になりますが……2019年に店舗を今のところに変えたんです。今回の店舗は元が古民家だったので、それを生かしたレイアウトにしてみたんです」

そう話してくれたのは店長の平島さん。ちなみに筆者が以前に行った際の店舗はもともと金物屋さんだったらしく、それを生かして少々武骨な雰囲気が残すなど、店舗の雰囲気に合わせてレイアウトを変えることで地元民からも「前は金物屋さんだったのに、今こんな風に変わったんだ!?」という具合に驚かれることもしばしばだったという。

お話を伺ったのは店長の平島瑠尉さん。このお店には欠かせないマグロのエキスパートでもある。
お話を伺ったのは店長の平島瑠尉さん。このお店には欠かせないマグロのエキスパートでもある。

他では食べられないマグロの希少部位がウリ

店内のあちこちに描かれた中野とマグロをテーマにしたいろいろな絵を見ているうちにメニューが到着。マグロの赤身部分をユッケのようにして食べるマグロユッケや珍しい部位をてんぷらにしたマグロのレア天、それに専門店ならではのマグロの中落ちなど目移りするような魅力的なメニューばかりが並ぶが、ここは『マグロマート』の定番中の定番メニューマグロマート盛り880円~をオーダーした。

店内のあちこちにはマグロと中野をテーマとした絵が描かれている。作者によって絵のタッチが異なるため、見比べてみるのも楽しい。
店内のあちこちにはマグロと中野をテーマとした絵が描かれている。作者によって絵のタッチが異なるため、見比べてみるのも楽しい。

マグロマート盛りはその名の通り、『マグロマート』のシンボルとも言えるメニュー。赤身や中トロといった人気部位に加えてほほ肉などの珍しい部位を刺身にしての6点盛り。各部位をワサビや塩で食べ比べるのが楽しく、マグロの奥深さを知ることができる。しかも今回は炙ったものもサービスでいただいた。辛口の日本酒と合わせれば、グイグイとお酒が進むのは間違いないだろう。

名物のマグロマート盛り。写真は2人前。マグロの希少部位を中心に食べ比べることができる。
名物のマグロマート盛り。写真は2人前。マグロの希少部位を中心に食べ比べることができる。

マグロは当然ながら鮮度が命。それだけに平島さんにお話を伺うと、とにかく産地にはこだわりがあるという。

「冬場は大間(青森県)などのマグロが主流になりますが、この時期(5月半ば)は沖縄産のマグロがメインになってきます。同じ本マグロでも産地によって味が変わるので、季節ごとに楽しんでもらうというのも面白いかもしれません。他の店では食べられないマグロの部位をうちではいろいろな形にして一番おいしく食べられるようにして提供しているので、是非とも味わってほしいですね」

赤身はベーシックに醤油でそのまま! ツヤツヤの色合いが忘れられない!!
赤身はベーシックに醤油でそのまま! ツヤツヤの色合いが忘れられない!!

来店するたびにマグロの新しい魅力が伝わってくる

日本人なら誰もが大好きなマグロの良さを余すところなく伝え、最大限に生かした料理が次から次へと提供される『マグロマート』。

マグロには欠かせない(?)お酒のラインナップはもちろん豊富で、中でもお店の自慢でもある日本酒は常に20種類以上がラインナップ。定番の銘柄はもちろん、個性的な古酒やワインのようなフルーティーな味わいがするものなど、筆者が以前伺った時のように飲み比べにも対応しているという。そのため、このお店で日本酒デビューする若者も多いという。

「マグロマート盛りにはこれもぜひ!」と平島さんが進めてくれたのはなんと酢飯セット。赤酢で作られた酢飯でマグロの手巻き寿司が楽しめる。
「マグロマート盛りにはこれもぜひ!」と平島さんが進めてくれたのはなんと酢飯セット。赤酢で作られた酢飯でマグロの手巻き寿司が楽しめる。

「最近は日本酒デビューしたいという若い女性のお客さんが『高千代』などのお酒を飲まれることも多いですが……コロナに関係なく、客層は若者から家族連れまでホントに様々です。関東にあるお店なのでマグロが苦手という方はあまりいないというのが強みかもしれないですね(笑)。それとコロナ後はテイクアウトのお客さんが増えたので、ご自宅でも楽しんでもらえているのはうれしいですね」

これぞ贅沢!なマグロマートオリジナルの手巻き寿司。
これぞ贅沢!なマグロマートオリジナルの手巻き寿司。

マグロと日本酒という王道同士の組み合わせに引き寄せられるかのように、老若男女が立ち寄ってはマグロの新しい魅力、そして日本酒の素晴らしさに気づいていく……もしかすると、それこそが『マグロマート』の存在意義なのかもしれない。

住所:東京都中野区中野5-50-3 1F、2F/営業時間:17:00~22:00(土・日・祝は16:00~23:00)/定休日:不定/アクセス:JR中央線・地下鉄東西線中野駅から徒歩6分

構成=フリート 取材・文・撮影=福嶌弘