ここは神田?NYの街角にありそうな洒落たデザインが目を引く
JR神田駅西口を出ると目の前にそびえる西口商店街のゲート。メインストリートから左右にそれる通りも店舗がみっしりで迷いそうになるが、『東京ブッチャーズ』に行くなら、商店街を進んで3つめの十字路を右、と覚えておけばよい。
赤いひさしとウッディな外観が目を引くこちらのお店のコンセプトは、“NYの肉屋が開いたワインバル”。ブッチャーズの「ブッチャー」は英語で「肉屋」、「肉を切り分ける職種」という意味がある。
『ブッチャーブラザーズ』(日本橋)、『森のブッチャーズ』(神保町)など、都内に肉をメインとする6店舗の系列店があるが、その中で最も早い2012年にオープンしたのが『東京ブッチャーズ』だ。肉料理の店というと男性客が大半というイメージがあるが、ウッディで落ち着いた雰囲気の店内は女性客も入りやすく、昼どきは会社勤めの人々で行列ができる。
最高の一枚を焼き上げるために大切なこと
厳選した赤身肉を炭火で豪快に焼き上げるのが『東京ブッチャーズ』ならではの醍醐味。L字型のカウンター席の中はライブ感あふれるオープンキッチンになっており、肉をおいしく焼き上げるレンガ造りのBBQグリルが鎮座する。
焼き網の下には熾火(おきび)になった炭がスタンバイ。熾火とは、着火した炭の炎が収まり芯の部分が真っ赤になった状態を指し、煙が少なく火力が安定しているので調理に最適。遠火の強火で焼きムラを防ぎおいしさをとじ込め、遠赤外線効果で肉がおいしく焼き上がる特徴がある。
ランチメニューはシンプルに3種類。看板メニュー肉屋のステーキプレート1200円、分厚くてジューシーなローストポーク ジンジャーソース1000円、驚きのワンコインスモークカレー500円がそれだ。どれもそそられるが、毎日1日80食以上を売り上げる一番人気の肉屋のステーキプレートを注文しないわけにはいかない。
焼き方を見ていこう。1.8kgほどの牛肩ロースの塊を1枚160~180gで切り分け、グリルの火から離れた網の上に置き、まずは塩をふる。使われていたのはイタリア シチリア産の天然海塩。まろやかでミネラルが豊富に含まれているのが特徴だ。
「グリル網に載せる位置で火の入り方が違うだけでなく、一枚の肉の左右でも違ってくるので、そこのところに気を遣いますね。ある程度焼けたら火から遠ざけて寝かせ、肉を落ち着かせることも大事な行程です」と話してくれたのは、最近グリルを任されるようになったシェフの田中克真さんだ。
「火が入りすぎると肉がパサついてしまう、かといって生すぎてもダメ。肉の焼き方は初めに最低限教えてもらいましたが、肉の弾力など触った感覚は人によって微妙に違うもの。どうしたら最高の一枚に焼き上がるか、見えないところで自分なりに努力してきました」。
「何よりもお客さまを喜ばせたい」、その想いが詰まったワンプレート
木製プレートにレタスを盛りつけ、フライヤーで揚げたチキンとポテトを移し、炭火で焼き上げたばかりのステーキを載せたら肉屋のステーキプレートのできあがりだ。また、ユニークなのはジョッキに入ったお冷や。ごくごく飲めて、なんともワイルドだ。
程よくミディアムに焼かれたステーキは、実にやわらかくてジューシー。塩コショウのみのシンプルな味付けだけに、肉本来の味がしっかり感じられ、白いごはんが進む、進む。付け合わせのチキンはニンニクなどで下味を付けたもも肉。皮目はパリッと中はやわらかで、手づかみでいきたくなる。フライドポテトも結構量があり、リンゴと玉ねぎで作った自家製サラダドレッシングも美味。ペロリと完食、満腹至極である。
このボリュームたっぷりのステーキランチを1000円で味わえるとは、実に驚きだ。「系列の6店舗で肉などの食材をまとめて仕入れるので、その分かなりお安く提供しています。オーナーとスタッフ全員、何よりもお客さまに喜んでほしいという強い想いがあります」とチーフブッチャーの須田圭一さん。
ディナータイムには牛ランプ肉や牛ハラミ、フラップミート(カイノミ)などのアラカルトやお得なコース料理、ワインに合うおつまみも豊富で、ボトルワインは1980円からとリーズナブル。落ち着いた雰囲気の2階席もある。神田にいることを忘れてしまいそうな肉バルは、昼も夜も大満足のひとときを楽しませてくれる。
構成:フリート 取材・文・撮影=池田実香






