あたたかみのある昭和風の喫茶店
浅草を東西に横切る新仲見世通りにある『友路有』。「トゥモロー」と読むその喫茶店は浅草最大のアーケード商店街に連なる建物の2階で店を構えている。
「昔ながらの」と冠している通り、お店の中はなんともレトロ。赤茶色のややコンパクトなテーブルにどっしり腰を下ろせるソファが並ぶ。
どこか郷愁を誘う「喫茶店のナポリタン」
ノスタルジーな気分を高めたいならナポリタンを注文しよう。その名も「喫茶店のナポリタン」。
誰もが親しみやすい一皿は、モチっと食感のパスタに、キッチンでイチから手作りするケチャップソースが絡んで、なんともジューシー。酸味は控えめでほのかに甘さを感じ、あとをひくおいしさ。忘れていた昔の記憶に触れるような味わいは、これぞ王道のナポリタン。
『友路有』は、どなた様もウェルカム
いろいろなお客さんがいる。文庫をパラパラとめくるお客さん、頬杖をついて窓辺で外へ視線をやるお客さん。今風に着物を着こなしているお客さんは観光かな、若い3人組は多分ゲーム仲間で、あのグループは浅草で一緒に育った同級生、久しぶりの再会ってとこだろう。新聞を広げている常連さんらしきご老人は毎日同じ時間にいるのかもしれない……。
勝手なことを思いながら店内を改めて見渡す。さぞかし歴史のあるお店なのだろうと聞いてみると、意外にもまだ10数年ほどだそう。
スタッフの庄野さんは、『友路有』で人と人のつながりの濃さを感じとっている。平成生まれだから昭和は語れないけれど……と、前置きしつつ「ここには人情みたいなものがあるのだと思います」と言う。お客さんからお見合いを紹介されたときはさすがにびっくりしたそうだ。
時の流れをぎゅっと凝縮したような『友路有』は昭和を知っている人も、そうでない人も、それぞれの心にある懐かしい時代を思い出す。せわしない日々に疲れたら、またくつろぎに行こう。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子