フリーフォールの真下にあるスタイリッシュな和カフェ
浅草寺周辺まで歩き、視線を上げると老舗の遊園地、『花やしき』のフリーフォールが空に見える。『スケマサコーヒー』は入り組んだ小道の奥に店を構えているが、フリーフォールの真下を目指すと迷わずにたどり着く、なんだか不思議な場所にある。
お店も一風変わっていて、和のテイストとブルックリンスタイルが違和感なく融合している。バリスタはデニムの着物にスニーカー。ときたま聞こえてくる『花やしき』のローラーコースターがゴーッと疾走していく音と、フリーフォールから降ってくる叫び声もまたおもしろい。
バリスタが描くラテアートにうっとり
『スケマサコーヒー』のバリスタはラテアートの世界大会で腕を競うほどの猛者ぞろい。カウンターで注文して、さっそく淹れてもらう。
飲んでみるときめ細かな泡が唇に当たり、風味豊かなエスプレッソの程よい苦味と、マイルドなミルクのハーモニーに舌がよろこぶ。アートの美しさはおいしさと比例するともいわれている。
メインの豆は石川県金沢市のロースター『サニーベルコーヒー』と試作を重ねた「スケマサブレンド」を使用する。2年ほどかけて味を調整して完成したというこだわりの豆はどんな飲み方をしてもちょうどよく仕上がるので、日常使いに購入していくお客さんも多いのだとか。
オーナーのプロの技が光るスイーツも必食!
『スケマサコーヒー』はコーヒースタンドでありながらスイーツ類も充実している。その理由はオーナーがもともとパティシエだったから。
ホイップクリームがのった、もちっと素朴なプリンには焼きメレンゲもトッピング。意外な相性に思わず笑顔になる。
季節のフルーツサンドもまた絶品。甘さたっぷりのイチゴの「あまおう」、ジューシーな台湾パイナップル、「ナガノパープル」というブランドのぶどう、みずみずしい白桃、近年にわかに注目をあびたミカン「まどんな」といったフルーツが季節ごとにお目見えする。
オーナーは「それぞれのフルーツの一番いい時期だけをお出ししています」と胸を張る。そう聞くと、1年を通して旬の味覚をコンプリートしたくなる。
心のこもった接客も魅力
『スケマサコーヒー』の開店のきっかけは東日本大震災だったそう。オーナーは当時、体を壊してパティシエの仕事を辞めていた。
「人生っていつ終わってしまうかわからないなと気づいて、それならば好きなことで生計を立てて、楽しく生きていきたいと思って、自分の好きなコーヒーと着物のお店を開くのが目標になりました」。
そんな『スケマサコーヒー』の人気の秘密は、時代にのっかった“映え”だけではない。たしかな味わいの本格ドリンクとスイーツ。それに加えて、自分の好きと素直に向き合うオーナーの心のこもった会話やおもてなしに誰もが魅了されてしまうのだ。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子