地下鉄東西線葛西駅から徒歩すぐ!
『地下鉄博物館』へは東京メトロ東西線で!葛西駅から徒歩すぐです。この区間の東西線は地下鉄路線ではありつつも、地上の高架上を走る「明かり」区間。その高架下のスペースに『地下鉄博物館』はあります。東西線は快速列車もありますが、葛西駅は通過してしまうので各駅停車を利用しましょう!歩道橋を経由すれば駅からほぼ傘を差すことなく館内に行けますし、各展示施設は全て屋内なので雨でも安心です!
館内には小さな子ども連れで行っても安心な施設が揃っています。館内はベビーカーでまわることもできるほか、ベビーカー置き場やレンタルベビーカーも完備!(レンタルは先着順)多目的トイレのほか、男性トイレにもベビーベッドや子ども用トイレがあり、おむつを捨てられるゴミ箱までありますよ!
今回、館内をご案内してくださったのは公益財団法人メトロ文化財団の玉川信子さん。館内はもちろん、地下鉄の歴史やそれぞれの時代背景など、さまざまな知識をお持ちの地下鉄博物館のエキスパートです!そんな玉川さんと早速館内へ!
新旧改札を通って館内へ
鉄道系ミュージアムといえば、やっぱりこの「入り口」ですよね!こちらの自動改札機は実際の駅で使用されていた「GX7」という実機。こちらに紙の入場券を通して館内に入場します。最近ではICカードの普及で紙のきっぷを「自動改札機に投入する」する行為そのものも珍しく、この時点で既に「ワクワクされているお子さまもいらっしゃいます」と玉川さん。なるほど……時代は変わりますね!
自動改札機を抜けるといきなりもうひとつ改札が!
こちらは「集改札ボックス」と呼ばれるもので、自動改札機が設置される前に駅にあった有人タイプの改札。35歳のムラカミはギリギリ有人改札の頃の光景を覚えている世代なのですが、あのリズミカルに鋏を「カチカチ」と鳴らしながらスピーディーにきっぷをさばいていく姿は、おさなゴコロにも感動していたのをよく覚えています。
日本の地下鉄史に輝く名車とご対面
ふたつの改札を抜けると早速2両の保存車両が登場!かつて丸ノ内線を走っていた、「丸ノ内線301号車」と銀座線を走っていた「地下鉄車両1001号車」です!丸ノ内線301号車の車内は開放されており、自由に見学することができます。
丸ノ内線301号車は丸ノ内線開業の1954年に登場した車両で、路面電車のように1両の両端に運転室があるのが特徴。また、現在の丸ノ内線同様にラインカラーである赤を基調としているほか、車体に「サインカーブ」と呼ばれる、連続したカーブが描かれています。このカーブは現在丸ノ内線で活躍中の2000系にも採用されていますが、この車両がズバリ元祖!
「丸ノ内線301号車」と並んで展示されている「地下鉄車両1001号車」は、東京メトロの前身とも言える東京地下鉄道が1927年、東洋初の地下鉄として営業を開始した上野〜浅草間の2.2kmを走行した大変貴重な車両。その歴史的背景から2017年には鉄道用電気車両として初めて国の重要文化財指定を受けました。
現在車内に入ることはできませんが、窓からその車内を覗き込むと、なんともオシャレ!当時としては珍しかった間接照明を採用し、とてもモダンな印象です。銀座線と丸ノ内線は屋根上に取り付けられたパンタグラフから電気を取り入れるのではなく、レールの横に設置された3本目のレールから電気を取り入れる第三軌条方式を採用していますが、この方式の場合、かつてはポイントを通過する際に、一瞬離線するため、車内の照明が暗くなるといった特徴がありました。そのため、車内には真っ暗になるのを防ぐために予備灯が取り付けられているのですが、この予備灯のデザインもモダンなんですよ!当時の人たちにとって「地下鉄」がどんな存在だったのか、この車両からもしっかりと感じることができます。
そんな「地下鉄車両1001号車」、1968年の営団(帝都高速度交通営団)地下鉄で営業列車からの引退後、展示のために神田にあった交通博物館に寄贈された経緯があります。1986年の『地下鉄博物館』での展示がスタートして以降も2016年にメトロ文化財団へ無償譲渡されるまで、実は東日本旅客鉄道(JR東日本)から長期貸与というかたちが取られていました。ちょっと意外なエピソードです!
地下鉄開業時の雰囲気を感じる展示の数々
そんな「地下鉄車両1001号車」が展示されている周囲には当時地下鉄が世の中にとってどんな存在だったのかを知ることができる展示がされています。例えば……。
当時の最新技術、「ターンスタイル式改札」です! 地下鉄といえばやはり「モダン」な乗り物。随所に最新技術が投入され、この改札機もそのひとつ。10銭均一運賃だったので、地下鉄の利用客は改札横の機械に硬貨を投入し、回転腕木を押して入場していました。展示されているのはレプリカですが、実際に硬貨を投入して体験することができます。(もちろん硬貨は戻ってくるのでご安心を!)
ほかにも「スクラッチタイル」が美しい1961年当時の上野駅を再現したホームや……。
マンホールなども展示。鉄道以外の背景も知ることができます。
「地下鉄をつくる」・「地下鉄をまもる」
奥に進むと今度は「地下鉄をつくる」・「地下鉄をまもる」のコーナーです。「実はここに館内でもちょっと変わった展示物があるんですよ!」と玉川さん。まさに「地下鉄をつくる」ときに発掘された、ナウマン象の骨が展示されているんです!! ちなみに発掘されたのは日比谷線の三ノ輪駅付近。僕の住んでいる近所ということで2度びっくり!
「地下鉄をまもる」コーナーでは実物大の単線シールドトンネルが設置されています。トンネル内に取り付けられた各設備はもちろん、なによりレール面に立って体感するトンネルの大きさは圧巻です!
地下鉄の仕組みや旅客サービスも学べる!
続いては「旅客サービス」、「地下鉄車両のしくみ」、「日本と世界の地下鉄」コーナーです。
「地下鉄車両のしくみ」に展示されている、「東京高速鉄道129号車」では実際にドアスイッチを操作して開閉させることができます。このドアを動かしている機構もばっちり学べますよ!
もうひとつ注目したいのが、銀座線01系車両のカットモデル。本物の車両、本物の運転台がそのまま展示されており、もちろん運転席に入ることもできます!
運転シミュレーターやジオラマもあるぞ!
『地下鉄博物館』の一番奥は「地下鉄プレイランド」! こちらには4台の「電車運転シミュレーター」に鉄道模型ジオラマの「メトロパノラマ」、クイズコーナー「地下鉄Q &A」があります。注目したいのはやはり「電車運転シミュレーター」! 6000系千代田線のシミュレーターは本物と同じ電車のカットモデル&運転台で運転体験ができます。しかも! このシミュレーター、なんと動きます……。
映像に合わせて実際に列車の揺れまで再現したシミュレーターで、その挙動はめっちゃリアル!
6000系のシミュレーターは小学生以上からですが、この6000系のほか、運転台のみ再現されている01系銀座線、7000系有楽町線(週替わりで半蔵門線)、5000系東西線(週替わりで日比谷線)がラインナップされており、こちらは誰でも体験OK!
でもそもそも、「ずっとトンネルの地下鉄シミュレーターってどうなの?」と思ったそこのあなた! 普段なかなか見られないトンネルの中をじっくりと観察できるのも楽しいですが、なにより、地上を走る鉄道より圧倒的に速度調整がむずかしいんですよ、地下鉄って!
これは今回、改めて感じました。
東京の地下には、いろいろな構造物やライフラインが通っているため、地下鉄のトンネルはそれらをかわしながら建設されています。そのため、急カーブと急勾配がとても多く、勾配に関していえば、35‰(パーミル)で上った後にすぐに35‰で下る、しかもそれが連続するなんてシチュエーションも至る所に!
そして、制限速度の異なる急カーブがその間に迫ってくるわけですよ。その都度、加減速するのも手ですが、そうすると今度は電気をたくさん使っちゃって鉄道の利点である経済的な運転ではなくなってしまいます。先を予測して勾配をうまく使いこなすのが地下鉄のドライビングテクニックだということを教えていただきました!
シミュレーター横のメトロパノラマでは、東京の地下を再現したちょっとユニークなスタイル。現在では平日のみ自動運転で1日4回運行されています。
『地下鉄博物館』を楽しむポイントは
最後にご案内いただいた玉川さんに『地下鉄博物館』の特徴を改めて伺ってみました。
「貴重な保存車両もありますが、それと当時に地下鉄の歴史や時代背景、構造、建設や保守、運転から世界の地下鉄までコンパクトにまとまっており、地下鉄をさまざまな角度からご覧いただけるのが特徴です。当館のシミュレーターは4種類全てが無料です。好きなだけ、地下鉄を運転していただけます!」
国内で唯一の地下鉄に特化した『地下鉄博物館』。訪れればきっとまだあなたが知らない地下鉄の魅力にきっと気づきますよー!!
取材・撮影・文=村上悠太(ユータアニキ)