和む空気感はそのまま、よりきれいで安心に
『あらかわ遊園』の素敵なところは、お財布に優しく、ふらっと行けるのに特別感があって、どこかホッとする空気感だ。派手さはないが、子供から大人まで楽しめる工夫と味がある。乗り物を乗り倒すもよし、小動物を愛でるもよし、釣り堀でぼーっとするもよし。誰もが楽しめるユートピアなのだ。
今回のリニューアルでは、管理事務所と「ふれあいハウス」、ファミリーコースターを残してほとんどを新設。全園を通して、子連れや車椅子の方など誰でも使いやすいようなバリアフリー仕様に生まれ変わった。
中心となる「のりもの広場」では、観覧車・メリーゴーランド・豆汽車・スカイサイクルが新しくなり、コーヒーカップに代わりウォーターシューティングライドが新登場。隣接する「どうぶつ広場」では、アルパカやカピバラ、フクロウなどが仲間に加わった。新しくできた「もぐもぐハウス」と「わくわくハウス」は、ベビールーム完備なのも心強い。鉄道ファンには、リニューアルしたふれあいハウスのNゲージのジオラマや、エントランス横の都電6000形がカフェになったのも見逃せない。
家族連れはもちろんのこと、一人でふらっと動物に会いに来てもいいし、観覧車はデートにもいい感じ。すべてがアップデートされてもブレがない、皆が楽しめる優しさとエンタメ性に、この遊園地の歴史的背景を感じずにはいられない。
戦後は復興の象徴だった
あらかわ遊園の前身は、開通したばかりの王子電気軌道(荒川線の前身)による集客を見込んで、大正11年(1922)にオープンした私立遊園地だ。竜宮城を模した館が建てられ、池には舟が浮かび「城北の名園」として名を馳(は)せたが、太平洋戦争とともに閉園。戦後になり、荒川区が子供たちの健全な育成のためにと遊園地再建運動を行い、1950年、都内初にして現在も23区唯一の、「区立荒川遊園」が誕生。娯楽に飢えていた人々の希望となった。
1986年から1991年のリニューアルの際は、地域の自然と公共空間が失われてゆくなか、子供たちがのびのび遊べて自然と触れ合えるようにと「どうぶつ広場」や「のりもの広場」「水あそび広場」を新設。
それから30年。昭和・平成の頃に親に連れられて来た人たちも、初めて行く人たちも、心待ちにした再オープン。令和の時代にもよき思い出の場所とならんことを!
リニューアルあらかわ遊園 見どころガイド
①入園ゲート
レンガ造りのエントランスから、ガラリとリニューアルして軽快に。荒川遊園通りをまっすぐ歩いていくうちに期待が高まり、看板が目に入るとテンションはMAXに!
②ファミリーコースター
あらかわ遊園といえばこれ! 愛らしいイモムシの背中に乗って、1周138mのコースをゆっくり2周。最高時速は傾斜を下る時の13.7km。「日本一遅い」ジェットコースターは、リニューアル後も健在である。
③メリーゴーランド
装いも新たになったメリーゴーランドには、白馬や馬車に加え、イルカ、恐竜、パンダの新キャラが仲間入り。優雅な音楽に乗って2分間の夢の世界へ。車椅子で乗車できるようになったのもリニューアルのポイント。
④観覧車
今回で3代目となる園のシンボル。直径38m・高さ40mで、約9分かけて1周する。晴れた日にはスカイツリーやドコモタワー、富士山が見えることも。スリル満点のスケルトンゴンドラも4つあり。こちらも車椅子OK。
⑤ウォーターシューティングライド
今回新登場のアトラクション。消防士になりきって、上下する消防車のゴンドラから燃え盛るビルの的めがけて水鉄砲で放水し、得点アップを狙おう。60点以上をマークし、さらに1位になると「ウィニングラン」が体験できる。
⑥豆汽車&スカイサイクル
ADVENTURE STATIONから出発する豆汽車&スカイサイクルもリニューアル。けん引車が新しくなった豆汽車では、どうぶつ広場を巡る汽車旅を楽しめる。スカイサイクルは、地上5mのレールの上で自らペダルを漕いで、約5分の空中散歩へ。
⑦釣り堀
1952年にオープンした、実は歴史ある釣り堀。リニューアル後は、金魚を放流し、キャッチアンドリリースして生き物とのふれあいを楽しめるように。転落防止柵を設置し水深も浅くしたので、小さい子供と一緒でも安心。
⑧わくわくハウス
1階は食事からスイーツ系までさまざまなコッペぱんが味わえる売店「コッペぱんクック」、2階は0〜12歳の子供たちが遊べる「わくわくパーク」。アスレチックやままごとなどの遊具も揃う。
⑨しばふ広場
ランチや休憩など、多目的に使える芝生スペース。階段状になり、座りやすくなっている。隅田川の土手の高低差を生かしたロングすべり台や、子供用の複合遊具もある。
⑩もぐもぐハウス
1階ではお子様ランチや丼もの、麺類、ソフトクリームなど、人気のフードやオリジナルグッズを販売。2階は観覧車と隅田川を見渡す休憩スペースとなっている。
⑪ふれあいハウス
荒川区の鉄道模型の趣味の集まりである「のぞみ会」会長の故・伊藤信男さん製作の都電模型を展示。鉄道模型運転場のジオラマは、息子の朋行さんがリニューアルした。
⑫一球さん号
静態展示されていた「都電6000形の最後の一両」の6152号車は、カフェとして復活し、中でコーヒーやオリジナルメニューを楽しめるように。「一球さん」は、フロントの一つのヘッドライトからついた愛称。
『あらかわ遊園』詳細
取材・文=鈴木紗耶香 撮影=オカダタカオ 昔の写真提供=荒川区
『散歩の達人』2022年5月号より